24 / 54
第24話 廃墟の主
しおりを挟む
捕らえられた朱音を追って愛佳は館の三階へと階段を昇る。すると古びた扉がギギッと開く音が聞こえ、先程の傀儡吸血姫達が部屋へ入っていくのが見えた。
「あっこに敵の首領がいるのかしら」
武器を構え慎重な足取りで扉の前へと移動する。この部屋は他よりも大きいようで、両開きの二枚扉は傷ついているが金枠の装飾が施されて特別感があった。
「よし・・・行くわよ!」
扉を蹴破り、転がり込みながら部屋の中へと侵入する愛佳。部屋の内部には傀儡吸血姫達と奇怪な赤いマントを羽織った吸血姫が立っていて、驚いた様子で愛佳に視線を向けてきた。
「おやおや・・・今日はお客さんが多い日ですねぇ」
「アンタがコイツら傀儡吸血姫のご主人様なのね?」
「そうですよぉ。アナタ可愛らしい巫女さんですねぇ。是非私のコレクションに加えたいところですねぇ。うへへへへぇ」
「・・・まったく吸血姫ってのはこうもオカシイ奴らばかりなの?」
冷めた視線でマントの吸血姫と朱音を交互に見る。その朱音はロープでグルグル巻きにされた上に天井から吊るされてイモムシのようになっていた。
「おいっ! こんなヤツと一緒にしないでくれ」
「アンタが一番オカシイのよ自覚ある?」
「うそ・・・だろ・・・・・・」
愛佳はヤレヤレと首を振りながらも刀を構えなおした。今はともかく目の前の敵を排除しなければならない。
「さあ、やってしまいなさい」
「はい、ご主人様」
マントの吸血姫の指示で傀儡吸血姫達が魔具を装備し愛佳に襲い掛かってきた。それらの攻撃をいなして反撃していき、朱音救出の隙を窺う。このまま単独で交戦するよりも二人で戦うほうが勝率が上がるからだ。
「神木さん・・・そんなに必死になってアタシを助けようとしてくれるなんて・・・・・・」
「うっさい! 別に必死になんてなってないわよ!」
「素直じゃないんだからもう」
「ムカつくわ・・・!」
捕まっているクセに余裕そうにウインクしてくる朱音に舌打ちしながらも、愛佳は傀儡吸血姫一人を倒した。しかしまだ数体残っており劣勢であることには変わりはない。
「いいですねぇ。獲物が徐々に弱っていく姿を見るのが私の趣味なんですよぉ」
「そんな事言っていられるのも今のうち! ボコボコにしてやるわ」
「ふふふ、強気な娘を痛めつけるのも楽しいですよねぇ。アナタは一体どんな声で鳴いてくれるのか想像するだけでゾクゾクしちゃいますわぁ」
「キモイなコイツ」
不愉快そうに眉をしかめ、傀儡吸血姫をマントの吸血姫に向かって蹴り飛ばした。
「おっと過激ですねぇ」
「過激派のアンタに言われるとは・・・・・・」
心外だとばかりに睨みつけ、もういっそ倒してしまおうとマントの吸血姫に斬りかかる。だがマントの吸血姫はその斬撃をヒラリと軽く躱してみせた。
「うひょうひょ」
「ちょこまかと動くな!」
「甘いですねぇ。そんな一撃で私は殺せませんよぉ」
「マジで鬱陶しい!」
キレぎみに刀を一閃させるが、またしても回避されてしまう。
「ほらほらぁ、こっちですよぉ」
マントを手に持って闘牛士のように愛佳を挑発する吸血姫。マントの吸血姫は身のこなしが軽く攻撃を当てるのは容易ではなさそうだ。
「バカにしてっ!」
「私ばかりにかまって大丈夫かしらぁ?」
背後から傀儡吸血姫に殴りかけられて慌てて避けるが、今度はマントの吸血姫に蹴り飛ばされてしまった。
「くっそ・・・!」
「弱いですねぇ。この程度ですか巫女は」
「なかなかやるわね・・・・・・」
