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前編
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「葉積、こんな時まで仕事してないで食べようよ~」
恋人の葉積の誕生日を祝うために料理を並べた所なのに、パソコンに向かい仕事をしていることに呆れながら声をかけた。
「ちょっと待ってすぐ終わる」
キーボードを叩いている姿を見てキッチンに向かう。スープを再び温め直そうと鍋を火にかける。沸騰しないようにかきまぜながらため息をつく。
「ごめん。終わった」
「最近、仕事ばっかりじゃん」
誕生日だというの家にやってきて料理を作っている間も葉積はパソコンとにらめっこしていた。
まるで私なんか居ても変わらないかのように。
寂しさが怒りに変わり始めていた。
「怒るなって。ちょっとトラブルで急に……俺だって自分の誕生日だしましてや休みなのに仕方なかったんだって機嫌なおしてよ」
葉積は私を背中から抱きしめた。
その温もりに少しほっとする。
でも、不満は口をついて出る。
「今日、あなたのためにごちそう作ってたのになんで仕事ばっかして」
「ありがとう。ごめんねって」
葉積は私にキスをする。
こうやって私は騙されるのだ。
いつだって、彼には勝てない。
「危ない、もう火がついてるんだから」
私は可愛くない。こういう時に素直になれないでいる。
本当は忙しくて大変なのも無理して仕事を調整して誕生日を迎えようとしていることも。
だけど、好きだから葉積にはこちらを向いて欲しいのだ。
少しでも仕事の愛情をこちらに傾けて欲しいと思ってしまう。
毎日会えるわけではないのだから貴重な時間を一緒に大事に過ごしたいのだ。
でも、面と向かって素直に口に出来ない恥ずかしさもあるから。
つい不貞腐れてしまう。
「もう、はい。ご飯食べるよ」
お腹は空いていたけれど、本当はこのままずっと温かさを感じながら抱きしめてもらっていたいけれど、恥ずかしいからお皿にスープを注いだ。
葉積はテーブルの料理を見て、嬉しそうに声をあげた。
「美味しそうだね。お腹減った~」
彼が私の心も知らないでのんきに口にするのを聞いて、わかってくれてるのかなぁと思う。
私は毎日彼の事を思って、大丈夫かなぁ。
今日は忙しいかなぁとか頭を離れる事なく日常を過ごしているけど、彼はきっと私の事を思い出すのは1日で数分あるんだろうか?
好きになればなるほど、不安を抱き。
そうなればなるほど、不安でどう思ってる?とは素直に聞けない。
聞いたらショックで立ち直れなくなるのも嫌だ。だから、余計に不機嫌になったり怒ったりしてしまう。
ふぅ、女心とは複雑なのだ。
子供じみた話だけれど、彼は私には到底わからない難しい専門職の仕事をしている。
その仕事が好きだと彼は口にする。
彼が好きだと言える仕事に就いていることは素敵だと思う。
けれど、その一方で夢中になっているその仕事に嫉妬するものがある。
その夢中を私に向けてくれたら幸せなのにと。
それに体を壊すぐらい働いてしまう真面目さが心配なのだ。
決して彼は体が丈夫とは言えないから心配になるのだけれど、そこを彼は何も考えてなさそうな所も胸に引っかかるものがある。
時に好きだからどうして分かってもらえないのかとぶつけてしまう怒りの矛先が彼に向いてしまうのは反省しなければいけないと思う。
付き合って長いからこそ、最近は彼が仕事に没頭してプライベートがほとんどない事を私は不安に抱いている時に、こうして一緒にいる時にも仕事を考えているのが、私は寂しいのだ。
私の存在など小さくて彼にとっては意味がない存在なのだろうかと……。
でも、彼に抱きしめられると私の杞憂なのだろうかとも思う。
現状、目の前にいて私とご飯を一緒に食べようとしているのだから、少しでも私の存在理由はあるのだろうか。
