貧困少女ななこの青春

おとなのなな

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家出少女とお兄ちゃん

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 到着した。ゆっぴの家だ。スマホで「きたよ」って送るとすぐによく知った顔のジャージ男子が出てきて、ほらみて今日のガチャで一撃当たりを引けるのはわかってたわ、みたいな。

「ごめん、急なお願いで」

「おー、いいよいいよ。そんな申し訳なさそうにしなくて。てか、俺は頼ってくれて嬉しいと思ってるから大丈夫。その、制服のまんまできたのはびっくりだけど。補導されねえ?」

 ゆっぴは裕福な家庭の男の子だからジャージ姿と言えどおしゃれに映えてる。私が親友と認めるひなたんの自慢のお兄ちゃんだ。私の家が超貧乏な上にニセパパが変だという事情は、ひなたんから「まだうちらだけの話なんだけどね」って前置き付きで端的ながらゆっぴにも伝わってた。だから突然だけど泊めてって頼んでもすんなり受け入れてくれたのだ。もちろんゆっぴ達のお父さんとお母さんには内緒で。
 ゆっぴがざっと取り決めてくれた通り、普通に玄関からこっそり家に入ればOK。靴持って階段上ってゆっぴの部屋にしれっとインしてから、朝まで静かにしとく計画だ。

 私が親友ひなたんにヘルプせず、なぜ親友のお兄ちゃんゆっぴにヘルプしたのか。それはそうするほかに手がなかったから。ひなたんが家にいないんだもん。

 中学になって同じ組になった私とひなたんはすぐ打ち解けた。常にゆっぴをいいお兄ちゃんだと言っていたひなたん。だから私はゆっぴとも友達になった。ひなたんが「私さ、三コ上にお兄ちゃんいるんだけど兄妹ってよりも友達同士みたいな関係なんだ、あんたも仲良くなってみ」って言ってくれたから、私もゆっぴお兄ちゃんと友達になれた。中一になったばかりで高一の友達がいるんだって、それはなんかかっこいい気がした。私が中二になってゆっぴが高二になって二人の仲は以前よりもっと友達らしくなった気もする。ゆっぴはひなたんよりも話しやすい相手になっているのかも。

「お兄ちゃんあのね、ななこね、服ってほとんどボロっちいのとかサイズちっさいのしか、持ってないの。つまり制服が普段着なの、なんか親が貧乏だから」

 ゆっぴの部屋はおしゃれでいい匂いがする。男の子の部屋って汚くて臭いはずだとか、そういう先入観はこのお兄ちゃんに当てはまらなかった。

「そういうのやめれ。普通に引くわ。てか俺をお兄ちゃんって呼ぶな。それとナナコって誰なん? なんかはやってる漫画の影響か?」

「へへへ、私の名前なり。新しいの作った」

 私はゆっぴを信じてるけど、もしもこっちの足元を見てエロいことしたら叫んで逃げる。アカウント作ったことは一応言っとこ、と思った頃が0時くらい。ゆっぴ差し入れのコンビニおむすびは鮭とエビマヨの二個。やったーラッキー。


 つづく
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