敵の連携力の高さに舌を巻く愛佳。このままではジリ貧に追い込まれてしまう。
「だったら!」
立ち上がってマントの吸血姫に向かって駆けだす。
「直情的な娘は好きですが、それでは勝てませんよぉ」
「そうかしらね?」
愛佳のターゲットは吸血姫ではなく朱音だった。ともかく人手を増やす以外に勝ち目は薄い。
マントの吸血姫を躱し、跳躍した愛佳は朱音を吊るしているロープを刀で切断した。
「しまった! せっかく捕まえたのに!」
どうせなら人質・・・いや吸血姫質にでもすればよかったのに、こうもあっさり奪還されるあたりマントの吸血姫もかなりのマヌケだ。というのもまさか巫女が吸血姫を助けるわけないという先入観に囚われていて、例え朱音を使って脅しても愛佳は素直に投降などしないだろうと踏んでいたのである。
それくらい巫女と吸血姫のタッグというものは珍しいのだ。
「いてっ! もうちょっと優しい救助を・・・・・・」
「助けてもらったクセに生意気ね。ありがたいと思いなさい」
「勿論感謝はしてるよ。あと、ロープをほどいてくれないかな?」
「仕方ないわねぇ・・・・・・」
朱音の体はまだキツくロープで巻き付けられていて、これをほどかないことには戦闘はできない。
「これ以上やらせませんよぉ!」
しかしマントの吸血姫達の妨害が入る。ロープをほどかれては逆転される可能性があるため、さすがに焦っているようだ。
「相田朱音! なんとかしなさいよ!」
「無茶を仰らないで」
「足は動かせるんだから蹴りとかで対処しなさい!」
朱音の魔具はグローブであり、腕を封じられているので満足な攻撃もできず逃げ回っている。
「太陽光さえあれば・・・!」
窓の前には大きな棚が置かれていて、それをどければ太陽光が差し込むだろう。いっそ刀で斬って破壊しようと近づくが、
「邪魔してくるなよもう!」
傀儡吸血姫に襲われて棚を壊す隙を作れずにいた。
「アタシに任せいっ!」
「相田朱音!?」
上半身をす巻きにされた姿で走るのは滑稽であるが朱音は至って真剣に走り、進路を塞いだ傀儡吸血姫に向かって渾身の頭突きを放つ。そして敵を巻き込んだまま棚へと突っ込んだ。
バキッと木材の割れる激しい音とともに棚が壊れ、勢いのまま朱音と半壊した棚が窓を破って落下していく。
「うわっ! また落ちるのかよ!?」
「二度目なら慣れたでしょ」
と言っているうちに朱音の姿は見えなくなった。
だがこれで愛佳にとって有利な状況が作られた。窓枠ごと吹っ飛んでいったことにより、まばゆい真夏の太陽光が部屋へと差し込んだのだ。
「形成逆転ね!」
「こうなったら逃げるが勝ち・・・」
「逃がすかよ!」
エネルギーを精製し最大まで回復した愛佳は、逃走しようとしたマントの吸血姫の近くに瞬時に移動する。
「終わりよ変態!」
マントの吸血姫は太陽光を浴びているせいで能力が低下していて、これでは愛佳の戦闘スピードには付いていけない。これはマントの吸血姫の戦闘力が他に比べて低いことも関係しているが、ともかく太陽光がある状況なら巫女に分がある。
「ぐあっ・・・こんな、まさか巫女にぃ・・・・・・」
胴体を裂かれたマントの吸血姫は血を吐き出しながら倒れて絶命した。残るは傀儡吸血姫達で、それらも愛佳によって瞬殺される。巫女の真髄を久しぶりに発揮できて愛佳も満足そうだ。
「おーい、大丈夫?」
周囲の安全を確認してから朱音の様子を確認する。
「だいじょばないっす・・・ロープをなんとかしてくんろ・・・・・・」
