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7.買い出しに行くと
しおりを挟む今日は10日に一度の買い物の日。
我が家では庭に植えた野菜や以前からある果物の木、マグーという鶏を数羽飼いその鶏が産む卵などで、節約をしているのだけど、しょせん素人だし、量も限られているので自給自足には程遠い。その為こうしてたまに買い出しをする。
最後の目的のお店に近づくと店主が気付き、にっこりと笑って声をかけてくれた。
「あら、マリーちゃん!」
「ガーネさん、おはようございます」
「久しぶりだね。一人で大変だろう?大丈夫かい?」
自分の子供のように心配してくれるその表情は昔から変わらない。私は、心配しないでという気持ちを込めていつもよりも元気よく返事をした。
「はい!裁縫のお仕事の依頼が増えてきたので生活はなんとか大丈夫そうです」
「しっかりしてるね~! ウチのダンナとキャルにも見習ってもらいたいもんだね!」
お肉屋さんの店主ガーネさんは、そう言うと首をふり盛大なため息をついた。
普通肉屋さんは、捌さばくのに力もいるから男性の仕事だけれど、このお店は奥さんのガーネさんが仕切っている。
口調とは裏腹に背が高く赤い髪と青い瞳、出るとこはでているとっても美人で優しい店主なの。旦那さんは狩りにでかけてお酒好きなのもあり、あまりお店では見かけないけれど大きな身体と強面な見た目とは違い、とても優しいおじさんで。
ガーネさんいわく、狩り以外の日は酔っぱらいで。でも、帰りがとても遅くなったとしても必ず帰ってくるらしいから何だかんだで仲がいいと評判の夫婦。
そして、娘のキャルちゃんは今、確か13歳でお年頃の為か、肉屋さんなんて臭いし嫌っとお母さんとケンカ中。
金髪にブルーの瞳のキャルちゃんは、将来美人さん間違いなしと近所では言われていて、本人もお金持ちの家に嫁ぐわと宣言している。
「で、今日は何が欲しいかい?」
「グローのバラ肉をお願いします」
「珍しいね~。旨いけど脂が多いし、どうするんだい?」
手早くグローを取り分けながらガーネさんが興味津々に聞いてきたので説明する。
「ミラの葉を入れ巻いて切ったあと、クイルと塩を振りかけ串に刺して焼くんです」
「へぇ~うまそうだ」
「ライを一緒に入れても美味しいです」
「何か酒のツマミに合いそうだね!」
「そうですね。簡単なんですが、とても美味しいです!よかったら今日、夕方に持っていきますね」
物欲しそうなガーネさんを見て食べてもらいたくなった私は、明日作ろうと思っていたのだけど、予定を変更し、今日作ることにした。
「いいのかい?」
「いつもオマケしてもらってるし、私の料理でよければ」
「もちろんさ!私は料理は苦手でねぇ~。マリーちゃんの料理はいつも変わっているけど、どれもとても美味しいさ!」
「ふふっ褒めすぎです!でも嬉しいです!じゃあ後で」
「楽しみにしてるよ!」
私は、料理が変わっていると言われた部分は聞き流し、お肉を受け取りまたとお肉屋さんを後にした。
そして夕方に串焼きを完成させた。
「まあ、本当に簡単だし大したものじゃないんだけど」
私は、呟き味見を兼ね焼いたうちの一本を口に入れた。
「焼きたて最高だわ!」
思わずニンマリしてしまう。
表面はカリッと焼き上がり、噛むと中からトロリとライがでてくる。レシピでは異世界では、チーズという名の乳製品らしい。
それだけだと、しつこくなるけれど、中にライと一緒に入れたミラの葉、これもオオバと言う葉の代わりと肉の表面に振りかけたピリッとする粉末のクイル、クロコショウの代わりが脂っこさを緩和させ、更に美味しくなっている。
私は、温かいうちに届けましょうと手早く包み、ガーネさんのお店に持っていった。
「ガーネさん!」
「マリーちゃんかい」
「…どうしたんですか?」
手を振り近づいた私は、てっきりいつもの笑顔に迎えられると思っていたのに。
ガーネさんは、心配というか困惑した表情で声をひそめて私にささやいた。
「騎士様がなんかマリーちゃんの事聞きまわってるらしいよ」
「えっ?」
「その騎士様がただの騎士じゃなくて」
さらに声が小さくなるガーネさん。
「領主様の弟、ライル・ガウナー様らしい」
名前は知っていたけど、ガウナー家なんて。
まさかの上位貴族じゃない!
それに何故私を調べているの?この前の指輪で終わりじゃなかったの?
私は、静かに暮らしたいだけなのに。
それを邪魔するの者は誰であろうとも許さない。
「あれだけハッキリ言ったのに、なんなのかしら!」
「マ、マリーちゃん大丈夫かい?」
いきなり叫んだ私にガーネさんが慌ててカウンターから出て来て背中をさすってくれた。
だけど、苛立ちは収まるはずもなく。私は心の中で問いかけた。
お父様、私、副業辞めてもいいかしら?と。
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