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第一章 ギルド職員になった
悪夢を乗り越えろ
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悲鳴の上がった方に全力で駆けつけると、そこには、ジェノサイドベアから逃げるニーアちゃんと思わしき、子供がいた。何年かに一度、その姿を見る事があるジェノサイドベアが、この短い期間で三頭もいる。これも、同時多発的に起きているスタンピードの影響なのかもしれない。
「うっ…………」
ジェノサイドベアの姿を直接見たことで、身体硬直してしまう。血まみれのキティさんの姿が、蘇ってくる。ニーアちゃんは、泣きながら走っている。子供特有の小回りを使った逃げで、木を盾にすることで、何とかジェノサイドベアから逃れることが出来ているが、捉えられるのも時間の問題だ。
悪夢がちらつく。怖い。でも、私が怖いのは、本当にジェノサイドベアなのか……違う。私が、怖いのは……
「私が、怖いのは……また逃げ出す事、そして、守れない事だ……」
私はポケットの中の花の髪飾りを握り、雪白の柄を掴む。
「リリアさん、キティさん、お母さん。私に勇気と……力を貸して!」
私は、脳裏に過ぎり続ける悪夢の残滓を無視しながら、雪白を抜き放ち走る。風を纏った脚は、最初の踏み込みから最高速度を出す。ジェノサイドベアは、真横から急接近してきた私に反応しきれない。
スキルには、技と呼ばれる力がある。主に戦闘系のスキルにあるもので、一撃一撃が強力なものだ。それを使いこなせるかどうかで、スキルの熟練度のようなものが分かる。
私は、【剣姫】のスキルを持つものだけが使える技を放つ。
「『グロウ・ピアース』!!」
白く光輝いた雪白が、ジェノサイドベアの毛皮を易々と突き破り、ジェノサイドベアの魔石を砕いた。魔石を砕かれたジェノサイドベアは、灰へと変わっていった。
「はぁ、はぁ、初めて、成功した……」
いつも使おうと思っても全く使えなかった【剣姫】の技が、初めて使えた。何が要因だったのかは、分からないけど、今この瞬間に使えたのは、本当に助かった。でも、今は、それよりも……
「ニーアちゃん!!」
私は、ニーアちゃんが逃げていった方に向かって走る。木の陰に隠れているかと思われたニーアちゃんは、少し行ったところにあった大木の洞の中に逃げ込んでいた。
「ニーアちゃんで、合ってるよね?」
私は、洞の外から声を掛けた。ニーアちゃんは、恐る恐る顔を覗かせて私を見る。ニーアちゃんは、私が人だと判断すると、これまた恐る恐る近寄ってくれた。
「お姉ちゃん、だれ?」
「私は、冒険者ギルドの職員、アイリス・ミリアーゼだよ。ニーアちゃんのお母さんから、ニーアちゃんが外に出たかもしれないって聞いて、探しに来たんだ。さぁ、お母さんのところに帰ろう?」
私は、ニーアちゃんに手を差し伸べる。でも、ニーアちゃんは、すぐには手を取ってくれなかった。
「でも……、お母さんのお薬が……」
「薬草の事? 大丈夫。冒険者の人達が見つけてくれるから」
「お母さん、苦しそうだった……」
「じゃあ、帰りにお薬を買って帰ろうか。薬草のままじゃ、効果がないから」
「そうなの!?」
これは、少し嘘が混ざってる。薬草だけでも、多少の効果がある。それでもないよりマシ程度だ。加工して、薬に変えた方が、より効力が高くなる。
「そうなんだ。だから、一緒に帰ろ」
「うん、分かった」
ニーアちゃんが私の手を取ってくれる。
「よし! 行こう!」
ニーアちゃんの手を引いて、街まで歩いていく。さすがに、私の走る速度とニーアちゃんの走る速度とじゃ、差がありすぎるからだ。
「お母さん、怒るかな……?」
「まぁ、怒るだろうね」
私がそう言うと、ニーアちゃんは泣きそうな顔になる。
「でも、それは、ニーアちゃんが嫌いだからじゃないよ。ニーアちゃんが、大好きで、心配だから怒るんだ。私のお母さんも同じだったから」
「心配?」
「そう。ニーアちゃんがいなくなったら、お母さんはすごく心配するんだよ。だから、帰ったら、ちゃんと謝らないとね」
「うん!」
私がそう言うと、ニーアちゃんは、泣き顔から一転、笑顔で頷いた。そんな風に、ニーアちゃんと話している最中も周囲の警戒は怠らない。だからこそ、ある事に気が付いた。足元から小さく地響きが起こっていることに。
「これは……もしかして……!」
今、街ではスタンピードに備えて、冒険者を街の外に集めている。つまり、いつスタンピードによって発生した魔物が出てきても不思議じゃない。溢れかえった魔物は、街に向かって進軍をし始める。
私達は、今、街に向けて歩いている。つまり、スタンピードで溢れかえった魔物と同じ方向を向いているということだ。
嫌な予感がして、私は、後ろを振り返る。すると、木々の奥の方に多数の揺れる影が見えた。それらの形は、周囲の木々の枝や葉っぱなどでは、形成されないものだった。
「まずい! ニーアちゃん、苦しいかもしれないけど、我慢してね!」
「えっ?」
ニーアちゃんを脇に抱えて、駆け出す。木々を避けながら、前へと進んでいく。
「どうしたの!?」
「魔物が追ってくる。なるべく、街まで近づかないと!」
スタンピードで発生した魔物が、街に向かっている。その結果、私達が追われる事になった。
