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第三章「ペンは剱より強し」
第七話「あったかい背中」
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学校の裏山に広がる森は、思った以上に広かった。
背の高い樹が多いことと、かなり日が傾いてきていることと相まって、やけに薄暗い。
木が密集していて視界も悪く、剱さんの姿はすっかり見えなくなっていた。
それでもかろうじて、地面には道と 思しきものが続いているので、私はそのまま進んでいく。
ずっと街の中で暮らしてきたので、道や標識がない世界がこんなにも怖いとは思わなかった。
(あぅぅ……。落ち葉と泥でズルズル滑る……。登山靴を履いてればよかったな)
春だというのに、地面は落ち葉が多い。
山の地面は場所によっては柔らかかったり、木の根が張り出しているので歩きづらい。
通学用の靴は山道に全く向いていないようで、歩くごとに体力が消耗していることが分かった。
学校の裏山は低いからと、甘く見ていた。
傾斜はずっと緩やかだけど、平坦がこうまで長く続くと、進んでいる方向が正しいのか分からなくなってくる。
怖くなって誰かに電話をかけようとした時、スマホの画面を見て、私は凍り付いてしまった。
(電波が……届いてない!)
画面の右上に表示されているはずの電波の強度を示すアンテナの表示が……消えている。
弱いどころか、完全になくなっていた。
間違って飛行機の機内モードになっているのかと確認したが、電波を受け取れる状態にはなっている。
つまり、助けを呼ぶ手段を失ってしまったということだった。
「剱さーんっ! つーるーぎーさーんっ!」
自分が森の中で独りぼっちだということを痛感して、突然怖くなった。
力の限りに声をはりあげて、剱さんを呼ぶ。
しかし、その頑張りもむなしく、剱さんは現れなかった。
『人の声は自然の音に紛れて、聞こえない』
千景さんの言葉がよみがえってくる。
その時、私はハッとした。
(笛……!)
こういう状況だと、笛が有効だと教えてくれてたはず。
確か、剱さんのスマホが入ってるポーチにはクマよけのホイッスルがついていた。
要するに笛の音なら遠くまで届くということだから、クマよけでも同じだろう。
私は鞄から剱さんのポーチを取り出し、ホイッスルを力いっぱいに吹こうとした。
その時。
突然、脇の草むらがガサガサッと音を立てて揺れた。
「な、なにっ?」
びっくりして横に飛び跳ねると、足元の落ち葉が揺れ動き、なにか細長いものが顔を出す。
……それは、ヘビだった。
「ひぎゃああぁぁあぁっ……!」
そのにゅるにゅるとした生き物を見た瞬間、全身に悪寒が走って、頭が真っ白になった。
ヘビ!
ヘビ嫌い!
怖い!
このどこが胴体でどこがしっぽなのかもわかんない変な体!
ヌメヌメしたウロコ!
怖い牙と舌!
何を考えてるのか分からない顔!
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
笛を咥えて吹きながら、必死に走り続ける。
あうあぁぁぁぁ……!
気付いて、剱さん!
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
ヘビこわい! ヘビこわい!
助けて、剱さん!
ふえぇぇぇ……。
もう、何が何だか分からなくなっていた。
口に咥えたクマよけのホイッスル。
そこにぶら下がっているスマホ入りポーチが、走るたびにベチンベチンと頬っぺたにあたる。
今どこを走ってるのかもわからない。
それでも藪を突っ切りながら、必死に笛を吹き続けた。
「う、空木? なんでこんなところに……」
なんか、藪を抜け出て視界が広がった瞬間に、誰かがいた気がする。
でも、後ろから怖いにょろにょろしたモノが追いかけてくる!
私はかまわず、地面を蹴り進んだ。
「おい! 空木、待て!」
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
「……おい! その先は穴が……」
(あぅぅ……。幻聴が聞こえ始めたぁ……。いくら剱さんに助けてほしいからって、後ろから声が追いかけてくるわけないよぉ……)
きっとヘビのオバケがすぐ後ろに迫ってるんだ。
振り返ったら食べられちゃう!
