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14話 病
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翌朝は雨が降り始め、皆が小屋に集まった。
木を編み込んで作った小屋は大工をやっていたロータスの指示で完成したものだ。
他にも複数の小屋はあるが、まだ雨風をしのぐには完成度が低い。
作りかけといったところだ。完成にはまだ時間がかかる。
もうしばらくはこの小屋でみんなが揃うことになる。
「リリカ。昨日はすまなかった」
「なんのこと? あぁ、気にしないで。しかし、みなで揃うと窮屈だな。あっちも早く完成させないと。ロータスまた指導してほしい」
「もちろんだ」
ロータスは朴訥な性格だ。
こちらから話しかけない限り、自ら言葉を発することはほぼないと言っても過言ではないだろう。
無表情で何を考えているかわからないが、付き合っていくうちに真面目で村のために貢献してくれる男手あるが、気難しい雰囲気は相変わらずだ。
「こういう日は寝るにかぎる。ゴードン、昨日お前さんは随分遅く帰ってきたが大丈夫だったのか?」
「大丈夫じゃないね。先に着いたのになんだか腹の調子が悪くて大変だったんだぞ」
「気をつけろよ。一人行動は危険な時もあるから。しゃがんでるときは背後に気をつけろ。尻を噛まれたくなけりゃな」
横になったままトコルは笑っていた。
「最近体調悪い日が続いてるが、探索は少し外れて小屋を完成させてもらえないだろうか? 」
ライカはゴードンが気になっていた。
この所、体調不良が続いている。
「悪いな。なんだか、腹の調子が悪いのが続いちまってな。小屋は任せろ。今日は休ませてもらうよ」
生活環境が今までの恵まれた生活とは異なり、衛生面や栄養など極端に悪くなっている。
もしここで感染症などが蔓延すれば、命にも関わる。
「ゴードン、ちょっと待っててくれ」
リリカは立ち上がりトリを探した。
トトと一緒に座っているトリが視界に入り声をかける。
「トリ、ゴードンがしばらく腹痛を患っていて、診てもらえないだろうか。治療が難しいのはわかってるが、アドバイスがほしい」
「もちろんだ。患者はどこにいる? こんなこともあると思って昨日ある荷物を持ってきたんだよ」
トリは片時も離さない大きな鞄を指差した。
「何が入ってるんだ? 」
「医者には欠かせないものさ。さて、どれ、トトも付いてきなさい」
「ゴードン。トリは医者だったんだ。診てもらえ」
ライカはトリの顔を見た。
トリは普段の穏やかな表情とは異なり、医者の顔になっていた。
「トリ、はじめましてだな。よろしく頼むよ」
「こちらこそ。さて、横になってお腹を見せてもらえるか。少し押すが痛かったら教えてくれ」
「最近、腹が出てきてな。恥ずかしいぜ」
トリは腹部をそっと撫でてから、不規則に腹部を押していく。
「そこは少しでも痛いな」
「ここが痛いのか」
「あぁ」
「さぁ、次は起きてくれ」
トリは鞄から聴診器を取り出した。
「深呼吸して、大きく吸って、吐いて」
しばらくの間トリの診察が続き、皆がトリに注目する。
「腸の動きは悪くはないし。感染症ではないだろう。疲れとストレスの影響があるかもしれないから、少し静養したほうが良い。水分をゆっくり摂って、消化に良いものを食べて休んでいれば大丈夫だろう」
「よかった。恩にきるよ」
「あんたにだけ特別メニューを作ってやろう」
ミディアがゴードンに話しかける。
「ばぁさん、頼んだよ」
「トリありがとう」
リリカとライカはトリに感謝を伝えると、トトの目は輝いていた。
トリの後ろでトトは父親のすることに興味津々といった様子で真剣に見入っていた。
「どうしても大きく変わった環境に体も心もついていくのがやっとだからね。
そして、少し落ち着きだしたころに体調を崩しやすい。
もし、感染症などが蔓延してからでは遅い。
感染者を休ませておく部屋は今後を考えると早急な準備が必要かもしれない。ゴードンゆっくり休んで」