そんなことを考えながら、スープをテーブルに並べ彼の向かいに座る。
恋人の葉積の誕生日を祝うために料理を並べた所なのに、パソコンに向かい仕事をしていることに呆れながら声をかけた。
「ちょっと待ってすぐ終わる」
キーボードを叩いている姿を見てキッチンに向かう。スープを再び温め直そうと鍋を火にかける。沸騰しないようにかきまぜながらため息をつく。
「ごめん。終わった」
「最近、仕事ばっかりじゃん」
誕生日だというの家にやってきて料理を作っている間も葉積はパソコンとにらめっこしていた。
まるで私なんか居ても変わらないかのように。
寂しさが怒りに変わり始めていた。
「怒るなって。ちょっとトラブルで急に……俺だって自分の誕生日だしましてや休みなのに仕方なかったんだって機嫌なおしてよ」
葉積は私を背中から抱きしめた。
その温もりに少しほっとする。
でも、不満は口をついて出る。
「今日、あなたのためにごちそう作ってたのになんで仕事ばっかして」
「ありがとう。ごめんねって」
葉積は私にキスをする。
こうやって私は騙されるのだ。
いつだって、彼には勝てない。
「危ない、もう火がついてるんだから」
私は可愛くない。こういう時に素直になれないでいる。
本当は忙しくて大変なのも無理して仕事を調整して誕生日を迎えようとしていることも。
だけど、好きだから葉積にはこちらを向いて欲しいのだ。
少しでも仕事の愛情をこちらに傾けて欲しいと思ってしまう。
毎日会えるわけではないのだから貴重な時間を一緒に大事に過ごしたいのだ。
でも、面と向かって素直に口に出来ない恥ずかしさもあるから。
つい不貞腐れてしまう。
「もう、はい。ご飯食べるよ」
お腹は空いていたけれど、本当はこのままずっと温かさを感じながら抱きしめてもらっていたいけれど、恥ずかしいからお皿にスープを注いだ。
葉積はテーブルの料理を見て、嬉しそうに声をあげた。
「美味しそうだね。お腹減った~」
彼が私の心も知らないでのんきに口にするのを聞いて、わかってくれてるのかなぁと思う。
私は毎日彼の事を思って、大丈夫かなぁ。
今日は忙しいかなぁとか頭を離れる事なく日常を過ごしているけど、彼はきっと私の事を思い出すのは1日で数分あるんだろうか?
好きになればなるほど、不安を抱き。
そうなればなるほど、不安でどう思ってる?とは素直に聞けない。
聞いたらショックで立ち直れなくなるのも嫌だ。だから、余計に不機嫌になったり怒ったりしてしまう。
ふぅ、女心とは複雑なのだ。
子供じみた話だけれど、彼は私には到底わからない難しい専門職の仕事をしている。
その仕事が好きだと彼は口にする。
彼が好きだと言える仕事に就いていることは素敵だと思う。
けれど、その一方で夢中になっているその仕事に嫉妬するものがある。
その夢中を私に向けてくれたら幸せなのにと。
それに体を壊すぐらい働いてしまう真面目さが心配なのだ。
決して彼は体が丈夫とは言えないから心配になるのだけれど、そこを彼は何も考えてなさそうな所も胸に引っかかるものがある。
時に好きだからどうして分かってもらえないのかとぶつけてしまう怒りの矛先が彼に向いてしまうのは反省しなければいけないと思う。
付き合って長いからこそ、最近は彼が仕事に没頭してプライベートがほとんどない事を私は不安に抱いている時に、こうして一緒にいる時にも仕事を考えているのが、私は寂しいのだ。
私の存在など小さくて彼にとっては意味がない存在なのだろうかと……。
でも、彼に抱きしめられると私の杞憂なのだろうかとも思う。
現状、目の前にいて私とご飯を一緒に食べようとしているのだから、少しでも私の存在理由はあるのだろうか。
そんなことを考えながら、スープをテーブルに並べ彼の向かいに座る。
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