剱さんに会うまで、止まっちゃダメ!
必死に走り続ける私。
その時、急に重力が消えてしまった。
足が地面に付いていない。
下には穴が開いている。
走った勢いで空中を一回転していく体。
視界がグルンと回ると、視線の先には金髪の女の子の姿があった。
「ましろぉっ!」
剱さんが真剣な顔で叫んでる。
そして私の体は……、
落ちた。
▽ ▽ ▽
気が付くと、全身がゆさゆさと揺れていた。
お腹側には人肌のぬくもりがあり、太ももの裏にも温かい感触がある。
目の前には金色の髪の毛と、後ろに流れていく景色……。
だんだんと意識がはっきりする中で、私は自分がおんぶされていることに気が付いた。
太ももの温かさは、私を背負っている手のぬくもりだ。
「……あれ。……剱さん?」
「気が付いたか。痛いところはないか?」
剱さんは私を背負いながら、様子を伺うように私のほうに視線を向ける。
なんだか彼女の声は、いつもよりも優しい感じがした。
私は言われるままに自分の体に違和感がないかを意識してみる。
「……。えっと……なんか、足がヒリヒリするかも」
「それは草や枝で切ったんだろうな。擦り傷のせいだよ。……他に強い痛みとかはないか?」
「……ん? それはないよ」
「吐き気や気持ち悪さは?」
「ぜんぜんないよ?」
「そうか、よかった……。穴の下は落ち葉がたまってたし、クッションになったんだろうな」
そう言って微笑んで、再び前を向いて歩きだした。
剱さんの穏やかな笑みや声。
それはなんか、心の底から心配してくれていたような安堵の表情だった。
話を聞いてみると、どうやら笛の音に気が付いた剱さんが元来た道を戻っていた時、走ってくる私と鉢合わせしたらしい。
私は無我夢中で走っていて、剱さんが声をかけても気付かずに通り過ぎていったとのことだった。
あげくの果てには山道の脇にあった穴に落ちて気を失っていたので、助け出してくれたらしい。
そして今は、とりあえず剱さんの家まで背負って移動しているところなのだった。
「……そんなに心配してくれてたの?」
「当たり前だろ! 気絶してるからさ、頭を強く打ったんじゃないかと心配だったんだよ!」
当たり前……。
そんな風にまっすぐな声で心配されてしまうと、少しドキドキしまう。
剱さんはてっきり私を敵対視してると思っていたので、意外だった。
「……そっか。私、気絶しちゃってたんだ。……は、恥ずかしい……」
「な、なにが恥ずかしいんだよ」
「あぅ……。笑わない?」
「返答による」
「……私、ヘビが苦手なの。……たぶん、怖すぎて気を失っちゃったんだと思う」
「はあぁ?」
剱さんは「心配して損した」とでも言いたげなように、大きくため息をついた。
「あぅぅ……。笑われるのも嫌だけど、呆れられるのも傷つくよぉ」
「ははは。……まあ、元気そうなことがわかって、よかったよ」
剱さんは、まるで男の子のように爽やかに笑う。
私を背負う背中はたくましくて、なんか胸の奥がムズムズするようだった。
このまま背負われていると、変な気持ちになってしまいそうだ。
「もう、大丈夫だよ。……自分の足で歩けるから」
「ん? 別に構わないけどな。アタシ、体力だけはあるし」
「あぅぅ……。いいんだよ。ほら、私だって山に歩きなれてたほうがいいわけだし!」
「……そうか」
剱さんは、なぜだか少し残念そうな顔をしながら、私を地面に立たせてくれた。
剱さんと私は、犬猿の仲のような関係だと思い込んでいた。
それなのに、こんなにも助けてほしくなるだなんて、思いもよらなかった。
山の中で剱さんの金髪を見つけた時、すごく安心した自分がいた気がする。
「……。あ、そういえば剱さん」