生きているようだが、地面に横倒しになってカブトムシの幼虫のようにクネクネと動いていた。それが面白くて愛佳はスマートフォンのカメラで撮影を始める。
「なんで撮るんすかっ!?」
「キモオモロイからだけど」
「早く助けてくれ~!」
しょうがないわねぇと、愛佳は飛び降りて朱音のロープを解いてあげることにした。
愛佳達が吸血姫を退治した一方で千秋はまだ弄ばれていて、体力を消耗してぐったりとし反応が鈍くなったので傀儡吸血姫達も飽きはじめていた。
「ご主人様遅いな。なにかあったのだろうか?」
「さっきまで上の階から物音がしていたけど静かになったし、まさか・・・・・・」
「やられたというのか?」
「そんなハズはない。きっと勝利して敵を捕らえて遊んでいるんだ。もう少し待ってみよう」
「だな。しかしコイツの活きが悪くなってきたな」
筆先で千秋の腹を撫で上げるが、俯く千秋は何も感じていないようだ。
「さすがにくすぐりにも慣れてきたのか。ならまた痛みを伴う拷問に変えるしかないな」
傀儡吸血姫は千秋の体に巻き付くワイヤーを引っ張って苦痛を与える。だが、これが失敗だった。
ワイヤー先端に取り付けられたアンカーを壁に刺して千秋を固定していたのだが、壁が脆くなっていたこともあり引っ張った影響でアンカーが抜けてしまったのだ。
「あっ、拘束が・・・・・・」
「この瞬間を待っていたのよ・・・!」
抵抗を止めていた千秋は体力を温存して脱出のチャンスを窺っていたのだ。アンカーが抜けて腕が自由になり、千秋はすぐさま魔具を装備して目の前の傀儡吸血姫を斬りつけ、更に足のワイヤーも切断した。
「よくも好き放題やってくれたわね・・・!」
「チッ! けれど私達の優位は変わらない!」
傀儡吸血姫はハンマーを投げつけてくるが、それを回避してクローゼット前へと移動する。
「小春、血をお願い!」
「う、うん!」
クローゼットから飛び出した小春は首筋を差し出し、千秋が噛みついてフェイバーブラッドを吸収する。
「なんだ、血を!?」
「本気でいくわよ・・・・・・」
回復した千秋は恐ろしい眼光で睨みつけながら傀儡吸血姫に襲い掛かった。その形相に恐れを抱いた傀儡吸血姫は再び閃光球を使おうとしたが、
「同じ技など!」
閃光球を取り出した傀儡吸血姫を撃破し、近くにいた一体も両断して粒子に帰す。
「これが千祟の力!?」
「もっと見せてあげるわ。純血のプリンセスの恐ろしさを!」
容赦のない千秋は凶禍術を行使し、髪が真紅に染まって瞳も薄く発光している。全開の殲滅モードへと移行した千秋は瞬間移動にも等しい動きで敵を翻弄、そして刀を舞うように振り回す。
「化け物か・・・っ!」
「そうよ化け物よ。そんな私を怒らせたアナタ達の愚かさを悔いることね」
最後の一体は悲鳴を上げる暇もなく消し去られた。
冷静になった千秋は自分が半裸で戦っていたことを認識し慌てて制服を着直す。ここにいるのが小春だけなら全裸でも別に構わないのだが、さすがに敵がいるような場所ではマズいと思える理性はある。
「千秋ちゃん!」
小春は千秋に勢いよく抱き着いて安堵の表情を浮かべていた。
「もう大丈夫よ。周りに敵はいないわ」
「うん・・・それより千秋ちゃんは大丈夫なの? あんなことされて・・・・・・」
「私は平気よ。そりゃ多少は屈辱的だったけど」
「ずっと心が痛かったし、胸が苦しかった・・・千秋ちゃんが酷い事されているのはもう見たくない・・・・・・」
「小春・・・ゴメンね。不安にさせてしまって」
千秋は少し震える小春の頭を優しく撫でつつ、ともかくお互いが無事で良かったと一安心するのであった。