トリはトトの頭を撫でると鞄を掴み、元の場所に戻って行った。
木を編み込んで作った小屋は大工をやっていたロータスの指示で完成したものだ。
他にも複数の小屋はあるが、まだ雨風をしのぐには完成度が低い。
作りかけといったところだ。完成にはまだ時間がかかる。
もうしばらくはこの小屋でみんなが揃うことになる。
「リリカ。昨日はすまなかった」
「なんのこと? あぁ、気にしないで。しかし、みなで揃うと窮屈だな。あっちも早く完成させないと。ロータスまた指導してほしい」
「もちろんだ」
ロータスは朴訥な性格だ。
こちらから話しかけない限り、自ら言葉を発することはほぼないと言っても過言ではないだろう。
無表情で何を考えているかわからないが、付き合っていくうちに真面目で村のために貢献してくれる男手あるが、気難しい雰囲気は相変わらずだ。
「こういう日は寝るにかぎる。ゴードン、昨日お前さんは随分遅く帰ってきたが大丈夫だったのか?」
「大丈夫じゃないね。先に着いたのになんだか腹の調子が悪くて大変だったんだぞ」
「気をつけろよ。一人行動は危険な時もあるから。しゃがんでるときは背後に気をつけろ。尻を噛まれたくなけりゃな」
横になったままトコルは笑っていた。
「最近体調悪い日が続いてるが、探索は少し外れて小屋を完成させてもらえないだろうか? 」
ライカはゴードンが気になっていた。
この所、体調不良が続いている。
「悪いな。なんだか、腹の調子が悪いのが続いちまってな。小屋は任せろ。今日は休ませてもらうよ」
生活環境が今までの恵まれた生活とは異なり、衛生面や栄養など極端に悪くなっている。
もしここで感染症などが蔓延すれば、命にも関わる。
「ゴードン、ちょっと待っててくれ」
リリカは立ち上がりトリを探した。
トトと一緒に座っているトリが視界に入り声をかける。
「トリ、ゴードンがしばらく腹痛を患っていて、診てもらえないだろうか。治療が難しいのはわかってるが、アドバイスがほしい」
「もちろんだ。患者はどこにいる? こんなこともあると思って昨日ある荷物を持ってきたんだよ」
トリは片時も離さない大きな鞄を指差した。
「何が入ってるんだ? 」
「医者には欠かせないものさ。さて、どれ、トトも付いてきなさい」
「ゴードン。トリは医者だったんだ。診てもらえ」
ライカはトリの顔を見た。
トリは普段の穏やかな表情とは異なり、医者の顔になっていた。
「トリ、はじめましてだな。よろしく頼むよ」
「こちらこそ。さて、横になってお腹を見せてもらえるか。少し押すが痛かったら教えてくれ」
「最近、腹が出てきてな。恥ずかしいぜ」
トリは腹部をそっと撫でてから、不規則に腹部を押していく。
「そこは少しでも痛いな」
「ここが痛いのか」
「あぁ」
「さぁ、次は起きてくれ」
トリは鞄から聴診器を取り出した。
「深呼吸して、大きく吸って、吐いて」
しばらくの間トリの診察が続き、皆がトリに注目する。
「腸の動きは悪くはないし。感染症ではないだろう。疲れとストレスの影響があるかもしれないから、少し静養したほうが良い。水分をゆっくり摂って、消化に良いものを食べて休んでいれば大丈夫だろう」
「よかった。恩にきるよ」
「あんたにだけ特別メニューを作ってやろう」
ミディアがゴードンに話しかける。
「ばぁさん、頼んだよ」
「トリありがとう」
リリカとライカはトリに感謝を伝えると、トトの目は輝いていた。
トリの後ろでトトは父親のすることに興味津々といった様子で真剣に見入っていた。
「どうしても大きく変わった環境に体も心もついていくのがやっとだからね。
そして、少し落ち着きだしたころに体調を崩しやすい。
もし、感染症などが蔓延してからでは遅い。
感染者を休ませておく部屋は今後を考えると早急な準備が必要かもしれない。ゴードンゆっくり休んで」
トリはトトの頭を撫でると鞄を掴み、元の場所に戻って行った。
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