「なんだよ」
「私が落ちるとき、私の事を下の名前で呼んだ?」
「い、言ってねえし」
「あぅ? ……なんか、『ましろぉっ!』……って言ってた気がしたけど」
「気を失うぐらいに動転してたんだ。幻聴だろ?」
そう言って、剱さんはそっぽを向いてしまった。
「ん……、そうかな?」
「そうだよ」
怖くて気を失ってたせいか、記憶がはっきりしない。
剱さんがそうだと言うなら、そうかもしれなかった。
▽ ▽ ▽
剱さんが言うには、この裏山の道は毎日歩いている登下校のルートらしい。
もちろん普通の道路だって家まで続いているけど、山の中を通るほうが学校への近道なぐらいに、道路は山を大きく迂回していて遠いのだという。
あまり遅い時間になってしまうと山道も危険なので、あまちゃん先生には居残りしないで帰りたいと事前に伝えていたらしい。
山の中を歩いて登校してることが先生や親にバレると止められるので、「このルートのことは絶対に秘密だぞ」と念を押された。
「自転車に乗ればいいのに」
そんな当たり前のことを問いかけると、「自転車は最近、売っちゃってさ」と剱さんは答え、それ以上は何も言わなかった。
自転車を売るぐらいにお金に困ってるのだろうか。
そんなことを心配したけど、デリケートな話題なので、聞けるわけがなかった。
剱さんは山道を歩きなれているようで、その歩みは確かなものだ。
服だってジャージに着替えているし、足には登山靴を履いている。
妙に使い込まれた渋い革靴を持っているのが不思議だったけど、こんな風に日ごろから山を歩いているのだから、そのぐらいは当然なのかもしれなかった。
むしろ、制服と通学用の靴という格好で山に入った私のほうが不用心極まりない。
剱さんの後ろを安心した気持ちでついていくと、目の前にアスファルトで舗装された道路が見えてきた。
そしてその道の向こうに、丸太を組み合わせた可愛いログハウスが姿を現したのだった。
背の高い樹が多いことと、かなり日が傾いてきていることと相まって、やけに薄暗い。
木が密集していて視界も悪く、剱さんの姿はすっかり見えなくなっていた。
それでもかろうじて、地面には道と 思しきものが続いているので、私はそのまま進んでいく。
ずっと街の中で暮らしてきたので、道や標識がない世界がこんなにも怖いとは思わなかった。
(あぅぅ……。落ち葉と泥でズルズル滑る……。登山靴を履いてればよかったな)
春だというのに、地面は落ち葉が多い。
山の地面は場所によっては柔らかかったり、木の根が張り出しているので歩きづらい。
通学用の靴は山道に全く向いていないようで、歩くごとに体力が消耗していることが分かった。
学校の裏山は低いからと、甘く見ていた。
傾斜はずっと緩やかだけど、平坦がこうまで長く続くと、進んでいる方向が正しいのか分からなくなってくる。
怖くなって誰かに電話をかけようとした時、スマホの画面を見て、私は凍り付いてしまった。
(電波が……届いてない!)
画面の右上に表示されているはずの電波の強度を示すアンテナの表示が……消えている。
弱いどころか、完全になくなっていた。
間違って飛行機の機内モードになっているのかと確認したが、電波を受け取れる状態にはなっている。
つまり、助けを呼ぶ手段を失ってしまったということだった。
「剱さーんっ! つーるーぎーさーんっ!」
自分が森の中で独りぼっちだということを痛感して、突然怖くなった。
力の限りに声をはりあげて、剱さんを呼ぶ。
しかし、その頑張りもむなしく、剱さんは現れなかった。
『人の声は自然の音に紛れて、聞こえない』
千景さんの言葉がよみがえってくる。
その時、私はハッとした。
(笛……!)
