フェイバーブラッド ~吸血姫と純血のプリンセス~

ヤマタ

文字の大きさ
2 / 54

第2話 戦う理由

しおりを挟む
 赤時小春(あかとき こはる)は自らに起こった出来事を脳内で整理する。
 まずフードを目深に被った不審者集団によって廃墟に監禁され、そこを吸血姫と名乗るクラスメイトの美少女に助けられるというアニメや漫画にでもありそうなシチュエーションを体験したのだ。こんな出来事に遭遇する確率は果たしてどれくらいのものなのだろうか。

「それで吸血姫って一体何なの? ヴァンパイアとかドラキュラみたいなものだよね?」

「近しい存在だけど厳密には違う種族よ。吸血姫は日本独自に発展した種族で、それらとは異なる特徴を持つの。例えば吸血姫に血を吸われても吸血姫化することはないし、十字架が苦手というわけでもない。日光を浴びていると弱体化するけれど死にはしないしね。西洋のドラキュラタイプに比べると、より人間に近いのが私達なのよ」

「へえ・・・地域によって特徴が違うならご当地マスコットみたいだね」

「そんな可愛らしいものではないわ。同族で醜い戦争を続ける憐れな種族よ」

 悲し気に千秋は俯く。昨日の戦いも、その醜い戦争の一部始終なのだろうか。

「それは人間だって同じだよ」

「かもしれないわね。でも事情が色々複雑なの。まあとにかく、吸血姫なんて碌な存在ではないわ」

 まるで自分を卑下するような言い方であったが、その事情とやらを訊いても今の自分には理解できないのだろうなと次の話題に移す。

「でさ、私の血のことなんだけど・・・・・・」

「あなたの血は普通の人間の血とは違う。恐らくだけど、フェイバーブラッドと呼ばれるものよ」

「ふぇいばーぶらっど・・・?」

「吸血姫は動物や人間の血をエネルギーとして身体能力を強化したりすることができるの。フェイバーブラッドは普通の血よりも強力なエネルギーを生み出すことができる血で、とても希少価値の高いものなのよ」

 その希少価値の高い血が自分に流れているなど小春には信じられなかった。強力なエネルギーを生み出せるらしいが小春の運動神経は並みだし、血液検査などでも異常があると言われたことはない。

「それが私の血なんだ」

「ええ。あなたの血を吸った私は瞬時に回復したし、力が漲るのを感じたわ。なによりとても美味だったし」

「美味しいんだ・・・・・・」

 血の味などどれも変わらないと思うが吸血姫には違いが分かるのだろう。
 そんな会話をしている中、小春のお腹が鳴って空腹を知らせた。思い返せば昨晩から何も食べていないし、かなりの量の血を吸われたことで小春の体もエネルギーを欲しているのだ。

「お昼ご飯にしましょう。そろそろ用意も終わっているはずだから」

「用意?」

「私のママ・・・お母さんがね、食事を用意してくれているわ」

「ママって言った・・・・・・」

 指摘されて千秋は顔を真っ赤にして先に部屋を出ていった。

「へへへ、意外とカワイイところがあるんだ」

 千秋とはこれまで面識はほとんど無かったがクラスの中ではクールキャラとして認識されており、そんな彼女の一面を見ることができた小春はにやけながら千秋の後を追った。





「あらぁ、目が覚めて良かったです!」

「ど、どうも」

 リビングで小春を出迎えてくれたのは、おっとりとした20代くらいの成人女性だった。整った容姿は千秋に似ているが、少し垂れ目で優しそうな雰囲気を醸し出している。

「自己紹介がまだでしたね。わたしは千秋ちゃんの保護者の千祟美広(ちすい みひろ)といいます。」

「赤時小春です。宜しくお願いします」

「一晩中帰らなくてきっと親御さんが心配してますよね。連絡はしましたか?」

「父の長期出張に母もついていったので家には私一人しかいないんです。だから連絡はしてないです」

「そうなんですか。一人じゃあ寂しいですよね」

「いえ、慣れてますから」

 仕事熱心な父と、それを支える母。聞こえはいいのだが家族サービスなどあまりなく思い出なども少ない。特に小春が高校生となってからは父親の出張の関係で家では一人で過ごすことが多くなっていた。
 
