麻雀食堂−mahjong cafeteria−

彼方

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その3『美咲大活躍』編

第四話 理想のフロート

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23.




第四話 理想のフロート




 美咲は俺の思ってた以上に麻雀が上手だった。手つきこそ俺と同じでおぼつかないが……




「チー!」




 その判断力や決断の速さは素人レベルではなかった。




「ロン!」




 美咲があっという間にクイタンをアガる。開局早々の初アガリだ。




(すげえなコイツ。とても牌を初めて触った人間とは思えない)




「えへへっ、やっぱり麻雀って楽しい~。タンヤオのみだけどアガれただけでこんなに嬉しいもん~」

「やるなぁ、妹ちゃん。センスあるよ」

「えへへ、トッププロに褒められちゃった。『美咲』って呼んで下さい~」




 さすが、アプリの麻雀とは言え段位取得まで行ってるだけのことはある。十級から始まるものを初段まで行っているのだ。それはつまり黒帯ということ。

 その後も新顔の美咲を中心にワイワイとトークは弾み、賑やかにゲームは進行された。

 美咲、犬飼、メタのメンツはなんというか、全員が基本おしゃべりなので会話が途切れることがなかった。俺はそれを聞いてはウンウンとうなずいたり、面白い時は笑ったり、たまにあやのさんも話に加わるのでそれもちゃんと聞いてたり。少し騒がしいが、それが俺には心地良かった。

(ここの人たちはみんな明るいな。……そっか、俺は明るい人たちが好きだったんだ。今わかった)




「ねえ、お兄ちゃん。コーヒーフロート頼んでいい?」

「いいよ。そしたら俺もメロンクリームソーダ頼もうかな」

「メロンクリームソーダ? お子様っぽいなー」

「結局それが一番美味えんだよ」




「はーい、コーヒーフロートとメロンクリームソーダね。ご注文ありがとうございます!」

 注文はまだしていないが……。なんせ店内が狭いしBGMも無いのだ。注文をする前から厨房に聞こえている。




「はい! コーヒーフロートとメロンクリームソーダです。お待たせしました」




 前回注文した時も思ったのだが、ここのフロートは俺の理想のフロートだ。

 メロンソーダに大きめの氷が2個入っていて、その上にバニラアイスが乗っている。しかも今日はさらにホイップクリームにカンヅメのサクランボもあるではないか。完璧なメロンクリームソーダだ。

 フロート系の飲み物はソフトクリーム乗せじゃなくてアイスクリーム乗せにして欲しいし、氷は小さいのをザラザラ入れるのではなく2個だけ大きい氷が入れてあるのが好きだ。というのも、ソフトクリームだとアイスクリームのような『氷で冷やされた接着面のシャーベット化』が無いからだ。そのシャーベット部分が俺の大好物なわけだから。

 また、氷が小さくないと助かる理由は、小さい氷はアイスに埋もれて一体化しようとするからだ。夏場などあっという間にアイスと氷が一体化する。ハッキリ言って邪魔である。フロートを頼んでいるのにわざわざ氷をガリゴリ食べるつもりはない。

 アイスクリーム用に細長いスプーンが差してあるのもポイントが高い。




(ちょっとした点が気になる事ってあるよな。でも、その気になる部分を全部この店は良い方にしてくれている。最高だな)




 ちなみに、美咲のコーヒーフロートにはちゃんとシロップピッチャーとミルクピッチャーも添えられていた。その心づかいも『もてなし』だなと感心する。

 コーヒーフロートは甘いアイスがあるから甘さ充分のイメージはあるかもしれないが入っているコーヒーは大抵ブラックだ。つまり苦い。それに対して『ご自分でお好きな程度お使い下さい』という意味でシロップとミルクをピッチャーで出してくれるのは本当に優秀な店だけだ。ありがたい。




 フロートひとつとってもこの実力。やはり『あやの食堂』は素晴らしいなと思った。





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