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6.冒険者ギルドと大物新人
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大陸西側の小国ロシュディアにある地方都市ファルード。
その街は、地方都市としてはそれなりの規模で、活気もあって賑やかだった。
街の一角にある冒険者ギルドも同様で、賑やかであり、そしてありふれていた。
掲示板に張り出されている依頼票を見る冒険者に、カウンターに立っている職員。
併設されている酒場では、一仕事終えた冒険者達が自分の活躍を自慢している。
そこにあるのは、まさしく誰もが想像する冒険者ギルドの光景だった。
――そこに、気のドアを軋ませて、一人の男が入ってくる。
それまで騒いでいた荒くれ共が、皆揃って黙り込み、彼へと視線を向ける。
立っていたのは、個性豊かな冒険者と比べても、抜きん出て異質な男だった。
禍々しい装飾が施された漆黒の甲冑に包み、己より巨大な超重剣を背負っている。
羽織るマントは半ば朽ち、腰の右側に奇妙な形状のサーベル。左にはダガー二本差し。
あまつさえ、漆黒のガントレットに覆われた右手には巨大な鎌を携えている。
長い黒髪。褐色の肌。右目は濃い紫、左目は濃いブルーの金銀妖瞳。
そして顔の上半分を覆い隠す、穢れなき白銀の仮面。
右肩には、真っ白い赤目のカラスが乗っている。つまり私だ。
これぞ『闇夜に堕天せし銀仮面の復讐者』ロレンス・アルゲント二世。
つまりオリキャラなりきロールプレイ中の我が主の姿である。
百戦錬磨・海千山千の冒険者さん達が揃って面食らっている中、彼は口を開いた。
「初ギルド……、ども……」
低く抑えた声音で言って、我が主は入り口付近で軽く頭を下げたのち、場を見回す。
「俺みたいな『闇夜に堕天せし銀仮面の復讐者』他にいるのか、っていないか。フフ」
おまえみたいなキワモノ、他にいても困るだけだわ。
冒険者さん達のそんな言い分が、青ざめたその顔にありありと表れていた。
「今日のギルドの会話、あの依頼は割がいい。とか、あの娼婦がほしい、とか――」
言いながら主は一歩前に進んで、軽く肩を竦めた。
「ま、それが普通だよな。片や俺は虚無(ヴォイド)に墜ち往く堕天使を見て呟くのさ」
ここで朽ちかけたマントを翻し一回転ターン。さらにシニカルな笑顔で、
「It’a Boukensya Guild.」
と、キメたつもりの我が主と、気圧されて微塵も動けなくなった冒険者さん達。
その中の一人が特に怯えた声で小さく「怖ェ……」と漏らす。
「永劫無限? それ、褒め言葉さ」
誰も言ってないぞ、そんなこと。
「好きな武器、パイルバンカー。尊敬する作家、ウロ・ブチ(ヌルい展開はNO)」
そこからクルクルと華麗にターンをキメながら、職員のいるカウンター前へ。
「などと言っている間にカウンターだ。嗚呼、新人冒険者の辛いところだ、これは」
悩みを演出するようにして眉間に指を当てて、彼は泣きそうな職員と向かい合う。
「あ、あの、どのような依頼をお探しで……?」
かわいそうなくらいに表情が凍っている眼鏡の若い女性職員に、我が主が尋ねる。
「ギルドに未登録で、まだ一つも仕事もこなしていない俺を一目見てタダモノではないと見抜いた有能ギルド長たっての希望で冒険者のライセンスを持たないにもかかわらず特例として認められた、魔王軍四天王を打倒するSSSランクの依頼を一つ」
「ありません」
あってたまるか。
その街は、地方都市としてはそれなりの規模で、活気もあって賑やかだった。
街の一角にある冒険者ギルドも同様で、賑やかであり、そしてありふれていた。
掲示板に張り出されている依頼票を見る冒険者に、カウンターに立っている職員。
併設されている酒場では、一仕事終えた冒険者達が自分の活躍を自慢している。
そこにあるのは、まさしく誰もが想像する冒険者ギルドの光景だった。
――そこに、気のドアを軋ませて、一人の男が入ってくる。
それまで騒いでいた荒くれ共が、皆揃って黙り込み、彼へと視線を向ける。
立っていたのは、個性豊かな冒険者と比べても、抜きん出て異質な男だった。
禍々しい装飾が施された漆黒の甲冑に包み、己より巨大な超重剣を背負っている。
羽織るマントは半ば朽ち、腰の右側に奇妙な形状のサーベル。左にはダガー二本差し。
あまつさえ、漆黒のガントレットに覆われた右手には巨大な鎌を携えている。
長い黒髪。褐色の肌。右目は濃い紫、左目は濃いブルーの金銀妖瞳。
そして顔の上半分を覆い隠す、穢れなき白銀の仮面。
右肩には、真っ白い赤目のカラスが乗っている。つまり私だ。
これぞ『闇夜に堕天せし銀仮面の復讐者』ロレンス・アルゲント二世。
つまりオリキャラなりきロールプレイ中の我が主の姿である。
百戦錬磨・海千山千の冒険者さん達が揃って面食らっている中、彼は口を開いた。
「初ギルド……、ども……」
低く抑えた声音で言って、我が主は入り口付近で軽く頭を下げたのち、場を見回す。
「俺みたいな『闇夜に堕天せし銀仮面の復讐者』他にいるのか、っていないか。フフ」
おまえみたいなキワモノ、他にいても困るだけだわ。
冒険者さん達のそんな言い分が、青ざめたその顔にありありと表れていた。
「今日のギルドの会話、あの依頼は割がいい。とか、あの娼婦がほしい、とか――」
言いながら主は一歩前に進んで、軽く肩を竦めた。
「ま、それが普通だよな。片や俺は虚無(ヴォイド)に墜ち往く堕天使を見て呟くのさ」
ここで朽ちかけたマントを翻し一回転ターン。さらにシニカルな笑顔で、
「It’a Boukensya Guild.」
と、キメたつもりの我が主と、気圧されて微塵も動けなくなった冒険者さん達。
その中の一人が特に怯えた声で小さく「怖ェ……」と漏らす。
「永劫無限? それ、褒め言葉さ」
誰も言ってないぞ、そんなこと。
「好きな武器、パイルバンカー。尊敬する作家、ウロ・ブチ(ヌルい展開はNO)」
そこからクルクルと華麗にターンをキメながら、職員のいるカウンター前へ。
「などと言っている間にカウンターだ。嗚呼、新人冒険者の辛いところだ、これは」
悩みを演出するようにして眉間に指を当てて、彼は泣きそうな職員と向かい合う。
「あ、あの、どのような依頼をお探しで……?」
かわいそうなくらいに表情が凍っている眼鏡の若い女性職員に、我が主が尋ねる。
「ギルドに未登録で、まだ一つも仕事もこなしていない俺を一目見てタダモノではないと見抜いた有能ギルド長たっての希望で冒険者のライセンスを持たないにもかかわらず特例として認められた、魔王軍四天王を打倒するSSSランクの依頼を一つ」
「ありません」
あってたまるか。
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