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月、雲、風、雨
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気づいたら、ぼくは空を飛んでいた。
上を見上げると、小さな星が輝いていた。
あしもとには家の灯りだろうか、所々光っている。
体を傾けると好きな方向に飛べた。
しばらく遊びながら飛んでいると大きな丸いお月様がいて、ぼくは挨拶をした。
「こんばんは。ぼくはゆうき」
「こんばんは。すてきな名前ね。あなたは勇気があるのかしら? 」
お月様はまん丸い目に長いまつげをした女の人だ。
「そうだよ。お父さんとお母さんが勇気のある子になるようにぼくの名前をつけてくれたんだって」
お月様は微笑んだ。
今までよりももっと輝いていた。
「じゃあ、ゆうきくん。私の輝きをかくそうとする曇さんに伝えてきてほしいの。今夜は私を隠そうとしないでって」
「わかった。伝えてくるよ。雲さんはどこにいるの? 」
「雲さんはそこをまっすぐいけば会えるよ。 お願いね。頼んだわ」
「わかった。ぼく行ってくるよ」
ぼくは言われた通り雲さんを探した。
霧が立ち込めてきた。
「雲さん~どこにいるのー? 」
「なんだ? お前さんは? 」
雲さんはふわふわと長くのびた体に、口ひげをはやしたおじいさんだった。
「雲さんですか? 」
「そうじゃ。私が雲だ」
「お月様が雲さんに今夜は隠そうとしないでって」
雲さんは悩んだ顔をしていた。
「うぬ。そうか、わしもそうしたいんじゃがなぁ。今日は風が強いんだ。
お前さん、風くんに伝えてきてはもらえないか? 少し風を弱めてほしいと」
「いいよ。風くんはどこにいるの? 」
「風くんは近くにいると思うんだが、いつもどこか飛び回ってるからな……そっちかな? 」
「わかった。探してみるよ。雲さん、さようなら」
ぼくは霧を抜けた。
しばらく経つと向かいから強い風が吹いてきた。
「風くーん 」
ぼくは大きな声で呼ぶが、返事はない。
少し息をするのが苦しい。
「風くーん、いないの? 」
すると、ものすごく強い風が一瞬吹いてから声が聞こえた。
「俺を呼んだのか? 」
「風くん? 」
「あぁ。なんで俺を呼んだんだ? 」
風くんは少し怖い顔をしていた。
風くんはやんちゃそうな顔をした男の子だ。
「こんばんは。ぼくはゆうき。雲さんが少し風を弱めてほしいって。
お月様が今日は雲さんに隠さないでほしいってお願いしてるの」
「そんなこと言われてもな……。お月様は確かにきれいだし。隠したくはないけれど……。
でも、雨のばあさんが今日は雨を降らさないといけないって言ってたから今日は風を吹かさないといけないんだ」
「雨のおばあさんにぼくが伝えてくるよ」
「お前が? ふーん、じゃあ頼んだ。雨のばあさんならすぐそこさ。もう雨を降らせ始めてるから間に合うか……まぁ、わからないけど」
ぼくは急いだ。雨のおばあさんはどこにいるんだろう。
「雨のおばあさーん」
呼びかけながら空を飛んでいると、急に雨が降ってきた。
雨の中、ぼくはあきらめなかった。
「雨さーん」
その時、雷が鳴った。
眩い光に包まれ、すぐにまた元どおりに暗くなる。
雷の音が怖くてぼくは泣きそうになった。
勇気をだすんだーーーー
「雨さーん」
大きな声で繰り返し呼んだ。
「私を呼んだのはあんたかい? 」
「雨のおばあさん? 」
「おばあさんって、失礼な子ね。私はまだ若いのよ」
「ごめんなさい。ぼくはゆうき。お願いだから、今日は雨を降らせないで」
「なにを言ってるの? 今日は雨を降らせるんだよ。雨は大事なんだ。あんたたち人間にとって雨は生きるのに大事なんだよ。それを降らせないでってあんたはなにを言ってんだい」
「雨さん、お月様が今夜は私を隠さないでって言ってるの」
「月さんがかい? あんた本当にあの子がそう言ったのかい? 」
「うん。お月様のお願いだから、雲さんにも風くんにもお願いしたの。ぼく、ちゃんと伝えにきたんだ」
「それで雨に濡れながら、私を探しにきたのかい。
月さんが言うのはめずらしいのよ。今日は何かあったのかしらね? 」
ぼくは雨で目を細めて開けるのがやっとだった。
