金銀の竜使い

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 女官に案内されたのは、荘厳な扉の前だった。左右にはこの扉を守るかのように二人の近衛騎士が立っている。
 扉の所々に金色の唐草模様が描かれており、静粛な雰囲気を醸し出している様は、この扉の奥にいる者が只者ではないことを示していた。

コンコン―――

 「女王陛下。ナギ殿をお連れ致しました」
 「お入りなさい」

 扉をノックした後、中から女性の声が返ってきた。

 「失礼致します」

 騎士達が扉を左右から開け、ナギは入り口で右手を左胸に、左手を背中に添え、礼をとった。

 「女王陛下直々の御呼びと聞き、馳せ参じ―――」
 「そんな堅苦しい挨拶はいいから、こちらにいらっしゃい」

 そんな……だと?これはとっっっっっっても大切なことなんだぞ!なのに、貴女ときたら……。
 内心ため息をつきながら顔を上げると、こちらを見ながら扇を口元で広げ、ソファに寄りかかっている女性がいた。
 アーロンド帝国女王マリアーナ・アーロンド、その人である。少し癖のある金髪を背に流し、ルビー色の瞳がナギを見ている。
 彼女は嬉しそうに笑いながら、彼を向かいのソファへと促した。
 
 「呼び出してごめんなさいね。どうしてもあなたに会いたかったものだから」

 屈託のない笑顔で言われ、ナギは僅かに眉を寄せたが、すぐに元に戻す。

 「……いえ。女王陛下のお召ならば致し方ないこと。何か私に御用でしょうか?」

 今度は女王が眉を寄せ、子供のように唇を尖らせる。

 「ナギ。二人の時は“女王陛下”ではなく、“伯母上”と呼んでと言っているでしょう?それにそんな他人行儀にしないでちょうだい」
 
 そう、この国の女王はナギの叔母に当たる。即ち、彼は王族なのだ。
 大国であるアーロンド帝国は代々、男が王に就いていた。では、何故マリアーナが王位に就いているのか。
 
 先代の王、ナギの祖父は悪政を敷いていた。過度な税を国民に敷き、一部の臣下達と共に富を貪っていた。その行為は益々恨みや怒りを増幅させ、所々で反乱が起こっていた。このままでは危ういと感じた第一王子であるナギの父が剣を取り、反帝国軍と共に謀反を起こした。
 勝敗は反帝国軍側が勝ったが、ナギの父は命を落とした。子供であるナギはまだ幼かったため、代わりに叔母であるマリアーナが女王として即位した。女性の王は、王家の男子が絶たれた時に限り可能であった。そういった旨で古い文献にも記載されていたが、事態が事態なだけに特例として王位を継いだ。また、マリアーナ自身が才女であり信頼も厚かったため、この即位に異議を申し立てる者はいなかった。

 彼女は弟の忘れ形見であるナギを溺愛しており、しょっちゅう呼び出していた。その溺愛ぶりが高度を増し、彼は日に日に叔母を警戒していった。
 それが今に繋がる。自分の代わりに即位し、可愛がってくれていることには感謝している。嫌いなわけでもない。が、限度というものがある。彼はこの叔母が苦手なのだ。
 
















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テストが一つ終わりました。来週はテストのラッシュです。
息抜きは必要!


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