こういう状況だと、笛が有効だと教えてくれてたはず。
確か、剱さんのスマホが入ってるポーチにはクマよけのホイッスルがついていた。
要するに笛の音なら遠くまで届くということだから、クマよけでも同じだろう。
私は鞄から剱さんのポーチを取り出し、ホイッスルを力いっぱいに吹こうとした。
その時。
突然、脇の草むらがガサガサッと音を立てて揺れた。
「な、なにっ?」
びっくりして横に飛び跳ねると、足元の落ち葉が揺れ動き、なにか細長いものが顔を出す。
……それは、ヘビだった。
「ひぎゃああぁぁあぁっ……!」
そのにゅるにゅるとした生き物を見た瞬間、全身に悪寒が走って、頭が真っ白になった。
ヘビ!
ヘビ嫌い!
怖い!
このどこが胴体でどこがしっぽなのかもわかんない変な体!
ヌメヌメしたウロコ!
怖い牙と舌!
何を考えてるのか分からない顔!
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
笛を咥えて吹きながら、必死に走り続ける。
あうあぁぁぁぁ……!
気付いて、剱さん!
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
ヘビこわい! ヘビこわい!
助けて、剱さん!
ふえぇぇぇ……。
もう、何が何だか分からなくなっていた。
口に咥えたクマよけのホイッスル。
そこにぶら下がっているスマホ入りポーチが、走るたびにベチンベチンと頬っぺたにあたる。
今どこを走ってるのかもわからない。
それでも藪を突っ切りながら、必死に笛を吹き続けた。
「う、空木? なんでこんなところに……」
なんか、藪を抜け出て視界が広がった瞬間に、誰かがいた気がする。
でも、後ろから怖いにょろにょろしたモノが追いかけてくる!
私はかまわず、地面を蹴り進んだ。
「おい! 空木、待て!」
「ピーーーーーッ! ピーーーーーッ!」
「……おい! その先は穴が……」
(あぅぅ……。幻聴が聞こえ始めたぁ……。いくら剱さんに助けてほしいからって、後ろから声が追いかけてくるわけないよぉ……)
きっとヘビのオバケがすぐ後ろに迫ってるんだ。
振り返ったら食べられちゃう!
剱さんに会うまで、止まっちゃダメ!
必死に走り続ける私。
その時、急に重力が消えてしまった。
足が地面に付いていない。
下には穴が開いている。
走った勢いで空中を一回転していく体。
視界がグルンと回ると、視線の先には金髪の女の子の姿があった。
「ましろぉっ!」
剱さんが真剣な顔で叫んでる。
そして私の体は……、
落ちた。
▽ ▽ ▽
気が付くと、全身がゆさゆさと揺れていた。
お腹側には人肌のぬくもりがあり、太ももの裏にも温かい感触がある。
目の前には金色の髪の毛と、後ろに流れていく景色……。
だんだんと意識がはっきりする中で、私は自分がおんぶされていることに気が付いた。
太ももの温かさは、私を背負っている手のぬくもりだ。
「……あれ。……剱さん?」
「気が付いたか。痛いところはないか?」
剱さんは私を背負いながら、様子を伺うように私のほうに視線を向ける。
なんだか彼女の声は、いつもよりも優しい感じがした。
私は言われるままに自分の体に違和感がないかを意識してみる。
「……。えっと……なんか、足がヒリヒリするかも」
「それは草や枝で切ったんだろうな。擦り傷のせいだよ。……他に強い痛みとかはないか?」
「……ん? それはないよ」
「吐き気や気持ち悪さは?」
「ぜんぜんないよ?」
「そうか、よかった……。穴の下は落ち葉がたまってたし、クッションになったんだろうな」
そう言って微笑んで、再び前を向いて歩きだした。
剱さんの穏やかな笑みや声。
それはなんか、心の底から心配してくれていたような安堵の表情だった。
話を聞いてみると、どうやら笛の音に気が付いた剱さんが元来た道を戻っていた時、走ってくる私と鉢合わせしたらしい。
