最強のギルド職員は平和に暮らしたい

月輪林檎

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最終章 最強のギルド職員は平和に暮らしたい

悪化する状況

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 ライネル達が帰還してから一週間が経過した。愛羅の怪我も治り、他の冒険者や兵士達も続々と治り始めていた。
 そんな時、悪い知らせが入って来た。

「それは本当か!?」

 ギルドマスターの部屋で、その知らせを受けたガルシアは、眉を寄せていた。

「本当です。遠方からでもはっきりと視認出来ました。魔族の軍隊の中にドラゴンがいます」
「ちっ……まさか、こっちに投入されてくるとはな。俺も出る。ライネル達も招集しろ。それと殿下にも伝令を」
「そちらは手配済みです」
「そうか。なら、ライネル達を呼び出してくれ」

 伝令に来た冒険者は、すぐにギルドマスター部屋を出て行く。

「くそ……ドラゴン……伝承では、世界に五頭いる魔王の側近。これらを倒したのは、勇者とその仲間だったと言う。宗近達もいるが……」

 ガルシアは、戦場へと赴く準備しながら、どうやって戦うかを考える。

「基本的に戦うのは、宗近達と俺、ライネル達になるか。他の奴等では足手まといになる可能性が高い……くそ……アイリスがいれば……いや……そんな事を言っても仕方ないな」

 ガルシアは、準備を整えてギルドのホールに降りていく。すると、そこには準備を終えた冒険者達でいっぱいとなっていた。その中には、宗近達の姿もある。
 ガルシアは、冒険者達の前に立つ。

「皆、良く集まってくれた! 既に聞いた者もいるだろう。敵の部隊にドラゴンが発見された」

 ガルシアの言葉に、冒険者達が響めく。この場で何も反応していないのは、事前に情報を得ていた者達だけだった。

「ドラゴン……だと……!?」

 宗近達もこれには驚いていた。まさか、ドラゴンと一戦交える事になるとは思っていなかったからだ。

「ドラゴンへの対応は、俺と宗近達、そしてライネル達で行う。他の者は、共に攻めてくる魔族への対処をしろ。正直なところ、これでもドラゴンを倒せるかどうかは分からない。仮に、ドラゴンを倒せずに俺達が死ぬようだったら、即時撤退しろ」

 ガルシアの命令に、冒険者達は大きく頷く。誰も尻込みするような者はいなかった。

「よし! 全員移動するぞ! 急げ!」
『おおう!!』

 冒険者達は、すぐに移動を始める。宗近達も共に移動を始めた。ガルシアが全員を見送ると同時に、アルビオが馬で駆けてくる。アルビオは、実戦装備を身に着けていた。

「ガルシア!」
「殿下。もしや、戦場に赴くおつもりですか?」
「ああ。出し惜しみをしている場合では無い。魔王はいないだろうが、ドラゴンが来るんだ。街の総力をあげて戦う必要があるだろう」
「……分かりました。殿下は魔族達への対処をお願いします。ドラゴンに対しては、俺達で対処します」
「ああ。魔族側の対処は任せろ」

 ガルシアの策にアルビオは一切反論しなかった。そこに病院の方向から走って来たキティとリリアが合流する。

「遅れた」
「いや、問題無い。すぐに移動してくれ。キティの担当は、魔族だ。ドラゴンへの対処は別の者がやる」
「ん。分かった」

 キティはそう返事をしてから、後ろに付いてきたリリアに抱きつく。

「行って来る」
「うん。気を付けて」

 二人は思いっきり抱きしめ合ってから、軽くキスをして離れる。キティは、ガルシアと共に戦場へと向かう。
 その後ろ姿が見えなくなって五分経っても、リリアはその場から動かず、キティ達が向かった先を見続けていた。

────────────────────────

 暗い空間。目の前も自分の身体も見えないような空間で、私はただただ落ちていた。さっきまで、私は結婚式をやって披露宴で色々な人に挨拶をしていた。それで……

「それで……どうしたんだっけ……?」

 私の記憶は、幸せを感じていたところで途切れている。何故自分がこんなところで落ちているのか全く分からない。そんな風にただただ落ちていると、不意にこんな考えが出て来た。