スキルを使った全力疾走をしているおかげで、まだ追いつかれないけど、それも時間の問題。脚の速い魔物が、突出してくれば、すぐに追いつかれるかもしれない。
私達は、無事に街まで戻る事が出来るのかな……
「うっ…………」
ジェノサイドベアの姿を直接見たことで、身体硬直してしまう。血まみれのキティさんの姿が、蘇ってくる。ニーアちゃんは、泣きながら走っている。子供特有の小回りを使った逃げで、木を盾にすることで、何とかジェノサイドベアから逃れることが出来ているが、捉えられるのも時間の問題だ。
悪夢がちらつく。怖い。でも、私が怖いのは、本当にジェノサイドベアなのか……違う。私が、怖いのは……
「私が、怖いのは……また逃げ出す事、そして、守れない事だ……」
私はポケットの中の花の髪飾りを握り、雪白の柄を掴む。
「リリアさん、キティさん、お母さん。私に勇気と……力を貸して!」
私は、脳裏に過ぎり続ける悪夢の残滓を無視しながら、雪白を抜き放ち走る。風を纏った脚は、最初の踏み込みから最高速度を出す。ジェノサイドベアは、真横から急接近してきた私に反応しきれない。
スキルには、技と呼ばれる力がある。主に戦闘系のスキルにあるもので、一撃一撃が強力なものだ。それを使いこなせるかどうかで、スキルの熟練度のようなものが分かる。
私は、【剣姫】のスキルを持つものだけが使える技を放つ。
「『グロウ・ピアース』!!」
白く光輝いた雪白が、ジェノサイドベアの毛皮を易々と突き破り、ジェノサイドベアの魔石を砕いた。魔石を砕かれたジェノサイドベアは、灰へと変わっていった。
「はぁ、はぁ、初めて、成功した……」
いつも使おうと思っても全く使えなかった【剣姫】の技が、初めて使えた。何が要因だったのかは、分からないけど、今この瞬間に使えたのは、本当に助かった。でも、今は、それよりも……
「ニーアちゃん!!」
私は、ニーアちゃんが逃げていった方に向かって走る。木の陰に隠れているかと思われたニーアちゃんは、少し行ったところにあった大木の洞の中に逃げ込んでいた。
「ニーアちゃんで、合ってるよね?」
私は、洞の外から声を掛けた。ニーアちゃんは、恐る恐る顔を覗かせて私を見る。ニーアちゃんは、私が人だと判断すると、これまた恐る恐る近寄ってくれた。
「お姉ちゃん、だれ?」
「私は、冒険者ギルドの職員、アイリス・ミリアーゼだよ。ニーアちゃんのお母さんから、ニーアちゃんが外に出たかもしれないって聞いて、探しに来たんだ。さぁ、お母さんのところに帰ろう?」
私は、ニーアちゃんに手を差し伸べる。でも、ニーアちゃんは、すぐには手を取ってくれなかった。
「でも……、お母さんのお薬が……」
「薬草の事? 大丈夫。冒険者の人達が見つけてくれるから」
「お母さん、苦しそうだった……」
「じゃあ、帰りにお薬を買って帰ろうか。薬草のままじゃ、効果がないから」
「そうなの!?」
これは、少し嘘が混ざってる。薬草だけでも、多少の効果がある。それでもないよりマシ程度だ。加工して、薬に変えた方が、より効力が高くなる。
「そうなんだ。だから、一緒に帰ろ」
「うん、分かった」
ニーアちゃんが私の手を取ってくれる。
「よし! 行こう!」
ニーアちゃんの手を引いて、街まで歩いていく。さすがに、私の走る速度とニーアちゃんの走る速度とじゃ、差がありすぎるからだ。
「お母さん、怒るかな……?」
「まぁ、怒るだろうね」
私がそう言うと、ニーアちゃんは泣きそうな顔になる。
「でも、それは、ニーアちゃんが嫌いだからじゃないよ。ニーアちゃんが、大好きで、心配だから怒るんだ。私のお母さんも同じだったから」
「心配?」
「そう。ニーアちゃんがいなくなったら、お母さんはすごく心配するんだよ。だから、帰ったら、ちゃんと謝らないとね」
「うん!」
私がそう言うと、ニーアちゃんは、泣き顔から一転、笑顔で頷いた。そんな風に、ニーアちゃんと話している最中も周囲の警戒は怠らない。だからこそ、ある事に気が付いた。足元から小さく地響きが起こっていることに。
「これは……もしかして……!」
今、街ではスタンピードに備えて、冒険者を街の外に集めている。つまり、いつスタンピードによって発生した魔物が出てきても不思議じゃない。溢れかえった魔物は、街に向かって進軍をし始める。
私達は、今、街に向けて歩いている。つまり、スタンピードで溢れかえった魔物と同じ方向を向いているということだ。
嫌な予感がして、私は、後ろを振り返る。すると、木々の奥の方に多数の揺れる影が見えた。それらの形は、周囲の木々の枝や葉っぱなどでは、形成されないものだった。
「まずい! ニーアちゃん、苦しいかもしれないけど、我慢してね!」
「えっ?」
ニーアちゃんを脇に抱えて、駆け出す。木々を避けながら、前へと進んでいく。
「どうしたの!?」
「魔物が追ってくる。なるべく、街まで近づかないと!」
スタンピードで発生した魔物が、街に向かっている。その結果、私達が追われる事になった。
スキルを使った全力疾走をしているおかげで、まだ追いつかれないけど、それも時間の問題。脚の速い魔物が、突出してくれば、すぐに追いつかれるかもしれない。
私達は、無事に街まで戻る事が出来るのかな……
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