-続く-
「あっこに敵の首領がいるのかしら」
武器を構え慎重な足取りで扉の前へと移動する。この部屋は他よりも大きいようで、両開きの二枚扉は傷ついているが金枠の装飾が施されて特別感があった。
「よし・・・行くわよ!」
扉を蹴破り、転がり込みながら部屋の中へと侵入する愛佳。部屋の内部には傀儡吸血姫達と奇怪な赤いマントを羽織った吸血姫が立っていて、驚いた様子で愛佳に視線を向けてきた。
「おやおや・・・今日はお客さんが多い日ですねぇ」
「アンタがコイツら傀儡吸血姫のご主人様なのね?」
「そうですよぉ。アナタ可愛らしい巫女さんですねぇ。是非私のコレクションに加えたいところですねぇ。うへへへへぇ」
「・・・まったく吸血姫ってのはこうもオカシイ奴らばかりなの?」
冷めた視線でマントの吸血姫と朱音を交互に見る。その朱音はロープでグルグル巻きにされた上に天井から吊るされてイモムシのようになっていた。
「おいっ! こんなヤツと一緒にしないでくれ」
「アンタが一番オカシイのよ自覚ある?」
「うそ・・・だろ・・・・・・」
愛佳はヤレヤレと首を振りながらも刀を構えなおした。今はともかく目の前の敵を排除しなければならない。
「さあ、やってしまいなさい」
「はい、ご主人様」
マントの吸血姫の指示で傀儡吸血姫達が魔具を装備し愛佳に襲い掛かってきた。それらの攻撃をいなして反撃していき、朱音救出の隙を窺う。このまま単独で交戦するよりも二人で戦うほうが勝率が上がるからだ。
「神木さん・・・そんなに必死になってアタシを助けようとしてくれるなんて・・・・・・」
「うっさい! 別に必死になんてなってないわよ!」
「素直じゃないんだからもう」
「ムカつくわ・・・!」
捕まっているクセに余裕そうにウインクしてくる朱音に舌打ちしながらも、愛佳は傀儡吸血姫一人を倒した。しかしまだ数体残っており劣勢であることには変わりはない。
「いいですねぇ。獲物が徐々に弱っていく姿を見るのが私の趣味なんですよぉ」
「そんな事言っていられるのも今のうち! ボコボコにしてやるわ」
「ふふふ、強気な娘を痛めつけるのも楽しいですよねぇ。アナタは一体どんな声で鳴いてくれるのか想像するだけでゾクゾクしちゃいますわぁ」
「キモイなコイツ」
不愉快そうに眉をしかめ、傀儡吸血姫をマントの吸血姫に向かって蹴り飛ばした。
「おっと過激ですねぇ」
「過激派のアンタに言われるとは・・・・・・」
心外だとばかりに睨みつけ、もういっそ倒してしまおうとマントの吸血姫に斬りかかる。だがマントの吸血姫はその斬撃をヒラリと軽く躱してみせた。
「うひょうひょ」
「ちょこまかと動くな!」
「甘いですねぇ。そんな一撃で私は殺せませんよぉ」
「マジで鬱陶しい!」
キレぎみに刀を一閃させるが、またしても回避されてしまう。
「ほらほらぁ、こっちですよぉ」
マントを手に持って闘牛士のように愛佳を挑発する吸血姫。マントの吸血姫は身のこなしが軽く攻撃を当てるのは容易ではなさそうだ。
「バカにしてっ!」
「私ばかりにかまって大丈夫かしらぁ?」
背後から傀儡吸血姫に殴りかけられて慌てて避けるが、今度はマントの吸血姫に蹴り飛ばされてしまった。
「くっそ・・・!」
「弱いですねぇ。この程度ですか巫女は」
「なかなかやるわね・・・・・・」
敵の連携力の高さに舌を巻く愛佳。このままではジリ貧に追い込まれてしまう。
「だったら!」
立ち上がってマントの吸血姫に向かって駆けだす。