私は無我夢中で走っていて、剱さんが声をかけても気付かずに通り過ぎていったとのことだった。
あげくの果てには山道の脇にあった穴に落ちて気を失っていたので、助け出してくれたらしい。
そして今は、とりあえず剱さんの家まで背負って移動しているところなのだった。
「……そんなに心配してくれてたの?」
「当たり前だろ! 気絶してるからさ、頭を強く打ったんじゃないかと心配だったんだよ!」
当たり前……。
そんな風にまっすぐな声で心配されてしまうと、少しドキドキしまう。
剱さんはてっきり私を敵対視してると思っていたので、意外だった。
「……そっか。私、気絶しちゃってたんだ。……は、恥ずかしい……」
「な、なにが恥ずかしいんだよ」
「あぅ……。笑わない?」
「返答による」
「……私、ヘビが苦手なの。……たぶん、怖すぎて気を失っちゃったんだと思う」
「はあぁ?」
剱さんは「心配して損した」とでも言いたげなように、大きくため息をついた。
「あぅぅ……。笑われるのも嫌だけど、呆れられるのも傷つくよぉ」
「ははは。……まあ、元気そうなことがわかって、よかったよ」
剱さんは、まるで男の子のように爽やかに笑う。
私を背負う背中はたくましくて、なんか胸の奥がムズムズするようだった。
このまま背負われていると、変な気持ちになってしまいそうだ。
「もう、大丈夫だよ。……自分の足で歩けるから」
「ん? 別に構わないけどな。アタシ、体力だけはあるし」
「あぅぅ……。いいんだよ。ほら、私だって山に歩きなれてたほうがいいわけだし!」
「……そうか」
剱さんは、なぜだか少し残念そうな顔をしながら、私を地面に立たせてくれた。
剱さんと私は、犬猿の仲のような関係だと思い込んでいた。
それなのに、こんなにも助けてほしくなるだなんて、思いもよらなかった。
山の中で剱さんの金髪を見つけた時、すごく安心した自分がいた気がする。
「……。あ、そういえば剱さん」
「なんだよ」
「私が落ちるとき、私の事を下の名前で呼んだ?」
「い、言ってねえし」
「あぅ? ……なんか、『ましろぉっ!』……って言ってた気がしたけど」
「気を失うぐらいに動転してたんだ。幻聴だろ?」
そう言って、剱さんはそっぽを向いてしまった。
「ん……、そうかな?」
「そうだよ」
怖くて気を失ってたせいか、記憶がはっきりしない。
剱さんがそうだと言うなら、そうかもしれなかった。
▽ ▽ ▽
剱さんが言うには、この裏山の道は毎日歩いている登下校のルートらしい。
もちろん普通の道路だって家まで続いているけど、山の中を通るほうが学校への近道なぐらいに、道路は山を大きく迂回していて遠いのだという。
あまり遅い時間になってしまうと山道も危険なので、あまちゃん先生には居残りしないで帰りたいと事前に伝えていたらしい。
山の中を歩いて登校してることが先生や親にバレると止められるので、「このルートのことは絶対に秘密だぞ」と念を押された。
「自転車に乗ればいいのに」
そんな当たり前のことを問いかけると、「自転車は最近、売っちゃってさ」と剱さんは答え、それ以上は何も言わなかった。
自転車を売るぐらいにお金に困ってるのだろうか。
そんなことを心配したけど、デリケートな話題なので、聞けるわけがなかった。
剱さんは山道を歩きなれているようで、その歩みは確かなものだ。
服だってジャージに着替えているし、足には登山靴を履いている。
妙に使い込まれた渋い革靴を持っているのが不思議だったけど、こんな風に日ごろから山を歩いているのだから、そのぐらいは当然なのかもしれなかった。
むしろ、制服と通学用の靴という格好で山に入った私のほうが不用心極まりない。
剱さんの後ろを安心した気持ちでついていくと、目の前にアスファルトで舗装された道路が見えてきた。
そしてその道の向こうに、丸太を組み合わせた可愛いログハウスが姿を現したのだった。
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