「ささ、こちらへどうぞ。簡単な食事しか用意できませんでしたが、召し上がってください」

「ありがとうございます。いただきます」

 食卓の上には三人分の食事が用意されていて、小春は促されるまま頂くことにした。卵焼きやみそ汁などまるで朝食のようなメニューだが、目覚めたばかりの小春にとっては嬉しい内容だ。

「吸血姫も普通の食事を食べるんですね?」

「そうですよ。わたし達は普段はこうして一般の方々と変わらない物を食べていまして、力を使わなければ血を欲するのはたまになんです」

「なるほど」

 吸血姫なんていうものだから普段から血を飲んでいると思ったがそうでもないようだ。

「ママ・・・じゃなくてお母さん、今夜も出かけるから」

「無理は禁物よ。昨日だって赤時さんがいなかったピンチだったんだから」

「分かってる」

 出かけるというのは昨日のように戦いに赴くということなのだろう。小春の知らないだけで吸血姫による戦いは身近で行われているのかもしれない。
 
「ねえ、千祟さん達は一体何と戦っているの?」

「吸血姫は二つの勢力に別れているの。一つは人間を家畜にして吸血姫による支配を目論む過激派。もう一つは人間との共存を図り、過激派の野望を食い止めようとしている私達共存派。この二つの勢力が戦争をしていて、私は過激派連中と戦っているの」

「人間を家畜に・・・? そんな吸血姫が勝ってしまったら・・・・・・」

「人は人権など失い、生きる希望も持てない世界となるでしょうね」

「そんな・・・・・・」

 過激派が勝利したら当たり前のように過ごしている日常が崩壊するということだ。そう考えると割と能天気な小春でも恐怖を感じる。

「私は人間が好きってわけではないわ。でも人の生みだした文化や、この世界の有り方は好きなの。だからそれを壊そうとする者達は許せないし、他者を弄ぶような行いは阻止したいのよ」

 戦う理由は人それぞれだ。だから千秋の考えに小春は頷き、そして心の内で芽生えた思いを口にする。

「ねえ、私にも手伝えることあるかな?」

「えっ? 赤時さんに?」

「うん。千祟さんの話を聞いて、私にも何かできないかなって。例えば私の血が特殊で役に立つというのなら、それを千祟さんに提供するとかさ」

「でも・・・・・・」

 千秋は考え込むように手を顎に当てている。いくらフェイバーブラッドの持ち主とはいえ、一般人である小春を吸血姫の戦いに巻き込んでよいものかという葛藤だ。勿論、小春の言う通り血を提供してもらえれば千秋も安心して戦えるのだが。

