最強のギルド職員は平和に暮らしたい

月輪林檎

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第二章 ダンジョン調査

復帰後の周辺調査(1)

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 仕事を終えて、リリアさんと一緒に家に帰ると、キティさんが出迎えてくれた。キティさんは、後ろ手に何かを隠していた。

「試験結果ですか?」
「そういえば、そうだった。どうだったの結果は?」

 私とリリアさんが、そう訊くと、キティさんは隠していた紙を見せつけた。そこには、ちゃんと合格の文字がある。

「合格出来たんですね!」
「ん。余裕」

 キティさんは、耳をピコピコさせてそう言った。すごく誇らしげだ。

「じゃあ、今後、キティが帰ってこない日が出来るって事?」
「ん。周辺調査だけなら、日帰りで出来るかもだけど、ダンジョン調査になったら、泊まりになる」

 これから、仕事が回ってきたら、キティさんがいない日が出来るみたい。少し寂しいけど、仕方ないよね。

「でも、それは、アイリスも一緒」
「えっ?」
「アイリスも、私と同じでダンジョン調査に向かう事があるかもしれない。そうしたら、アイリスも泊まりになる」
「そういえば、私にも調査が回ってくる可能性があったんでした……」

 また失念していた。と言うことは、私もいない日が出来るみたい。ガルシアさんと話したときに、基本的にキティさんと一緒に組むようにするって話をしたような気がする。それは、キティさんが泊まりの仕事になれば、私も一緒に泊まりの仕事になる可能性があるということだ。つまり、私とキティさん二人同時にいない日が生まれる事になる、ということは、リリアさんが一人になるということだ。少しだけ申し訳なく思ってしまう。

「じゃあ、その時は、私は一人で留守番になるわけだね」

 そのことにリリアさんも気が付いていた。

「そうみたいです。すみません……」
「気にしないでいいよ。そのくらいは、少し考えれば分かるし、仕事だから仕方のないことだしね。その間の家は任せておいて。ピカピカの状態で、帰りを待っているから」

 リリアさんは、胸を張ってそう言ってくれる。申し訳ないという気持ちは残っているけど、少し嬉しく思った。改めて、皆と一緒に住んでいるということを実感出来た感じがするから。

「じゃあ、夜ご飯作っちゃいますね」

 いつも通り、私は夜ご飯を作りに向かう。一緒にご飯を食べた後は、それぞれでお風呂に入った。今日は、リリアさんと一緒に寝る日だ。キティさんと寝ても悪夢を見ないで済むと分かった日から、私は、交互に、二人と一緒に寝ている。それで、変化があるかどうかを検証しているって感じなんだけど、今のところ問題はない。

 ただちょっと気になっている事がある。二人のおかげで、悪夢の恐怖から、ある程度解放されつつあるんだけど、目の隈が治らないんだ。一番酷いときよりは、薄くなっているんだけど、まだ見たら分かる程度に残っている。多分、これが無くなるのは、呪いが解けたらなんだろうな……

 ────────────────────────

 いつも通りの日常を過ごしながら、二日間が過ぎていった。私は、今日も今日とで、ギルドの裏で作業をしていた。今日やっているのは、地図作りの部署だ。簡単に言えば、周辺調査で分かった地形の変化やダンジョン内の地図の更新をしている。余程の事がない限り、地上の地形が変わることはないので、主な作業は後者だ。冒険者などから報告を受けて、地図の間違っている場所を修正したり、新しい階層の地図を作ったりしている。

 これだけ聞くと、楽そうだと思う人もいるみたいだけど、多分、精神的にこれが一番キツい。当たり前だけど、ズレなんて許されないし、更新するとなると、更新部分だけではなく、全体の地図を書き直さないといけない。王都だと、魔力を流すことで複写してくれる道具があるみたいだけど、このギルドには、そんなものないので、全部手作業になってしまう。そのため、ギルドの仕事の中で一番精神的にキツいと言われるのだ。時折、発狂する人が出るくらいだし……