「直情的な娘は好きですが、それでは勝てませんよぉ」
「そうかしらね?」
愛佳のターゲットは吸血姫ではなく朱音だった。ともかく人手を増やす以外に勝ち目は薄い。
マントの吸血姫を躱し、跳躍した愛佳は朱音を吊るしているロープを刀で切断した。
「しまった! せっかく捕まえたのに!」
どうせなら人質・・・いや吸血姫質にでもすればよかったのに、こうもあっさり奪還されるあたりマントの吸血姫もかなりのマヌケだ。というのもまさか巫女が吸血姫を助けるわけないという先入観に囚われていて、例え朱音を使って脅しても愛佳は素直に投降などしないだろうと踏んでいたのである。
それくらい巫女と吸血姫のタッグというものは珍しいのだ。
「いてっ! もうちょっと優しい救助を・・・・・・」
「助けてもらったクセに生意気ね。ありがたいと思いなさい」
「勿論感謝はしてるよ。あと、ロープをほどいてくれないかな?」
「仕方ないわねぇ・・・・・・」
朱音の体はまだキツくロープで巻き付けられていて、これをほどかないことには戦闘はできない。
「これ以上やらせませんよぉ!」
しかしマントの吸血姫達の妨害が入る。ロープをほどかれては逆転される可能性があるため、さすがに焦っているようだ。
「相田朱音! なんとかしなさいよ!」
「無茶を仰らないで」
「足は動かせるんだから蹴りとかで対処しなさい!」
朱音の魔具はグローブであり、腕を封じられているので満足な攻撃もできず逃げ回っている。
「太陽光さえあれば・・・!」
窓の前には大きな棚が置かれていて、それをどければ太陽光が差し込むだろう。いっそ刀で斬って破壊しようと近づくが、
「邪魔してくるなよもう!」
傀儡吸血姫に襲われて棚を壊す隙を作れずにいた。
「アタシに任せいっ!」
「相田朱音!?」
上半身をす巻きにされた姿で走るのは滑稽であるが朱音は至って真剣に走り、進路を塞いだ傀儡吸血姫に向かって渾身の頭突きを放つ。そして敵を巻き込んだまま棚へと突っ込んだ。
バキッと木材の割れる激しい音とともに棚が壊れ、勢いのまま朱音と半壊した棚が窓を破って落下していく。
「うわっ! また落ちるのかよ!?」
「二度目なら慣れたでしょ」
と言っているうちに朱音の姿は見えなくなった。
だがこれで愛佳にとって有利な状況が作られた。窓枠ごと吹っ飛んでいったことにより、まばゆい真夏の太陽光が部屋へと差し込んだのだ。
「形成逆転ね!」
「こうなったら逃げるが勝ち・・・」
「逃がすかよ!」
エネルギーを精製し最大まで回復した愛佳は、逃走しようとしたマントの吸血姫の近くに瞬時に移動する。
「終わりよ変態!」
マントの吸血姫は太陽光を浴びているせいで能力が低下していて、これでは愛佳の戦闘スピードには付いていけない。これはマントの吸血姫の戦闘力が他に比べて低いことも関係しているが、ともかく太陽光がある状況なら巫女に分がある。
「ぐあっ・・・こんな、まさか巫女にぃ・・・・・・」
胴体を裂かれたマントの吸血姫は血を吐き出しながら倒れて絶命した。残るは傀儡吸血姫達で、それらも愛佳によって瞬殺される。巫女の真髄を久しぶりに発揮できて愛佳も満足そうだ。
「おーい、大丈夫?」
周囲の安全を確認してから朱音の様子を確認する。
「だいじょばないっす・・・ロープをなんとかしてくんろ・・・・・・」
生きているようだが、地面に横倒しになってカブトムシの幼虫のようにクネクネと動いていた。それが面白くて愛佳はスマートフォンのカメラで撮影を始める。
「なんで撮るんすかっ!?」
「キモオモロイからだけど」
