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第1章
5.別れのハグ
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「あっ…はあっ…」
「どうだった?気持ち良かった?」
まだ気持ち良さそうに身体をビクつかせている将大に遥可は聞く。
将大は黙って頷く。
「嫌じゃなかった?」
「嫌だった…」
「なんで?」
将大の哀しげな声に、遥可は思わず理由を聞いてしまう。
「だって…!指でしてくれたの、あんただけだったから…自分が気持ち良くなるわけでもないのに、俺のためにしてくれたから…」
将大は涙目で遥可を見る。
「ダメだよ…俺のこと考えてくれるなんて…そんなの有り得ないことだから、知りたくなかった…」
「そっか。俺は高須とやれて良かったよ」
遥可は、出来るだけ平然を装って言う。
将大の悲痛な顔を、どうすることも出来ないから…
将大は起き上がって、かしこまった姿勢で座る。
「ごめん、名前…新山さんだっけ?」
「新山遥可。遥可で良いよ」
「俺も将大で良いよ。遥可、ほんとありがとう。遥可のこと、忘れないよ」
将大は柔らかく微笑む。
「将大、またここに来るつもりはないけど…どっかで会ったら、また話聞かせてよ。ここじゃ、大した話もできないだろうし…」
監視カメラがあるらしい方向を気にしている将大を見て、遥可は笑う。
遥可は服を着て帰り支度をする。
「最後にお願いして良い?」
将大がはにかんで言う。
「何を?」
「ハグして!!」
「はあ?」
将大はベッドに少し傾いて座り直した。
腕を広げて遥可が来るのを待つ。
「仕方ないな…」
遥可が将大を抱きしめると、将大も強く遥可を抱きしめる。
「あったかい…」
将大が遥可の背中に何やら指で文字を書いている。
短い単語を何度も…四文字のひらがな…
「あ…」
分かった、の合図で将大の背中を2回叩く。
将大はハグをやめて、遥可から離れる。
「ふざけちゃった♪冗談だよ~!忘れて!!」
笑顔の将大と別れて、建物から出た後も…
背中に書かれた四文字のことが、遥可の頭から離れない。
大通りに出て、口に出してみる。
「たすけて、か…」
将大が生きてあの部屋を出ることはないのだ、と遥可は勘付いた。
自分が助け出さない限り…
少し傾いて座ってハグを要求したのは、文字を書いているところを監視カメラに捉えられないようにするためだろう。
「助けるなんて、あり得ない」
遥可は言う。
命に別状はなかったとはいえ、龍我が将大に刺されたことで、人生を大きく狂わされたのは間違いない。
龍我は入院などの治療のために一年留年した。
未だに雨の日などは傷口が痛むことがあって、外出を控えたりしている。
人混みが怖くなってしまい、日常生活に支障が出ている。
来年は就活が始まるのに不安で仕方ない、とよく言っている。
龍我の恋人の理斗は、本来なら自分が刺されるはずだったのに…と自分を責め続けている。
身近で苦悩する2人を見てきたからこそ、遥可は将大を許せない。
しかし…
憎むべき相手である将大をついさっき抱いたことも事実だった。
しかも、かなり楽しんでいた…
「俺は高須とやれて良かったよ」とか本人に言ってしまったし…
遥可は赤面しそうになる。
遥可は自分でもなぜ自分が将大を抱いたのか分からなかった…
「どうだった?気持ち良かった?」
まだ気持ち良さそうに身体をビクつかせている将大に遥可は聞く。
将大は黙って頷く。
「嫌じゃなかった?」
「嫌だった…」
「なんで?」
将大の哀しげな声に、遥可は思わず理由を聞いてしまう。
「だって…!指でしてくれたの、あんただけだったから…自分が気持ち良くなるわけでもないのに、俺のためにしてくれたから…」
将大は涙目で遥可を見る。
「ダメだよ…俺のこと考えてくれるなんて…そんなの有り得ないことだから、知りたくなかった…」
「そっか。俺は高須とやれて良かったよ」
遥可は、出来るだけ平然を装って言う。
将大の悲痛な顔を、どうすることも出来ないから…
将大は起き上がって、かしこまった姿勢で座る。
「ごめん、名前…新山さんだっけ?」
「新山遥可。遥可で良いよ」
「俺も将大で良いよ。遥可、ほんとありがとう。遥可のこと、忘れないよ」
将大は柔らかく微笑む。
「将大、またここに来るつもりはないけど…どっかで会ったら、また話聞かせてよ。ここじゃ、大した話もできないだろうし…」
監視カメラがあるらしい方向を気にしている将大を見て、遥可は笑う。
遥可は服を着て帰り支度をする。
「最後にお願いして良い?」
将大がはにかんで言う。
「何を?」
「ハグして!!」
「はあ?」
将大はベッドに少し傾いて座り直した。
腕を広げて遥可が来るのを待つ。
「仕方ないな…」
遥可が将大を抱きしめると、将大も強く遥可を抱きしめる。
「あったかい…」
将大が遥可の背中に何やら指で文字を書いている。
短い単語を何度も…四文字のひらがな…
「あ…」
分かった、の合図で将大の背中を2回叩く。
将大はハグをやめて、遥可から離れる。
「ふざけちゃった♪冗談だよ~!忘れて!!」
笑顔の将大と別れて、建物から出た後も…
背中に書かれた四文字のことが、遥可の頭から離れない。
大通りに出て、口に出してみる。
「たすけて、か…」
将大が生きてあの部屋を出ることはないのだ、と遥可は勘付いた。
自分が助け出さない限り…
少し傾いて座ってハグを要求したのは、文字を書いているところを監視カメラに捉えられないようにするためだろう。
「助けるなんて、あり得ない」
遥可は言う。
命に別状はなかったとはいえ、龍我が将大に刺されたことで、人生を大きく狂わされたのは間違いない。
龍我は入院などの治療のために一年留年した。
未だに雨の日などは傷口が痛むことがあって、外出を控えたりしている。
人混みが怖くなってしまい、日常生活に支障が出ている。
来年は就活が始まるのに不安で仕方ない、とよく言っている。
龍我の恋人の理斗は、本来なら自分が刺されるはずだったのに…と自分を責め続けている。
身近で苦悩する2人を見てきたからこそ、遥可は将大を許せない。
しかし…
憎むべき相手である将大をついさっき抱いたことも事実だった。
しかも、かなり楽しんでいた…
「俺は高須とやれて良かったよ」とか本人に言ってしまったし…
遥可は赤面しそうになる。
遥可は自分でもなぜ自分が将大を抱いたのか分からなかった…
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