「これも悪夢の一種なのかな? こんな真っ暗な空間が現実だとは思えないし……」

 私は、今いるこの空間を呪いによる悪夢の中だと判断した。そうじゃないと説明が出来ない。ただ、一つだけ問題がある。

「目を覚ますにはどうすればいいんだろう? さっきからずっと落ち続けているし……」

 さっきから体感で数時間くらい落ちているように感じる。ただ、私が今いるのは夢の中なので、体感時間など役立たずに等しいだろう。

「取りあえず、自分で何か出来ないかやれるだけやってみよう」

 手足をばたつかせてどうにかならないかと確かめてみたけど、身体の感覚はあれど、落下に変化があるようには感じない。

「駄目か……せめて雪白とか天燐があれば……」

 私は魔法を使えないので、何かしらの行動を取ろうとすると、武器頼りになってしまう。

「自分の夢なんだから、武器くらい持たせてくれても良いのに……」

 私は身体を捻って、周囲を見回す。相も変わらず真っ暗闇の中だ。ここで、私はある事に気が付く。

「夢の中だけど、結構冷静に行動出来ている気がする。普段の悪夢とかだったら、こんな冷静にはいられないのに……」

 この暗闇の中でも取り乱さずに行動する事が出来ている。この思考がいつまで保つか。精神的にやられる前に、目を覚ましたいところなんだけど……
 そんな風に思っていると、唐突に地面に身体を打ち付けた。

「いっっっった!!?」

 夢の中だというのに、背中全体に痛みが走る。ただ、あの落下距離に対して、この痛みというのは、ちょっとおかしい。普通に考えたら死んでいるところだから。

「うぐぐ……本当に、何なの……!?」

 地面に着いたからか、ようやく自分の身体を見る事が出来た。

「自分の身体を見て安心する時が来るとは思わなかった……」

 数時間ぶりに自分の足で立ち上がる。そうして自分の身体を見下ろして気が付いたけど、私が着ているのは、結婚式のドレスじゃなくて、カラメルでマイラさんに作って貰った防具になっていた。

「ここまで再現出来るなら、雪白もおまけしてくれていいのに……」

 この格好をしている事に気付いたせいか、自分の傍に雪白や天燐がない事が途端に不安に感じた。

「そんな事言っても仕方ないか。取りあえず、適当に歩こう」

 自分の身体が見えるようになっても、周囲が暗闇というのは変わらなかった。どこにも光がない。それなのに、自分の身体は見える。妙な感じだ。
 それからどのくらい歩いた事だろう。不意に、正面に誰かが立っているのが見えた。見た目は人に似ている。浅黒い肌に漆黒の髪と眼の男。だけど、人と違い耳が尖っていた。たったそれだけの違いなのに、目の前の存在は人じゃない何かと確信していた。

「誰?」

 私は、いつでも動けるように準備をしつつそう訊いた。相手が言葉を認識出来るかどうかは分からないけど、聞かずにはいられなかった。

「我の名は、イブスフリール。貴様達が魔王と呼ぶ存在だ」
「は?」

 思わぬ名乗りに、眉を顰めてしまう。だけど、こいつの言っている事は、本当な気がする。ただ魔王なんて本当にいたんだ。

「貴様に呪いを掛けたのは、貴様が我を倒すに至る力を持ち合わせているからとの事だ。貴様のような小娘が」
「そう思うのであれば、呪いを解いてくれない?」

 普通に会話をしつつも、相手への警戒を忘れない。相手が動き出す前に、行動を出来るようにしておかないと。

「貴様は気が付いていないようだが、貴様は我の呪いにすら抵抗している。確実に身体を蝕み死に至らせる我が呪いをだ。たかがか小娘のくせに面白い存在だ。だから、態々こうして足を運んできたわけだ」
「はた迷惑な奴……」

 私がそう言うと、魔王はニヤリと笑う。そして、私に向かって飛びかかってきた。
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