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30.ダブルデート~望まない再会の後~
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大輝は2人と少し話して、千紗のほうへ走ってきた。
戻ってくる大輝にタイミングを合わせるようにして、元々歩き出していたほうへと体を向ける。一歩足を出したとき、彼が隣に並ぶ。
「お待たせ」
「いいけど、何話してきたの」
カップの周りにつく水滴を見て、大輝がつぶやく。
「シェイク、溶けちゃったな」
日差しの強い5月の連休最終日に、カップを手に持ったまま立ち話をしてしまった。しかも話している最中、体内の温度が上昇しているのも感じていた。
千紗もストローに口をつける。
「うーん。いい感じに溶けて飲みやすいよ」
思っていたほどは溶けていなかった。
見上げると、大輝はストローを口にくわえてシェイクをすすっていた。
「まあ、ちょっと俺の個人的な話、かな」
「そっか」
千紗は少し口角を上げてから、地面に目線を落とす。
「さっきはありがとうね。大輝くんが割って入ってくれてホッとした」
また頭に大輝の手が乗った。
「俺、いなくても大丈夫だったと思うけどね。でも、隣に人がいるだけで心強かったりするからな。役に立ってよかった」
顔を見なくても、大輝が柔らかい表情でいることが声から伝わってくる。
アトラクションを探そうと、千紗は園内マップをバッグから出して大輝を見上げた。
「乗りたいものある?ってか、また手、乗せるんだ。女子は頭ポンポンに弱いから、ホント気安くしないほうがいいよ」
千紗自身、頭を触られるたび、心臓が跳ねている。でも、そのことを気取られたくなくて、軽く聞こえるような口調を意識した。
大輝は千紗の頭に乗せていた手を見つめている。
「誰にでも気安くしてない。俺だって、気があるように誤解されたら困るんだよ」
その言葉に千紗は首をかしげた。疑問をぶつけようとしたとき、近くで大きな歓声と、ガタガタと音が響いてきた。木製のジェットコースターが走っている。
「次、あのコースター乗ろうよ」
木製のジェットコースターを指さして、大輝を振り返る。シェイクを飲み終えたのか、カップを耳元で振っている。残っているかどうか確かめているらしい。
「ああ、いいよ」
じっと千紗を見つめてきた。
「ごめんな。俺の兄貴が原因で千紗を傷つけることになって。ホントごめん」
千紗は大きく目を見開く。
「兄弟っていっても、それは関係ないよ。謝らないで」
大輝の肩を軽くたたいた。
「それよりさ、急に呼び捨てにするからビックリしたよ。迷路の時は、ちゃんづけだったのに」
大輝は照れくさそうに首の後ろへ手をやる。
「あ、それは、なんかあの場では親し気な感じを見せるほうがいいかなって思ったからさ」
「そっか。ありがとう。……あ、学校で呼び捨てはちょっと……」
大輝が3股かけていた彼女がいなくなったと学校で知れ渡ったら、遠巻きに見ているだけだった女子生徒たちがどう反応するかわからない。
人の恋路に巻き込まれたくない。
千紗もシェイクを飲み干すと、カップを大輝にとられた。
「ん。学校では気をつけるよ。じゃ、カップ捨ててくるから、先行って順番並んでてよ」
頭の上からコースターに乗る人たちの歓声が聞こえる。
千紗は坂道を上り、アトラクションの入口へと向かった。
戻ってくる大輝にタイミングを合わせるようにして、元々歩き出していたほうへと体を向ける。一歩足を出したとき、彼が隣に並ぶ。
「お待たせ」
「いいけど、何話してきたの」
カップの周りにつく水滴を見て、大輝がつぶやく。
「シェイク、溶けちゃったな」
日差しの強い5月の連休最終日に、カップを手に持ったまま立ち話をしてしまった。しかも話している最中、体内の温度が上昇しているのも感じていた。
千紗もストローに口をつける。
「うーん。いい感じに溶けて飲みやすいよ」
思っていたほどは溶けていなかった。
見上げると、大輝はストローを口にくわえてシェイクをすすっていた。
「まあ、ちょっと俺の個人的な話、かな」
「そっか」
千紗は少し口角を上げてから、地面に目線を落とす。
「さっきはありがとうね。大輝くんが割って入ってくれてホッとした」
また頭に大輝の手が乗った。
「俺、いなくても大丈夫だったと思うけどね。でも、隣に人がいるだけで心強かったりするからな。役に立ってよかった」
顔を見なくても、大輝が柔らかい表情でいることが声から伝わってくる。
アトラクションを探そうと、千紗は園内マップをバッグから出して大輝を見上げた。
「乗りたいものある?ってか、また手、乗せるんだ。女子は頭ポンポンに弱いから、ホント気安くしないほうがいいよ」
千紗自身、頭を触られるたび、心臓が跳ねている。でも、そのことを気取られたくなくて、軽く聞こえるような口調を意識した。
大輝は千紗の頭に乗せていた手を見つめている。
「誰にでも気安くしてない。俺だって、気があるように誤解されたら困るんだよ」
その言葉に千紗は首をかしげた。疑問をぶつけようとしたとき、近くで大きな歓声と、ガタガタと音が響いてきた。木製のジェットコースターが走っている。
「次、あのコースター乗ろうよ」
木製のジェットコースターを指さして、大輝を振り返る。シェイクを飲み終えたのか、カップを耳元で振っている。残っているかどうか確かめているらしい。
「ああ、いいよ」
じっと千紗を見つめてきた。
「ごめんな。俺の兄貴が原因で千紗を傷つけることになって。ホントごめん」
千紗は大きく目を見開く。
「兄弟っていっても、それは関係ないよ。謝らないで」
大輝の肩を軽くたたいた。
「それよりさ、急に呼び捨てにするからビックリしたよ。迷路の時は、ちゃんづけだったのに」
大輝は照れくさそうに首の後ろへ手をやる。
「あ、それは、なんかあの場では親し気な感じを見せるほうがいいかなって思ったからさ」
「そっか。ありがとう。……あ、学校で呼び捨てはちょっと……」
大輝が3股かけていた彼女がいなくなったと学校で知れ渡ったら、遠巻きに見ているだけだった女子生徒たちがどう反応するかわからない。
人の恋路に巻き込まれたくない。
千紗もシェイクを飲み干すと、カップを大輝にとられた。
「ん。学校では気をつけるよ。じゃ、カップ捨ててくるから、先行って順番並んでてよ」
頭の上からコースターに乗る人たちの歓声が聞こえる。
千紗は坂道を上り、アトラクションの入口へと向かった。
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