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10.
しおりを挟む「さむっ」
冷たい空気は、個人的には清々しい気持ちになれるので大歓迎だが、この悪役令嬢の身体はひ弱なので不味い。
「特に朝晩は気温が低い感じよね。慣れるまで風邪をひかないようにしないと」
また迷惑をかけてしまう。
***
「とても覚えが早く素晴らしいですわ」
「ありがとうございます」
「事前に学ばれたのですか?」
「書物を読んだくらいで疑問点が多々あります。伺ってもよろしいでしょうか?」
「勿論です。意欲のある生徒は教えがいがありますねぇ」
「なかなか筋がよろしい。あとはひたすら練習するだけです」
「努力します」
体調をみながら、くれぐれも無理をしてはいけないという条件の元、私には4人の先生がつけられた。
「経済、語学、魔法はいけそう。あとはダンスとマナーか」
今のところ講師達は厳しいながらも熱心で親切丁寧に教えてくれている。
そうなると此方も応えなけれという気持ちになり復習していたら日課である外で日向ぼっこをする時間がいつもより遅くなってしまった。
「風が少し冷たいかと思いますので」
「ありがとう」
フリージアちゃんが、私の膝にふわりと膝掛けをかけてくれた。
いや本当に至れり尽くせりで ある。そんな高待遇をされているのに私は思ってしまうのだ。
「……満ち足りない」
私にはもったいない優秀な先生方に偽造ではないが色々と問題がありつつも、すこぶるイケメンな夫。
「え、刺激が足りない?分からりました! 奥様に一番必要な刺激がございます!」
「いや、満ち足り無いと言ったのよ。って、フリージア、大丈夫?」
「お任せ下さい!少しだけ離れますから動かないで下さいね。絶対ですよ!」
「わ、わかったわ」
直ぐに仲良くなったお城の侍女やメイドさん達と何やら柱の陰でコソコソと話し始めたその時。
「あの、ペチュニア様がいらしております。お断りしたのですが…」
メイドさんの視線の先を凝らして見れば、確かに騒いでいる人がいるようだけど、距離があり過ぎて見えない。
どうやら騎士に止められているようで言いに来たメイドちゃんは困り顔である。
あ、もしかして!
「私が待っていたのってコレじゃないの?」
私は、大丈夫!カモン!とノリノリで招き入れた。
後に大魔王、いや夫の存在を忘れていた事に酷く後悔する事になるのだが、この時の私は知る由もない。
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