全身がびちょびちょできっと帰ったらお母さんに怒られちゃう。
「お願い。今日は雨を降らせないで」
「そういわれてもねぇ……。なんで、月さんがいったのかしらね。はて、約束してたかしら? 」
おばあさんは困った顔をしていた。
「約束していたのかもしれないよ。思い出して雨さん」
「うーん、最近物忘れがはげしくてね……。
あら、やだ。そうだ、今日だったわ。
約束していたの今日だった。
月さんがお願いしたりすることなんて、
そうそうないから変だと思ったけど、
すっかり忘れていたわ。今日は特別な日だったんだわ」
雨さんは焦っていたが、すぐに雨は止んだ。
「あんたのおかげだよ。危うく約束を破ってしまうところだった。ありがとう。あんたのおかげだよ。あんたも今日はきれいな月さんをごらん」
その時、目の前が真っ暗になり何も見えなくなった。
「ゆうき、起きてごらん。お前が見たがっていたお月様が今日は大きく見えるよ」
ぼくの目の前にはお父さんがいた。
笑顔でぼくの頭を撫でてくれる。
「遅くまでおきてるなんて言ってたのに、寝ちゃってたわね」
お母さんは笑っていた。
ぼくは眠くて目をこすってあくびをした。
ソファの上でぼくは眠っていた。
そうだ、今日はスーパームーンの日だってお父さんが言ってたから楽しみにしてたんだ。
月が大きくて美しくなる日だって言ってた。
お父さんが帰ってきたら一緒に見ようって言ってたからぼくは待ってたんだ。
いつの間にか寝ちゃってたんだ。
「ゆうき、こっちおいできれいだよ」
ぼくは急いでお父さんの隣に向かう。
暗い空の中でお月様はきれいに輝いてた。
「お父さん、ぼくね。雲さんにも風さんにも雨さんにもお願いしたんだ。お月様が隠れないようにね、みんなにお願いしたの」
お父さんは笑顔だった。
「ゆうきはすごいな。今日は雨が降るかもと言われていたのに、ゆうきのおかげでこんなきれいなお月様がみられたんだな」
「うん」
ぼくは少しうれしかった。
お母さんもぼくの隣にやってきて、3人でお月様をみた。
上を見上げると、小さな星が輝いていた。
あしもとには家の灯りだろうか、所々光っている。
体を傾けると好きな方向に飛べた。
しばらく遊びながら飛んでいると大きな丸いお月様がいて、ぼくは挨拶をした。
「こんばんは。ぼくはゆうき」
「こんばんは。すてきな名前ね。あなたは勇気があるのかしら? 」
お月様はまん丸い目に長いまつげをした女の人だ。
「そうだよ。お父さんとお母さんが勇気のある子になるようにぼくの名前をつけてくれたんだって」
お月様は微笑んだ。
今までよりももっと輝いていた。
「じゃあ、ゆうきくん。私の輝きをかくそうとする曇さんに伝えてきてほしいの。今夜は私を隠そうとしないでって」
「わかった。伝えてくるよ。雲さんはどこにいるの? 」
「雲さんはそこをまっすぐいけば会えるよ。 お願いね。頼んだわ」
「わかった。ぼく行ってくるよ」
ぼくは言われた通り雲さんを探した。
霧が立ち込めてきた。
「雲さん~どこにいるのー? 」
「なんだ? お前さんは? 」
雲さんはふわふわと長くのびた体に、口ひげをはやしたおじいさんだった。
「雲さんですか? 」
「そうじゃ。私が雲だ」
「お月様が雲さんに今夜は隠そうとしないでって」
雲さんは悩んだ顔をしていた。
「うぬ。そうか、わしもそうしたいんじゃがなぁ。今日は風が強いんだ。
お前さん、風くんに伝えてきてはもらえないか? 少し風を弱めてほしいと」
「いいよ。風くんはどこにいるの? 」
「風くんは近くにいると思うんだが、いつもどこか飛び回ってるからな……そっちかな? 」
「わかった。探してみるよ。雲さん、さようなら」
ぼくは霧を抜けた。
しばらく経つと向かいから強い風が吹いてきた。
「風くーん 」
ぼくは大きな声で呼ぶが、返事はない。
少し息をするのが苦しい。
「風くーん、いないの? 」
すると、ものすごく強い風が一瞬吹いてから声が聞こえた。
「俺を呼んだのか? 」
「風くん? 」
「あぁ。なんで俺を呼んだんだ? 」
風くんは少し怖い顔をしていた。
風くんはやんちゃそうな顔をした男の子だ。
「こんばんは。ぼくはゆうき。雲さんが少し風を弱めてほしいって。
