中途半端な私が異世界へ

蝋梅

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38.楓&シャル


花の香り?

 そのまま辺りを視線だけ動かす。

いつものお城のベッドだ。

 ベッドサイドにお花を生けてくれたみたのかな。優しい匂いはそこから香っている。

「薄暗いな」

 夜明けくらいか。視線を下げるとベッドに顔を伏せているベルさんがいてビックリして声を上げそうになるも、なんとか抑えた。

 看ていてくれたんだ。私は、寝ているベルさんを起こさないように、そっとベッドから出て近くにあったブランケットをベルさんの肩にそっとかけた。

 なんか外に行きたい。でも、足がやたらふらつく気がするけど諦めきれなくて壁をつたいながらいつもの客間から出られる庭へ向かった。

「あぁ、なんか体が空っぽな感じ。

 でも、防御をかけないと。何かあったらまた迷惑かけちゃう。腕輪に触れ、庭全体ではなく自分の体ギリギリに防御と音遮断と念じた。

「よいしょ」

 歩く元気がないので平らな草むらに体育座りをした。

 風が冷たいけれど気持ちがいい。

「靴も脱いじゃえ」

 足を投げ出し上を見上げるとやはり夜明け近いのか青い月が薄い。

 どれくらい経ったか、ふいに肩に重たい物、みるとマントが掛かっている。上を向いていたままグルリと後ろへ頭を反らせば。

「そんな格好でうろついたら駄目ですよ」

困った顔のシャル君だった。

 私は、なんとなく返事をしそびれてしまい、また月を眺めた。

「あっ」

ふいに自分の手に違和感を感じれば手が透けていて。ヴィラの言葉が頭をかすめた。

『消えちゃうよ?』

なんかもういいか。どうでもよくなってきた。

そう思ったら、突然体が浮いた。

「駄目です。消えさせない」

苦しいくらいに抱きしめられ、もがいてもまったく動けない。

「気持ち悪いですか?僕が」
「何故?」

 意味がわからない。苦しいのは強く抱きこまれた私なはずなのに、シャルくんの方がもっと辛そうで。

 小さい声でシャル君がポツリと呟く。

「あいつの腕を切り落としたのは僕です。それだけじゃない。戦でも沢山殺しました」
「気持ち悪くないし、怖くもないよ」

 好きで人を傷つける人なんて普通いないよ。

 私はもがくのを止め、緩まった隙間から手を伸ばしてシャル君の頭を撫でてみた。

 まだ、お礼も言ってなかったね。

「ごめんね。守ってくれてありがとう」

 シャル君の髪が首に当たりくすぐったい。緩くなったと思っていたのにまた、ぎゅっと抱きしめられる。苦しいんだけど。

「カエデ、僕オトコだよ?」

はぁ?

わかってるよ。力もそうだけど精神的にもこの世界の人達は私のいる世界よりずっと早熟だ。

「知ってる…」
「分かってないよ」

頬に音をたてキスされた。

「ちょっ」
「カエデは、ルーク副隊長が好き?」

グリーンの目で見つめてくる。

「……分からないよ」

 キスをされて拒む事もしなかったけど。

──でも。

 私は、お母さんやルーク、友達、自分の世界を捨てれない。暗く考えこむ私をよそに、何故か嬉しそうな声が降る。

「まだ望みあるかな」
「え?」

シャル君の顔を見る。

「なんでもない。あっキスは謝らないから」

 ニッコリ笑ったら今度は姫抱っこ!

「シャル君!」
「今、防御うまく張れてないくらい力がないでしょう? それに重くないよ。ただ目のやり場に困るけど」

何でそこで顔が赤くなるの?

 自分を改めて見てみれば、薄ストンとしたワンピース一枚で身体の線が丸見えだ。しかも胸元が苦しくないようにか緩くリボンが結ばれていた。

「上から見ると胸元が…」
「言わなくていいっ!どうせないし!」

借りてるマントを引っぱる。

「違いますよ。むしろ頬にキスのみの僕を誉めて欲しいな」

オデコにチュッと音と共にキスされた。

「両手塞がってるからこれで我慢する」
「異世界いったい、ホントになんなの…」

 思わず呟いた私にシャル君は楽しそうにクスクス笑っている。

「さて、まだ早いから一眠りして下さい。お姫様」

 自分の両手を見ると、もう透けてなかった。


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