「ふぅ……疲れた……」
「はい、アイリスちゃん。新しい仕事だよ」

 一段落付いたと思っていたら、先輩から新しい仕事を渡された。この仕事に終わりというものはないのか……

 軽く絶望しながら、丁寧に仕事をしていると、カルメアさんがやって来た。

「調査依頼が入ったから、作業が終わったら、ギルドマスターの部屋に行ってくれる? ギルドマスターから説明があるから」
「はい。分かりました」

 キティさんが復帰したことで、私も調査依頼を受ける事になったみたい。それ自体は、大体予想が付いてたから、あまり驚きは無かった。私は、地図作りの作業を終えて、ギルドマスターの部屋に向かった。ノックをしてから中に入る。

「来たな。キティもすぐに来る。少し待っていてくれ」
「分かりました」

 ガルシアさんの言うとおり、少し待つとキティさんがやって来た。

「お待たせ」
「揃ったな。じゃあ、今回の調査の説明をするぞ。今回してもらう調査は、北西部の湖周辺の調査だ。ここ最近、様子がおかしいという報告が多く入るようになっていてな。一ヶ月前のスタンピードの事もある。その生き残りが縄張りを築いた可能性があるから、注意してくれ」
「ん。分かった。期間は?」
「無期限だ。結果が分かるまで粘って欲しい。あそこら辺は、ずっとレイク・サーペントの縄張りだったんだが、その姿が見当たらないらしい。生き残りの魔物の縄張りになっているとすると、周辺への影響も大きくなる可能性が高い。どの魔物の縄張りになったかを調べてくれ」

 どうやら、縄張り争いがなかったのに、縄張りの主がいなくなったみたい。新しい主が現れているとしたら、その魔物の種類を特定しないといけない。種類次第で、周囲に与える影響が変わってくるからだ。レイク・サーペントは、基本的に湖の中から出て来ることは無かったので、縄張りの範囲内でも、他の魔物や動物が普通に暮らしていた。湖に入れば容赦なかったみたいだけど。

「早速、明日から頼む」
「ん。分かった」
「アイリスは、カラメルに行って、防具を貰うと良い」
「あっ、そういえば、マイラさんが強化してくれているんでしたっけ?」
「ああ、あのスタンピードで、消耗していたからな。マイラが、修復ついでに強化している。必要な素材は、スタンピードで、沢山得る事が出来たからな」

 修復だけで無く、強化もしていてくれるとは、有り難い。

「分かりました。では、失礼します」

 私とキティさんは、ギルドマスターの部屋を後にする。

「じゃあ、私はカラメルに行ってきますね」
「ん。私は、家に帰ってる。じゃあ、また後で」
「はい。また後で」

 キティさんと別れて、カラメルに向かう。

「失礼します。マイラさん、いらっしゃいますか?」
「あっ、アイリスちゃん! いらっしゃい!」

 マイラさんは、やっている作業を中止して、私に抱きついてくる。

「久しぶりだね! 相も変わらずに可愛い!」
「お久しぶりです。今日は、防具を受け取りに来たんですが」

 私はされるがままになりながら、本題を伝える。マイラさんは、私を抱きしめながら返事をする。

「うん。強化は終わってるよ。前よりも頑丈に、それでいて柔軟に作っているから、動きやすくなっているはず。後、アイリスちゃんが、風を使うって聞いたから、風属性を強化してくれるようにもしておいたから」

 私の【疾風】は、正確には魔法ではないものの、風属性を含んでいる。防具で、【疾風】が強化されるということは、今まで以上の速さで走れるということだ。戦闘の幅が広がるから、少し有り難い。

「後、外套も用意してみたから。雨の時とかに着て」
「ありがとうございます」

 私は、マイラさんから防具を受け取って、カラメルを出る。一度、更衣室に寄って、防具を仕舞った後、製図室に戻って仕事の続きを行った。

 そして、その日の夜。私達は、リリアさんに調査の事を話した。

「じゃあ、明日からは、外に出ていくって事?」
「はい。一応、泊まりではないので、家に帰ってきますが」
「そうなんだ。何が起こっているか分からないんだから、気を付けてね」
「ん」
「はい」

 私達は、夜ご飯を食べ、明日に備えて眠りについた。
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