「戦争なんだから危険なことに首を突っ込むことになるんだろうけど、でも過激派が幅を利かせる世界になればどの道終わりでしょ?ならそれを食い止めたいんだ」

「・・・分かったわ。ならまずは私達の戦いを見学することから始めましょう。それで今後を考えればいいわ」

「そうするよ」

 確かに吸血姫の戦争について言葉で聞いただけで、実際に目にしてみなければ理解できないこともあるだろう。だから千秋の提案に乗ることにした。

「でも本当にいいのですか?」

「はい。私のような目に遭っている人だっているかもしれないですし、なら千祟さんの手助けをしてそうした人達を救えたらって」

「そこまで仰るなら・・・・・・千秋ちゃん、赤時さんをしっかり守ってあげるのよ」

 美広の言葉に千秋は頷き、食べ終わった後の食器をキッチンへと運んでいく。その背中が頼もしく見え、出会ったばかりではあるが命を任せられる相手だと何故だか思えた。





 昼食の後、一度自宅へと帰って身支度を整える小春。昨日の服は汚れているしシャワーも浴びておきたかったのだ。

「これでよしっと」

 夕刻、千秋との待ち合わせ場所である駅前へと向かう。週末であることから人の出は多かったが千秋の姿をすぐに見つけることができた。

「お待たせ。千祟さん来るの早かったんだね?」

「いえ私も今来たところよ」

「そう・・・ってか何故制服?」

 小春は普段着にしている動きやすいジャージを着てきたのだが、千秋は学校の制服を着ていた。そのブレザーでは戦いにくいのではないだろうか。

「カッコイイからよ」

「えっ? でも学校を特定されたりするかもしれないよ?」

「その時はその時よ。いい? 高校生だからこそ、その特権を使わなきゃ損でしょう?」

「あ、うん、そうだね」

 ドヤ顔でそう主張する千秋に何も言い返せず頷くことにした小春。先日も制服で戦っていたし彼女なりのこだわりがあるのだろう。

「それで、どこに行くの?」

「敵の隠れ家の一つを潰しに行くの。決行は深夜だけど、その前に偵察をしておきたいのよ」

「ふむふむ」

 歩き出し出した千秋について行き、作戦プランを聞きだす。

「この街の外縁部に削岩施設があるのは知っているかしら?」

「そんなのあったっけ?」

「だいぶ昔に稼働終了して放置されている施設よ。そこに過激派連中が潜んでいるらしいの」

「いかにもって感じだね」

「そういう人目に付きにくい場所をヤツらは好むわ。暗部とよばれる場所をね」

 悪の組織とは日陰で虎視眈々と侵略の準備をしているもので、まさにテンプレートな潜伏の仕方と言えよう。

「まずは削岩施設の様子を窺うわ。そして敵がいると確信を持てたら攻撃を行う」

「張り込みってやつだね」

 駅前からバスに乗り込み街外れまで移動する。そして最寄りのバス停から目的地となる削岩施設までは徒歩で向かうが、その周囲には人影もなく二人の少女がいること自体が違和感を醸し出していた。





 破棄された削岩施設を見下ろせる高台へと昇り、物陰に身を隠しながら様子を窺う二人。陽が完全に落ちてから施設に動きがあって、小春を襲ったようなフードを被った不審者達が数名集まって来たのが見えた。

「あそこに敵がいる。間違いない」

「あんなに吸血姫がいるんだね」

「アレは吸血姫じゃないわ。傀儡吸血姫(くぐつきゅうけつき)と呼ばれるヤツらよ。人間の死体に特殊な術をかけて精製された操り人形なの」

「人間の死体を・・・?」

「そう。ヤツらは人間を誘拐して死ぬまで血を吸い取り、そして死んだ後は傀儡吸血姫の材料としているの。本来傀儡吸血姫の精製は禁忌とされてきたのだけれど、倫理観の欠片も無い過激派は平気でそういう事をするわ」

 過激派と呼ばれる吸血姫は人間を血液を生み出す下等な肉塊程度にしか思っていない。だから上位種たる吸血姫の好きにしていいという理屈だし、死体を素材にするという冒涜的な行いも気にしないのだろう。

「そんなの阻止しないとね」

「ええ。これ以上被害者が出る前に止めるわ」

 千秋は立ち上がり、削岩施設へと歩き出す。

「赤時さん、私から離れないで。戦場でもなるべく」

「うん、分かった」

 小春も千秋の後を追って削岩施設へと近づいていき、傀儡吸血姫に見つからないよう潜入する。灯りは最低限の電灯しか点いていないので足元さえ見づらく、何かに足を引っかけないよう慎重に敵との間合いを詰めていく。

「私が敵に奇襲をかけるから、赤時さんはここで待っていて。血の補給が必要になったら戻るわ」

「了解」

 施設の奥に傀儡吸血姫が数人突っ立っており、こちらにはまだ気がついていない。今なら不意打ちをすることが可能だ。

「ヤツらの思い通りにはさせない・・・!」

 手の甲に浮かび上がらせた紋章が千秋の刀を形成する。
 そして、物陰から飛び出した千秋は傀儡吸血姫へと斬りかかった。

    -続く-
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

処理中です...