バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~

宮城こはく

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第五章「百合の花を胸に秘め」

第十話「これが百合の楽園ですか?」

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「ア……アタシをモデルにして描くのは、どうっすか?」

 急に美嶺みれいが言い出したので、私たちは驚いてしまった。
 彼女は冗談を言っている様子はなく、目は真剣そのものだ。

「な、なに? 急にどうしたの?」
「いや……五竜ごりゅうにモデルがどうとか言われたときから、そういうのもいいなって思っててな。……それに、ましろが描いてくれると、うれしいって言うか……」

 そう言えば、ショッピングモールで五竜さんと話していた時に、そういう話題もあった。
 私の百合イラストについて五竜さんが指摘してきたとき、美嶺は自分がファッションモデルに思われていると勘違いして、照れていたのだ。
 美嶺は一見するとガサツでクールな印象があるけど、中身はただの照れ屋なオタクなのだ。
 恥ずかしそうに提案してくる美嶺を前にして、私はなんだか可愛いなと思った。

「私は別にいいけど……。でも計画書って、警察や大会の審査員に提出するんだよね? だから、無難なモチーフのほうがいいって思ってた……」
「むぐ……。そうか。……そうだよな。じゃあ、あきらめ……。って、梓川あずさがわさん? なにポーズをとってるんすか?」

 美嶺が驚くので、彼女の視線を追ってベッドの上を見ると、なんとほたか先輩が寝そべって可愛いポーズをとっていた。
 首をかしげているところがあざとい。
 そして可愛い!

「えっと……。えへへ。お姉さんをモデルにするのもオススメかなって……」
「あぅぅ……。ほたか先輩、何やってるんですか~!」

 一応は常識的な反応をしてみるものの、心の中では大歓喜して、先輩のしぐさに魅入ってしまう。
 すると、私の視界に美嶺が飛び込んできて、ベッドの上でかっこいいポーズを決めた。

「やっぱりアタシを描いてくれよ! アタシがオススメだぞ!」
「え……。美嶺ちゃんがあきらめるならって思ったのに……」
「ましろの絵柄なら、アタシのほうが似合うと思うんすよ」
「そ、そんなぁ……。ましろちゃんはお姉さんだと描きにくいのかな? こんなポーズとか、こ~んなポーズとかできるよっ!」

 そう言って、ほたか先輩は結構セクシーなポーズを取り始めた。
 日ごろは奥手なほたか先輩も、一度言い出した手前、引っ込みがつかなくなったように見える。
 先輩の長い髪が体にまとわりつき、なんだかエッチで興奮してしまう。 

「あぅぅ……。刺激が強いです~」

 私が赤面しているうちに、今度は美嶺も負けじとアピールし始める。
 いつの間にか私のベッドの上で二人がくんずほぐれずでカラみ始めてしまった。
 二人の短いスカートがめくれ上がりそうで、ひとときも目が離せない。
 やばい。
 美人の二人がこうも絡んでいると、私の中に芽生えた百合メーターが振り切ってしまいそう。

「ほ……ほたか! 美嶺さんも、落ち着いて……」

 私が全く二人を止めようとしないので、千景さんが慌てて仲裁に入った。
 すると、どうだろう。
 案の定、千景さんもアピール合戦に巻き込まれてカラまれ始めてしまったではないか。

「あの……ボク、こんな……」

 千景さんは困り顔でうろたえているけど、ほたか先輩が抱きしめて離さない。
 その光景は、あまりにも幸せな楽園のようだった。

(これが百合の花園? 私のベッドの上が天国だよ……)

 写真を撮りたい。
 データを永遠に残したい!
 でも、ここでスマホを構えると、私は変態的にふるまってしまうに違いない。
 私は必死に耐え続ける。


 すると、千景さんはついにたまらなくなったようで、ベッドの上から脱出してしまった。

(あぅぅ……。百合の花が一輪、逃げてしまった……)

