大人になってしまう前に

アジャバ

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序 明日、大人になってしまうから。

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 星空を見上げて素直に感動する。流れ星を見て三度の願いを掛ける。

 誰も本当の事は言わずにいるんだ。
 あの光は大気圏に呑まれた星が最後に笑ったんだって事。プロ野球選手になりたい、あの子が僕を好きになってくれますように…云々とした願いたち。そんな願いなど、あの星になんて一つも叶えられないんだって事。
 
 昔、星空から可愛らしい王子さまが降って来た。それは確か、遠い国の砂漠のど真ん中だったと思う。

 フランス軍パイロットの話だっていうから眉唾物だけれど、その日が星の綺麗な夜だった事は確かだ。そんなロマンチックに過ぎる話を、大人になってしまった君はもう信じてくれないだろう?
 けれど、その話がたとえ誰かにとって都合の良い造り話であったとしても、その物語に織り込まれた言葉たちに真偽を問う必要なんてないんだ。そんな王子さまが本当にいたかなんて僕らにはどうだっていい。

 王子さまが言った。大切なものは目に見えない。心で見るのさって。
 僕らにとって大切なのは誰がその言葉を言ったかではない。その言葉が誰かの心に届いたかって事なんだ。
 
 さて、今夜は月も機嫌が良さそうだ。無数の星で飾られた魔法の絨毯に乗せられて、嬉しそうにこちらを見つめている。こんな夜にはもしかすると願い事の一つも叶うかも知れない。

 信じる事、それだけが重要なんだ。

 僕は明日大人になってしまう。子供として眠りに付いて、大人として目が覚めるのだろう。だから、大人になってしまう前に、子供であった事を証明する為に僕は今から旅に出ようと思う。その旅の足跡が、いつか一つに連なって物語になるといい。ずっと遠い未来に、言葉をいくつか覚えた時に、『僕』を思い返しながら物語にしてやれるといい。

 ―旅立ちにはラッパの軽快さが必要ではないか?
 
 僕は長方形の船に乗って柔らかく温かな看板に横になって静かに目を閉じる。そうして旅立ちの歌を想像の世界に奏でた。

 さあ、ラッパの音を響かせ、声高らかに―「では、ごきげんよう。」
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