捕まり癒やされし異世界

蝋梅

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14.未来とグラン


 今、私とグランさんは、夜のバルコニーで抱き合っている。というか抱きしめられたのだ。手を何処に置けばいいの?! 無駄にニギニギ動かした私の手のひらは汗でじっとりしている。

「ミライ」
「ひぅ」

 耳元で吐息のように名前を呼ばれ変な声が!経験なしの私には高度過ぎてどうしたらいいのかわからない。

そもそも、どうしてこんな展開に?



*~*~*



 昨日の衝撃的な出来事から見事なプロポーションのキャルさんと強制お風呂からの爆睡で起きたのは朝日がかなり上にきていた時間だった。

 爆睡いや熟睡できて今日一日引きこもっていたのもあり眠気は訪れず。ため息ばかりの私にジュリアさんがつづきの間にあるバルコニーに案内してくれたのだ。

 空には土星のような物と無数の星がとても綺麗で。最初は見慣れなく違和感しかなかったのに。

「綺麗だなぁ」

つい呟きが口からもれた。

「そうですね。もう少し気温が下がり風がある日のほうが更に輝きが増えますよ」
「え!?」

 自分以外に人がいるだなんて思いもしていなかったので、リラックスして力が抜けきっていた私は、予期せぬ来訪者にベンチに座っていたお尻が数センチは浮いただろう。

「驚かせてしまいましたか? すみません」

 その人物、グランさんが綺麗な眉を下げ、謝られてしまった。なんだか大型犬が尾を下げているような様子にみえてしまった。

「あっ、いえ。大丈夫です!」

 本当に? と私の様子を真剣に観察しているグランさんに、つい笑ってしまった。でも、私が笑ったのがよかったのかグランさんの表情も柔らかくなった。

「ラグスという葉のお茶です。よろしかったら」

 グランさんに湯気のたっている白いカップを手渡された。花と果実の香りがする。

 グランさんはきっと地位が高い人なのに自らお茶をいれてくれたのかな。

「ジュリアから奪い取ったんです。私の分も追加でいれてもらいました」

そうだよね。うんうん。あれ? 何でグランさん笑っているの?

「何がおかしいんですか?」

 少し怒っているような口調になってしまったけどしょうがない。私の苛立ちが通じたのか、小さくすみませんと謝られた。いえ、私は謝罪よりその笑いを止めてほしい。

「いえ、貴方が想像以上に周りに好かれていて驚きました」
「私がですか?」

 うーん。嫌われてないとは思うけれど、ジュリアさんや護衛の方など皆プロというか表情も態度もいつも落ち着いているから、本当はどう思われているかはわからない。

「あの、座りますか?」

 窓の近くに立っている制服姿のグランさんは、相変わらずカッコイイ。けど、なんかいつもより私と距離が離れているのに気がついた。

「どうぞ」

 2.5人分のベンチだし余裕はあるので、端に移動し見上げてみたら、グランさんは困った様子なので首を傾げてしまう。ああ、もしかして。

「もし人に見られたらとかですか? まぁ、私のようないわゆる平民とつるんでいたら評判というか、誤解されたら困りますよね」

 階級制度に馴染みがない私は、もしかしたら、かなり失礼な事をしていたのかもと今更焦る。

「違います」
「うんうん、男友達は結構いるのに彼氏いない歴が長いおそらく品位というものが欠けている私とは」
「だから違う!」


 いままで聞いたことなないグランさんの強い口調に固まった。そんな私の様子を直ぐに察知した彼は、また綺麗な眉を八の字にし自分の髪の毛をぐしゃりとして弱くなった口調で説明してくれた。「怖くないですか?」と。

 昨日の出来事が一瞬頭の中で再生された。そのまはまグランさんを見た。

うん。

「怖くないです。グランさんは安心します」

あれ?

 最上級ばりに信頼してますと宣言したつもりなのに、グランさんの顔は困ったまま。というか更に気遣うような表情で。見つめられ続けても私が何も言わないのでグランさんは、微かに笑ったあとベンチに腰をおろした。

……誘っておいてなんだけど、気まずい。チラリと隣を盗み見るとグランさんは夜空を見ていた。

 柔らかそうな髪に意思が強そうな緑の目。カッコいいなぁと涎がでそうなほどガン見していたら、不意に横を向かれて。

「…触れてもいいですか?」
「えっ」

いきなり? 

 私は、あの図書館での怪しい本の題名を思いだし、私の顔はゆでダコになった。だけど実際はグランさんは、私の手からカップをそっと離しテーブルに置くと。

「冷えるので」

ああ、なんだ。

グランさんは、マントを外し私にかけてくれたのだ。

「ありがとうございます」

そうだよね。何を期待しているんだ私!

恥ずかしすぎる! 

「え?」

 おもいあがった自分が恥ずかしくて俯いた私の顎に誰かの手がそっとのびてきて、強くじゃないのに自然に上に向かされて…。

 おでこに柔らかい何かが軽く触れ、それは左右の瞼、頬、鼻に掠めていくように。最後に両頬を手で包まれて。

「ミライ、婚約してくれますか?」
「ふへ?!」

 なんとも情けない声を発したのは自分だった。

「ミライ、返事が欲しい」

 イケメンに告白されました。正確には婚約者だそうです。そして耳元で囁くのは凶器ですから。

いやいや違う!あっ、ふいにまた頭に浮かんだ事があり。

「そういえばグランさんって何歳ですか?」

緑の目を一瞬丸くさせた後。

「17ですが」

……。
…は?

「まさかの高校生じゃないのー!」

 私は座っても身長差がかなりあるグランさん、いいやグラン君に言った。

「無理です!」

 グラン君は、私の言葉に爽やかオーラから、真っ黒に変化した。

怖い!
いやでも!
私、間違ってないよね?


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