異世界旅はハンマーと共に

月輪林檎

文字の大きさ
146 / 166
森の中の街

少しだけ嫌な想像

 翌日。いつも通りのルーティンをしていくと、ミナお姉さんの世界に来られた。到着と同時にミナお姉さんが目の前にいたので、即座に飛びつく。ミナお姉さんはすぐに受け止めてくれたので、顔を埋める。
 すると、ミナお姉さんは家の中に私を運んでベッドで横になった。ミナお姉さんの腕枕とクッションを堪能して精神的に癒された私はちょっと気になっていた事を確認する事にした。

「ミナお姉さんはスレイアの事について知りませんか? 大分昔の人物だと思うんですが」
「存じませんが、一つだけ。この世界の御伽噺は創作だけとは限りません。現実に起こった事から現実に起こった事に脚色を加えたものまであります。姫奈様がご存知の御伽噺の内容が、全て創作とは限りません」
「じゃあ、スレイアが本当に雪のお姫様だったという可能性も十分にあり得ると……御伽噺になるにはどのくらいの年月が必要なんでしょうか?」
「私には分かりかねます。いつの間にか出来ているものですから。ですが、御伽噺になっていたとしても、その物語が直後に書かれたとは限りません。長い年月を経て物語にされたものもあれば、ごく最近の出来事を創作にして書いているものもあるでしょう」
「お話から年代を推定するのは、結構難しいって事ですね。う~ん……まず探すのは、スレイアが眠っていた場所って感じかな……その場所まで行けばスレイアが分かると良いけど……」

 御伽噺がいつ頃出来たものなのかは分からない。加えて言えば、元々口伝で伝わっていった物に脚色を加えて物語に仕立て上げたという可能性もある。これはミナお姉さんの言う通りだ。御伽噺の内容はともかく出来た時期から探るのは厳しそう。少なくともこの発売時期などよりも前という事しか分からないかな。
 ただし、それだと範囲が広すぎるので、参考にならない。
 やっぱり、スレイアが眠っていた場所を見つけて、そこから情報を得るのが一番かな。スレイアもあの物語は、自分の事のようで何かが違うって言っていたし、物語から繋げるよりはそっちのアプローチが良いと思う。作者の違う雪のお姫様の物語があったら買って読んでみるくらいにしておこう。

「ミナお姉さんは、世界に大きく干渉していませんから、御伽噺とかにも出てないですよね?」
「はい。私は、姫奈様の中に残れば、それで良いです」

 ミナお姉さんはそう言って私の髪に指を通していく。そんな指の感触を楽しみながら、一つ気になった事を思い出した。

「そういえば、【不死】って結構取りやすいものなんですか?」

 私、アリサ、スレイア。三人とも【不死】を持っている。私は元々の転生特典で持っていたものが根付いたもの。アリサは、アリサが変身したドラゴンの特性。それでは、スレイアは?

「手に入れる経緯は様々でしょうが、通常の人間が手に入れる事はそうそうないでしょう。一つは呪い。もう一つは何かしらの特性。最後に姫奈様のような転生になります。最後はかなり特殊な事例になりますので、あの世界にいて【不死】を持つのは前の二つのどちらかが理由でしょう」
「なるほど……」

 そうなると、スレイアは呪いを掛けられた事による獲得になるのかな。雪姫がアリサみたいな特性を持つとは思えないし。
 そんな事を考えていると、さりげなく腰に手を回して私を引き寄せた。ミナお姉さんの顔が間近に来る。そこまで来れば、私の方が我慢出来なくなる。
 ミナお姉さんに甘えて二時間過ごしていき、最後の最後にミナお姉さんに寄り掛かっていると、重要な事を伝えられた。

