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49.私、酸欠になる
しおりを挟む「く、苦しっ。初心者なめてんですか?!」
ゼーハーしながら酸素を吸いまくれば盛大にむせた。ムードもなにもない。涙目になってしまったけど苛々とした気持ちが強くて。
「もしやキス魔ですか?」
「何だそれは?」
無性に腹立つ。
「キスが異様に好きな人の事です!」
前回の不意打ちといい、なんなの? 恋愛初心者をからかってるのかな?
しつこくされたせいなのか熱く感じる唇を袖で強く擦りながら、本気で睨み付けた。この時、言葉遣いが崩れているのにも気づかない程私は怒っていたのだ。
「愛しいと感じた」
……は?
「え…あの?」
あの、私、怒っているんだけど。その微笑みはどうしちゃった?
「つ、や…」
なんだ、やって。恥ずかしいっ。というか本当に離れて。
服で拭った唇に手を伸ばされ抱き抱えられているから抵抗虚しく避けられず、輪郭をなぞる指が生々しい。
「自分でも不思議だ」
呑気だ。首傾げてないで手をどかしてよ!いまだ行き来する指は動いていてどうしたらいいのかわからないよ。
「何が不思議なんですか。噛みそうだから退かして下さい」
「構わない。噛まれてもたいして痛みやしないだろう」
いやいや。問題だよ!
「貴方を鍛練の場で見たときは、疑っていた」
そうだよね。やたら走り回り不審者だったと思う。
「次は、家族を想い泣く姿にどうしたらよいかわからなかった」
なんか、私って迷惑な奴なだけじゃん。
「あとはなんですか?」
ふて腐れた声になるけどしょうがないよね。
「見張り塔で、赤い布と黒い髪を風に遊ばせ奏でる姿に不覚にも部下と同じように惹き付けられた」
「…そ、そうですか」
徐々に居たたまれなくなってくる。
「ああ。騎士の誓いをあのように拒否されたのは初めてだった。剣を落とされ苛立ちを抑えず出した。今思えば大人げなかった」
そんな事もあったなぁ。
「青い光は、とても綺麗でした」
冷たい冬を思わせるフランネルさんから現れたゆらりと湯気のような動く光は、今も覚えている。生命そのものみたいな強さを感じた。
……コツン
「ふ、フランネルさん?」
おでこ同士がぴったりくっつけられた。
「驚き、警戒と苛立ち、興味がわき惹かれた」
いつの間にか手は私の背中にまわり支えられていた。
「貴女はどうしたら私を私の言葉を信じる?」
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