俺と父さんの話

五味ほたる

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<6> anan編 *エロサンプル

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サンプル、三箇所から抜粋です。
***********







 大学生活は、何度も「休学」「退学」という誘惑に負けそうになった。けれど、父さんとトモ兄が学費を出してくれたのに、辞めたら負けだ! という意地、その一心で卒業した。

 卒業祝いで、昨日は家族三人でスーツのまま個室の焼肉屋に行った。その次の日。事務所に立ち寄った俺に、「amamの話が来たわよお~!」と小松さんが上機嫌でドアを開けた。

「雑誌ですか?」
「amamのセックス特集! 見たことない?」

 セックス特集、という非日常すぎるフレーズに、思考が停止する。理解不能だったので去年の号を見せてもらうと、男女が至近距離で見つめ合った表紙の脇に、「セックスで綺麗になる!」という露骨な文字がデカデカと踊っていた。こんな本を堂々と売ってもいいのか? エロ本コーナーじゃなくて? そもそも、こんな喘ぎ声みたいな雑誌タイトルはどうなんだよ。

「amamの編集部さんからね! 今年の特集は樹生に出てほしい、ってオファーが来たのよ! これってすごいことなんだから!」

 あんたも無事大学卒業したことだしね~! と楽しげに言う声が遠くに聞こえる。やりたくないな、と思った。父さん以外の……しかも女と、裸に近い姿で撮影するなんて無理だ。

「でも、彼女さんからしたら嫌な気持ちになるだろうし……返事はすぐじゃなくていいから、よく考えてみて」

 小松さんは俺の背中の引っかき傷を見ているので、テレビ出演が多くなってきた頃、「彼女のことを教えて」と真剣な顔で問い質された。一般人で高校の頃から付き合ってる、とその場で思いついた設定を言うと、それ以来、「彼女さんを守ってあげて。週刊誌には気をつけなさい」「ちゃんとオートロック式のお家に住んでもらってるのよね?」と、自分のことのように心配してくれていた。

「……ちょっと考えさせてください」




***




 三ヶ月後、俺が表紙のセックス特集号が発売された。表紙画像が解禁された時も、SNSのトレンドに入って話題になっていたらしい。

 今日は午後から雑誌の撮影と取材が入っていたのだが、相手の都合で前倒しになった。お昼を食べる時間もないくらいぶっ続けのスケジュールになったが、夕方には家に帰れることになった。

 amamの献本を事務所から三冊もらい、そのまま帰路に着く。今日は久しぶりに父さんとトモ兄と一緒に夕飯が食べれる。最後に一緒に食べたのはちょうど一週間前だろうか?

「ただいまー」

 俺が早く帰ってきたら、父さんきっと驚くぞ。ドッキリの仕掛け人みたいな気持ちで玄関を開けると……リビングに続く廊下に父さんが立ち尽くしていて、逆ドッキリかと疑うくらい、俺のほうが驚いた。

「父さん……?」

 「おかえりー」と出迎えてくれるいつもの声はない。事務所から献本もらえるよ、と言ってあったのに、その手には本屋の紙袋と、「セックス特集」と書かれたIQゼロの雑誌が開かれている。

「っ……」 

 父さんは今までに見たことのないような顔をしていた。泣きそうな、困っているような、とても怖いものを見たような……。その目が俺の姿を捉えた瞬間、ぐにゃりと歪んだ。

 ブッ、と頭の中で何かが切れる音がした。そのままリビングに逃げようとするので、手を掴んで無理矢理寝室に引っ張り込む。「嫌だっ!」と叫ぶ声が聞こえるけど、もう高校の時から、俺のほうが力が強い。

「嫌っ、嫌だっ!」

 暴れようとする腕をシーツに縫い付ける。……俺の計算通りの反応をしてくれてゾクゾクした。

「雑誌、見てくれたの……?」

 すごい力で押し返そうとしてくるから、俺も力を込めて手首を押さえつける。あまりの強さで、腕の血管が浮き出るほどだった。

「お、まえ……やっぱり……女の子と付き合ったほうがいい」

 絶対にありえない寝言を言う。俺の手のひらの上で……予想していたシナリオ通りに動いてくれるのが、可愛くて可愛くてたまらなかった。

「俺が裸で女と抱き合ってるの、嫌だった?」
「っ……」

 それがダメ押しだったみたいで、憎悪にあふれた目から、ポロッと大粒の涙がこぼれ落ちた。背筋がゾクゾクしてイきそうになる。これだ。この反応が見たくて、これだけのためにあの仕事を受けた。





***





 特集の一ページ目は、俺が上から覆いかぶさっているのを横アングルで撮った見開きだ。加工されすぎていて気持ち悪い。次のページを捲ると、正常位で抱き合う写真が出てくる。額にちゅ、とキスをして、

「ほら……こうやって中に入れるの、父さん、だけ、だよ……っ」
「やっ……あ、あああぁっ」

 俺の大きさもカタチも知っている身体は、いい子で従順に奥まで咥え込んでくれる。拒否するみたいにぎゅうぎゅう締め付けてくるのが逆効果だ。今までの人生で一番興奮してるんじゃないか、ってくらい、凶暴な衝動に支配されて、歯止めがきかなくなる。

「や、だっ……し、たくないっ」

 嘘つき。俺がこうやって無理矢理抱かなかったら、「やっぱり女と付き合ったほうがいい」「いつか子供が欲しくなる」だとか、見当違いなことを一人でぐるぐる考えて、最終的には「別れる」的なことを言い出すんだろう。だからここは殴られても、蹴られてもいいから、俺が悪者になって強引に繋がらないといけない。

「っ、ぁ、ふ、はあっ」

 顔を隠そうとする手を退けて、ぎゅっと絡ませ合う。嫌だと言っても、中は俺のを入れられて喜んでるみたいに吸い付いてくるし、前立腺を押されて父さんのものはゆるく反応している。そのまま腰を奥まで叩きつけた時に射精した。

「あ゛っ……! んん――……ッ」

 きゅ、と唇を引き結んで、俺の射精に合わせてビクビク震える。その表情はひどく扇情的だった。「好きだよ」と安心させるように言って額にキスしながら、広げられたしょうもない雑誌を横目で見やる。正常位の次は横から抱いてる写真だったので、父さんを雑誌がある方へ向かせて、背後から抱き締めた。

「ほら、ちゃんと見て」






***





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