「お伝えし忘れていましたが、姫奈様の【不死】の使用回数が増えている事に伴い、【不死】からスキルが派生するかもしれません」
「え……?」
「確証はありませんので、必ずとは言いませんが、その可能性がある事を知っておいてください」
「なる……ほど……それは死ななければ変わらないって事ですよね……?」
「はい。ですが、姫奈様は、これからもご無理をなされるのでしょうから」
「うっ……で、でも……強くなればそうはなりませんし……」
「ついこの前も側頭部を殴られていましたね」
「うっ……」
「頭への一撃は、そのまま死に直結してもおかしくありませんよ?」
「うぅ……」

 全部図星であるためにミナお姉さんにくっついて顔を隠す。実際何度も死んでいるという点はその通りで、一つの街で一回は死にかけるか死んでいる気がする。確かに【不死】の使用回数は、奴隷時代から着実に増えている。
 ミナお姉さんが言っているのは、【不死】にはレベルがないけど、【不死】の使用回数が獲得条件のスキルもあるという事だ。気を付けないと更に人間離れした存在になってしまうかもしれない。【不死】に関連するとすれば、真っ先に思い付くのは【不老】だ。
 そこからスレイアの持っている【不老】は、【不死】からの派生で手に入れたものなのではという考えに至る。そこから何度も死んで生き返っているというのも真実味を帯びる。
 人の怒鳴り声が苦手で、脅しとかが怖くて怯える程のトラウマを抱えている。それが親による虐待とかではなく、スレイアを殺しにきた人達によるものだったら。物語として何かが違うと言っていたのは、どこになるのだろう。
 私が思ったのは、スレイアが悪というものが間違いなのではという事だ。吹雪を起こしていたのは、元々だとしたら。どこか人のいない場所にいて、人から身を隠すために自分の周囲に猛吹雪を起こしていたとしたら。勝手にやって来て開拓か何かの邪魔だったから殺した。死なないから死ぬまで色々な方法で殺そうとし続けた。それがあの耐性スキルのレベルと多さに繋がる。
 だから、何も文句を言われないように休眠状態に入った。何かしらの方法で自分の安全を高めた結果、その人達はスレイアを殺す事を諦めた。そういう風にも考えられる。
 では、あの御伽噺は何か。スレイアを悪役にする事により正当性を出して、再びスレイアが起きた時にちゃんと殺せるようにした。それがあの御伽噺から得られるものだったら。
 ミナお姉さんに包まれて、冷静な考えが出来るようになったからなのか嫌な想像がどんどんと出て来てしまった。
 すると、ミナお姉さんが頭を撫でてくれる。

「姫奈様。過去も大事ですが、未来をお考え下さい。過去に嫌な体験をしているというのなら、現在で良い体験をして貰い、その方の未来をお守りしましょう。過去ばかりを思い返して嫌な思いをするよりも現在で良い気分にさせるのが良いと私は思います」
「……はい。そうですね。私も頑張ってみます!」
「はい。姫奈様なら大丈夫です」

 ミナお姉さんは、私の額にキスをしてくれた。
 それを最後に意識は現実の身体へと戻っていく。祈りながらミナお姉さんに感謝を伝えてから目を開けると、スレイアの胸が目の前にあった。ちょっとだけ顔を上に上げると、スレイアの顔がある。

「おはよう……」
「おはよう。歯磨きとかはした?」
「うん……今はアリサが使っている……」
「そっか。それじゃあ、朝ご飯にしようか」
「うん……」

 立ち上がった私を、スレイアはジッと見ていた。

「どうしたの?」
「ううん……何でもない……」

 まだスレイアの内心を察する事は出来ない。もう少し分かり易い時なら出来るけど、まだ付き合いが浅いから細かな内心は察せなかった。
 スレイアにじっと見守られながら朝ご飯を作っていく事となる。本当にスレイアは何を思っているのだろうか。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【挿絵あり】聖輪女神教団の司祭

ドヨ破竹
ファンタジー
聖輪女神教団所属の一般出身司祭クロードの話 ※小説家になろう様でも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ある日、日常がハーレムになりました

ネロ
恋愛
ある日、日常がハーレムと化した。 タイプの全く違う女子たちが、悠真を巡って取り合いに……と思いきや、全員で平等に共有することに……?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!