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9.そわそわする気持ち
しおりを挟む「何してたの?」
「今日の拾った数々を洗ってました」
「やっぱり瑠璃ちゃんは、面白いね」
笑いを含んだ喋りにちょびっとムッとしてしまう。
「何が面白いのかわかりません」
つい冷たい口調になっちゃったよ。
それにしても変な感じだなぁ。会社だけの繋がりだった人と夜に話をしているなんて。
「ニャンー」
私がニ階へ上がりベッドに転がったれば、ソックスも後からすぐに部屋に入ってきて私の枕の横にデンッと横たわってきた。
毎回の事なんだけど髭が頬に当たってムズムズする。
「電話だと静かだね」
清水さんが楽しそうな口調で聞いてきた。
「何を話せば正解なのか、わからなくて。そもそも変な感じなんですよね」
「頭に浮かんだ事でも話してよ」
なんか余計に難しい。
「あ、電話でやり取りはしていますが、清水さんは、やっぱり良い声ですね」
「ゲホッ」
なんかむせてる?
「だ、大丈夫ですか?」
「……天然って恐ろしいね」
意味はよく分からないけれど、褒められていない事は分かった。何でも話してと言われたからその通りにしたのに。
「もう、話しません」
「なんで怒ってるの?」
清水さんのせいだよ。
「まぁ、話せてよかった。電話なんて面倒がって出ないと思っていたけど違ったな」
「そ、そんなことないですよ」
うっ…バレてます?
「さて、どうしようかな~」
「何がですか?」
「つきあい方」
どういう意味?
「瑠璃ちゃんは今までにないタイプだから。まめにし過ぎても嫌がられそうだし。当たってる?」
鋭いな。
「どうですかね」
でも、そこは濁しておこう。
「とりあえず平日は、メールか電話を毎日はやめてニ日おきくらいにしようかな。会うのは基本、金曜の夜か土曜日でどう?」
「どうしてそこまで考えてくれるんですか?」
私なんて新人で。ぱっとしなくて、そんな気遣ってもらうほどの人じゃないのに。
付き合おうと言われたのもいまだに信じられないよ。
「嫌われたくないし、最初に負担をかけたくないっていったでしょ? 瑠璃ちゃんって付き合ったりした事ないの?」
「…大昔に一度」
あまり良い思い出がないソレを掘り起こしたくなのに。
「気になるなぁ。まぁ、それは楽しみにとっておこうかな。さて、とりあえずは週末をどうするか俺も考えるけど、瑠璃ちゃんも考えておいて」
「はい」
仕事の、ましてベテラン相手だとどう返答してよいか分からず、聞いていますという意味での返事しかできない。
「最初から電話長いと嫌がられそうだから今日はここまでにするかな」
よかった!やっと終わる!
「お休みなさい」
挨拶をして携帯を軽くベッドの上に投げた。耳元では、ソックスの喉を鳴らす音がする。
「癒やしをちょうだい~」
嫌がられないように、そうっと、ソックスの体に顔をうめれば、ふわふわとした毛が頬を包む。
「今の生活だけで手一杯なんだけどな」
そこに突然現れた人。
「慣れる気がしない」
瑠璃は、ゴロゴロと奏でられる音を聞きながら目を閉じた。
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