 無念に思いながら千景さんを視線で追うと、千景さんは自分の鞄を開け、何かを取り出した。

「って……、ええっ? ち、千景さん、その髪は!」
「銀髪……っすか?」

 なんと、それはヒカリさんに変身するための銀髪のウィッグだった。
 銀髪美少女に変身した千景さんは堂々とした空気を伴って立ち上がる。

「恥ずかしさの克服のために、いつも持ち歩いてるのです。これで上手にしゃべれるのです!」

 いつものヒカリさんの口調だ。
 ここにいるのが親しい仲間だけだからなのか、私の家で変身するのは初めてなのに、しっかりと変身できている。

「ほたかも美嶺さんも、冷静になるのです。今は急いで計画書を作る時なのです!」

 ヒカリさんに一喝され、ほたか先輩と美嶺は申し訳なさそうにうなだれてしまった。

「ヒカリちゃん、ごめんね……」
「すみませんでした……。そっすよね。表紙は無難な……山の絵とかで十分っすよね……」

 そう言いながら、美嶺はしょんぼりしている。
 本当に私の絵を楽しみにしてくれていたようなので、可哀想になってきた。
 すると、ヒカリさんが微笑みながら美嶺の肩に手を置いた。

「ボクとしては、みんなが落ち着いてくれれば、それでいいのです。……これは提案なのですが、マスコットキャラのような感じで、ポップにデフォルメしたイラストにするというのはいかがでしょう? シンプルな絵柄ならあまり恥ずかしくないですし、ましろさんがもし問題なければ、二人を絵にしてもいいと思うのです……」

 マスコットキャラのような感じ……。
 その言葉で、私は自分がモデルになったぬいぐるみを思い出した。
 確かにああいうデフォルメしたイラストならマスコット的だし、表紙にしてもたぶん大丈夫だろう。

「ヒカリさん、それ、いいと思います! 例えばこんな感じですかね~」

 私は白い紙を取り出し、ササッとヒカリさんを描いてみた。
 ヒカリさんも千景さんも特徴的な見た目をしているので、デフォルメしやすい。

「こんな絵柄なら、無難だけど特徴もとらえられてると思うんですが……どうでしょう?」

 すると、ヒカリさんはモジモジしながら照れ始めてしまった。

「まま、ましろさん……! これはボクですか? こんなに可愛くないのです! それに、ボクなんかをモデルにしなくても……」
「おや、お忘れですか?」
「な、なにを……なのですか?」
「海の見えるキャンプ場で、モデルになってくれるって、約束したはずですよ~」

 そう。
 私は忘れてなんかいない!
 ゴールデンウィークの初日に行ったはじめてのキャンプ場。
 海の見える展望台でモデルになってもらう約束をしたのだ。

「あ、あれば手のモデルになるという約束だったはずなのです……。手だけ……」
「こんなに可愛いモデルを目の前にして、描かないなんてありえないですよ!」

 私は興奮気味にヒカリさんに迫り、どさくさに紛れてそのきれいな手を握る。
 すると、美嶺が何か言いたげに詰め寄ってきた。

「ぬぅぅ……。そんな約束してたのか……。う、うらやましいっ!」

 美嶺は本当にうらやましそうに、ヒカリさんをモデルにした絵を見つめている。

「美嶺、大丈夫だよっ。全員分、描くから!」
「お姉さんも描いてくれるの?」
「当然ですよ! 全員で八重校登山部なんですから~っ!」
「マジか! 楽しみすぎる!」

 ほたか先輩と美嶺の顔が急に明るくなった。
 本当にうれしがってくれているので、絵描き冥利みょうりに尽きる。
 今回はデフォルメしたイラストだけど、この分なら、いつかリアル頭身のイラストもおおっぴらに描かせてもらえそうだ。
 机の引き出しの中には、みんなをモデルにしたちょっとエッチなイラストがすでにたっぷり入ってるけど……、あれは絶対に見せられないので秘密なのだ。


 その時、ふと私の頭に一つのヒラメキが沸き起こった。
 そう言えばキャンプ場で千景さんにモデルの依頼をしたとき、写真もいっぱい撮らせて欲しいと頼んだはずだ。
 そして目の前には、私の部屋でくつろぐ三人がいる。
 これは……資料と称して、みんなの可愛い写真をゲットするチャンスなのではないか?
 私はおもむろにスマホを取り出し、カメラアプリを起動した。

「あのぅ……。それでですね……。みんなの写真を撮っても、いいでしょうか?」

 いたって真面目な顔でカメラを構える。
 しかし心の中では「ふひひ」と変な笑い声が沸き起こっていた。
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