【完結】恋なんてしない、つもりだったのに。

高羽志雨

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23.電話する大地(2)

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 2人はしばらく無言で歩く。
 体育館の正面入り口までくると、昼練を終えたらしいバスケ部の生徒が体操着のまま出てきている。隣にある運動部の部室で着替えるのだろう。にぎやかに会話しながら部室のほうへ消えていった。

 その様子を意味もなく目で追っていると、相田が沈黙を破った。

「彼女たちにも態度がおかしいんなら、私が言ったことだけが原因じゃなかったのかな」

 相田の言い方に違和感を感じる。千紗は首をかしげた。

「それはそうかもしれないけど。そんなことより、彼女と話してることに何でヤキモチ妬かないの」

 目を丸くした相田は、口を開けて少しだけ上を向き、すぐに千紗のほうへ目を向けた。

「そう思うよね。うん、そうなんだよね」

 何か自分で納得しようとしているようだ。

「さっきも仲が悪くなるの後味悪い理由をごちゃごちゃ言ったけど。今、わかったかも。ちゃんと告白して、正面切って振られたから吹っ切れたのかもね。南くんに好きだって伝えてるようで伝えない、微妙な状態で距離を詰めようとしてたから、周りの女子たちに牽制の意味も込めて嫉妬の気持ちをぶつけてたのかも」

 そう話す横顔は初めて見ると言ってもいいくらい、すっきりした表情だった。
 人の気持ちって複雑なのだ。自分の気持ちも正確にわかるもんじゃないのかもしれない。相田だけじゃなく。
 相田は千紗から目を離して前を向く。

「だから、彼女たちに何も思わない。松村さんへの嫉妬も消えたから、単純に仲直りしてほしいって思ったのかも。さっき言ったことと違うけどね」

 照れくさそうな表情の彼女は可愛らしかった。反面、千紗の胸のあたりには得体のしれないモヤが再び広がってくる。

「なんで急に南くんは彼女たちに頻繁に会うようになったんだろうね」

 つぶやいた言葉が相田に聞こえていなくても良かった。でも、しっかり届いていたらしく、相田が千紗の顔をのぞきこんできた。ニヤニヤしているように見える。

「気になるんだ」

 千紗は勢いよく首を横に振る。否定したかったけど、声は出なかった。そんな様子をみて相田は苦笑いしている。

「そんな否定しなくてもいいじゃない。必要以上にかまってきてた南くんが挨拶しかしなくなって、その彼が同じタイミングで彼女と会う回数をなぜか増やしてたって知ったら、なんか関係あるのかなって考えるの、自然だと思うけど」

 予鈴が響いた。トイレに寄ってから戻るという相田と別れて、1人教室へ向かう。
 
 大輝の行動はタイミングが良いだけじゃない。一緒に動物園に行ったのは、彼女からの誘いを断る理由にしたかったからのはずだ。
 なのに、手の平返しのような態度の変化は不自然すぎた。
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