「早く助けてくれ~!」
しょうがないわねぇと、愛佳は飛び降りて朱音のロープを解いてあげることにした。
愛佳達が吸血姫を退治した一方で千秋はまだ弄ばれていて、体力を消耗してぐったりとし反応が鈍くなったので傀儡吸血姫達も飽きはじめていた。
「ご主人様遅いな。なにかあったのだろうか?」
「さっきまで上の階から物音がしていたけど静かになったし、まさか・・・・・・」
「やられたというのか?」
「そんなハズはない。きっと勝利して敵を捕らえて遊んでいるんだ。もう少し待ってみよう」
「だな。しかしコイツの活きが悪くなってきたな」
筆先で千秋の腹を撫で上げるが、俯く千秋は何も感じていないようだ。
「さすがにくすぐりにも慣れてきたのか。ならまた痛みを伴う拷問に変えるしかないな」
傀儡吸血姫は千秋の体に巻き付くワイヤーを引っ張って苦痛を与える。だが、これが失敗だった。
ワイヤー先端に取り付けられたアンカーを壁に刺して千秋を固定していたのだが、壁が脆くなっていたこともあり引っ張った影響でアンカーが抜けてしまったのだ。
「あっ、拘束が・・・・・・」
「この瞬間を待っていたのよ・・・!」
抵抗を止めていた千秋は体力を温存して脱出のチャンスを窺っていたのだ。アンカーが抜けて腕が自由になり、千秋はすぐさま魔具を装備して目の前の傀儡吸血姫を斬りつけ、更に足のワイヤーも切断した。
「よくも好き放題やってくれたわね・・・!」
「チッ! けれど私達の優位は変わらない!」
傀儡吸血姫はハンマーを投げつけてくるが、それを回避してクローゼット前へと移動する。
「小春、血をお願い!」
「う、うん!」
クローゼットから飛び出した小春は首筋を差し出し、千秋が噛みついてフェイバーブラッドを吸収する。
「なんだ、血を!?」
「本気でいくわよ・・・・・・」
回復した千秋は恐ろしい眼光で睨みつけながら傀儡吸血姫に襲い掛かった。その形相に恐れを抱いた傀儡吸血姫は再び閃光球を使おうとしたが、
「同じ技など!」
閃光球を取り出した傀儡吸血姫を撃破し、近くにいた一体も両断して粒子に帰す。
「これが千祟の力!?」
「もっと見せてあげるわ。純血のプリンセスの恐ろしさを!」
容赦のない千秋は凶禍術を行使し、髪が真紅に染まって瞳も薄く発光している。全開の殲滅モードへと移行した千秋は瞬間移動にも等しい動きで敵を翻弄、そして刀を舞うように振り回す。
「化け物か・・・っ!」
「そうよ化け物よ。そんな私を怒らせたアナタ達の愚かさを悔いることね」
最後の一体は悲鳴を上げる暇もなく消し去られた。
冷静になった千秋は自分が半裸で戦っていたことを認識し慌てて制服を着直す。ここにいるのが小春だけなら全裸でも別に構わないのだが、さすがに敵がいるような場所ではマズいと思える理性はある。
「千秋ちゃん!」
小春は千秋に勢いよく抱き着いて安堵の表情を浮かべていた。
「もう大丈夫よ。周りに敵はいないわ」
「うん・・・それより千秋ちゃんは大丈夫なの? あんなことされて・・・・・・」
「私は平気よ。そりゃ多少は屈辱的だったけど」
「ずっと心が痛かったし、胸が苦しかった・・・千秋ちゃんが酷い事されているのはもう見たくない・・・・・・」
「小春・・・ゴメンね。不安にさせてしまって」
千秋は少し震える小春の頭を優しく撫でつつ、ともかくお互いが無事で良かったと一安心するのであった。
-続く-
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる