マリアージュ〜お探しの物あります〜

蝋梅

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10.懐中時計

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 サキコさんから話を聞こうとした時。

「…何?」

 触っていた懐中時計から音がする。中で何かが急激に動いているような。

カチカチッ…カチ。
ポーン…ポーンーポロン

 動きが収まったと思ったら、音と共にやわらかい光が懐中時計からでてきた。

 それは部屋いっぱいに広がっていく。

『あらっ、もう始まっているの?』
『ああ、君の顔がものすごく大きく映し出されていると思うよ』
『まあっ』
『大丈夫だよ。綺麗に記録されると思うよ』

 そこには若く美しい女の人がいた。生き生きしているグリーンの瞳に波うつ金の髪。

──お母様だわ。

 お母様は、何かを見るよう覗きこみ慌てて少し距離をおいて指をさし、はにかみながら嫌だわと言い誰かに話しかけている。

一瞬、暗くなりまた光が出てきた。

『これで皆映ったかな?』
『私はっ』
『サキコも一緒にいいじゃない』
『記念だよ』

 お父様とお母様に長い黒髪を2つに編み、それを肩にたらしている可愛い女の子、サキコさんが増え三人になった。

『もっとちゃんと寄りましょう!』

 お母様は戸惑っている様子のサキコさんを引っ張り笑ってと言っている。お父様がいつもの穏やかな口調で話し出す。

『いつかこれを見る子達へ。この店マリアージュは代々密かに続いているんだ。マリアージュという店の名は、初代の人の名前だよ。だから、女の子が産まれると必ず最初のマリを名前にいれているんだ』
『えっ、そうだったの?』

お母様の驚く声がする。

『ああ。伝えてなかったかな。そう、そして、この店を継いだ私は色々な出会いを経験することができて本当に楽しく幸せな日々を送っている。いや、これからもね。本来なら出会わない人達、サキコとも会うことができた』

『ふふっ、本当ね! サキコのおかげで美味しい食べ方をたくさん教えてもらってる!そして何でも話せる、とても大切なお友達だわ』

 お母様は、そう言うとサキコさんを抱きしめた。サキコさんは、恥ずかしそうに離してともがいている。

『おいおい、僕はのけ者かい?』

 お父様のやれやれと肩をすくめる姿。

また暗くなった。

『これで映っているかしら?』

 お母様の顔が大きく映り、少し離れたのか体全体が見えた。

『あのね、今、ルドには内緒で記録しているの』

 しーというように人差し指を口にあて笑うお母様は、なんだか少女のようにあどけない。

『はっきり分かったらルドにも伝えるのだけど、私にはわかるの。ここにあなたがいるって。絶対女の子よ』

 女の勘よと言い、お腹を撫でて、こちらをむく。

『なんとなくだけど、あなたと過ごす時間が短い気がして、そう思ったら伝えたくて』

 綺麗な優しい顔がほんの一瞬曇ったけど、直ぐに消えた。

『幸せというのは、人それぞれ違うと私は思うの。私は、誰がなんと言おうと今とても幸せよ。私は、あなたにも、あなたが感じる幸せをみつけて欲しいと願ってるわ。大好きよ』

 そう言い微笑んだお母様は、とても美しかった。

 流れていた音も止み光も消えて、いつもの仄かな明るさが室内を照らしている。

私はサキコさんに言った。

「すみません。お話を伺うのはやめます」



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