お月様が今日は雲さんに隠さないでほしいってお願いしてるの」
「そんなこと言われてもな……。お月様は確かにきれいだし。隠したくはないけれど……。
でも、雨のばあさんが今日は雨を降らさないといけないって言ってたから今日は風を吹かさないといけないんだ」
「雨のおばあさんにぼくが伝えてくるよ」
「お前が? ふーん、じゃあ頼んだ。雨のばあさんならすぐそこさ。もう雨を降らせ始めてるから間に合うか……まぁ、わからないけど」
ぼくは急いだ。雨のおばあさんはどこにいるんだろう。
「雨のおばあさーん」
呼びかけながら空を飛んでいると、急に雨が降ってきた。
雨の中、ぼくはあきらめなかった。
「雨さーん」
その時、雷が鳴った。
眩い光に包まれ、すぐにまた元どおりに暗くなる。
雷の音が怖くてぼくは泣きそうになった。
勇気をだすんだーーーー
「雨さーん」
大きな声で繰り返し呼んだ。
「私を呼んだのはあんたかい? 」
「雨のおばあさん? 」
「おばあさんって、失礼な子ね。私はまだ若いのよ」
「ごめんなさい。ぼくはゆうき。お願いだから、今日は雨を降らせないで」
「なにを言ってるの? 今日は雨を降らせるんだよ。雨は大事なんだ。あんたたち人間にとって雨は生きるのに大事なんだよ。それを降らせないでってあんたはなにを言ってんだい」
「雨さん、お月様が今夜は私を隠さないでって言ってるの」
「月さんがかい? あんた本当にあの子がそう言ったのかい? 」
「うん。お月様のお願いだから、雲さんにも風くんにもお願いしたの。ぼく、ちゃんと伝えにきたんだ」
「それで雨に濡れながら、私を探しにきたのかい。
月さんが言うのはめずらしいのよ。今日は何かあったのかしらね? 」
ぼくは雨で目を細めて開けるのがやっとだった。
全身がびちょびちょできっと帰ったらお母さんに怒られちゃう。
「お願い。今日は雨を降らせないで」
「そういわれてもねぇ……。なんで、月さんがいったのかしらね。はて、約束してたかしら? 」
おばあさんは困った顔をしていた。
「約束していたのかもしれないよ。思い出して雨さん」
「うーん、最近物忘れがはげしくてね……。
あら、やだ。そうだ、今日だったわ。
約束していたの今日だった。
月さんがお願いしたりすることなんて、
そうそうないから変だと思ったけど、
すっかり忘れていたわ。今日は特別な日だったんだわ」
雨さんは焦っていたが、すぐに雨は止んだ。
「あんたのおかげだよ。危うく約束を破ってしまうところだった。ありがとう。あんたのおかげだよ。あんたも今日はきれいな月さんをごらん」
その時、目の前が真っ暗になり何も見えなくなった。
「ゆうき、起きてごらん。お前が見たがっていたお月様が今日は大きく見えるよ」
ぼくの目の前にはお父さんがいた。
笑顔でぼくの頭を撫でてくれる。
「遅くまでおきてるなんて言ってたのに、寝ちゃってたわね」
お母さんは笑っていた。
ぼくは眠くて目をこすってあくびをした。
ソファの上でぼくは眠っていた。
そうだ、今日はスーパームーンの日だってお父さんが言ってたから楽しみにしてたんだ。
月が大きくて美しくなる日だって言ってた。
お父さんが帰ってきたら一緒に見ようって言ってたからぼくは待ってたんだ。
いつの間にか寝ちゃってたんだ。
「ゆうき、こっちおいできれいだよ」
ぼくは急いでお父さんの隣に向かう。
暗い空の中でお月様はきれいに輝いてた。
「お父さん、ぼくね。雲さんにも風さんにも雨さんにもお願いしたんだ。お月様が隠れないようにね、みんなにお願いしたの」
お父さんは笑顔だった。
「ゆうきはすごいな。今日は雨が降るかもと言われていたのに、ゆうきのおかげでこんなきれいなお月様がみられたんだな」
「うん」
ぼくは少しうれしかった。
お母さんもぼくの隣にやってきて、3人でお月様をみた。
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夢野天瀬さん
ありがとうございます!!
たしかに冒険感がなかったですね。
もっと動きを表現するべきでした!
もくもくの文を少し変えてみました。
まさしく!!最後、月さんから……がほしかったですね。
勉強になります!!
ありがとうございました!!