さよなら、世界最強の僕たち

木村

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第三話 世界はお前を選ばなかった

03

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「ぎゃああああああああああ!!!!! なんで服に手をかける、なんで服に手をかける!!!!!!」

 ――今、俺の目の前でお前が泣いている。
 俺が生きていたから、こいつは俺に会いに来たのだ。約束通り、こいつは俺のところにやってきたのだ。
 その細くなった体を撫でる。傷ひとつない肌だ。平和な世界で平和に生きている、美しい子ども。

「……綺麗だ、シャンル……」
「シャンルじゃないって言っている!!!!! いやだああああああ推しが解釈違いなの辛すぎる!!!!!!」

 写真も動画も残っていない、俺の記憶にしか残っていない、シャンルの顔の生き写しで、彼が泣く。
 闇の中では目が利かなくなった俺でも、あいつの顔だけは間違えない。プラチナブロンドの髪も、美しい翡翠の瞳、あのゴリラ像とは違って本当は童顔で、そばかすがあって、鼻が尖っていて、……そのままだ。あいつが兵器として育てられなければこうなったに違いないという顔をしている。
 あいつの生まれ変わりだ。そうだ、……そうに違いない。いや、……本当は見た目なんてそんなのはどうでもいい。
 俺がそう決めたなら、こいつはシャンルだ。
 だって、そうだろう。――俺は今まで本当に頑張ってきたんだ。ご褒美ぐらい貰って、何が悪い。

「幸せになろうな、シャンル、今度こそ、……」
「違う違う違う違うその台詞を言う相手が違う!!!!!!!」

 彼の腕をベッドのヘッドボードに括りつけると、彼は泣いた。
 初めて見る彼の涙がとても綺麗で、俺は本当に嬉しかった。俺は今、実に、――十七年ぶりに笑っている。

「……泣いたらそんな顔なんだなあ、シャンル。可愛いじゃないか。……ますます好きになった」

 そうだ、俺を笑わせられるのはシャンルだけ。

「違うったら!!!」
「違わない。俺がお前を間違えるわけないだろう」

 だからこいつはシャンルでなくてはいけない。
 泣きわめく彼を抱き締めると、懐かしい彼の匂いがした。
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