金銀の竜使い

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 国の守りの要は騎士団が担っている。第一・第二・第三騎士団と別れており、第一騎士団は王族や重要人物の護衛、第二騎士団は害獣から街を守る役目、第三騎士団は街の治安維持をそれぞれ担っている。しかし、これらとは別の部隊が存在する。表は騎士団に所属しているが、本来は騎士団から独立している。

 ――国家特務竜騎乗隊――

 この世界には竜が存在する。あらゆる種族の頂点に立つ王のような存在。口から発せられる咆哮やブレス、どんなモノも容易く引き裂く鋭い爪、巨体を支える蝙蝠のような翼。その姿を一度でも見ればその者に幸せが訪れると云われており、地方によっては信仰の対象にもなっている。一見すると、獰猛のイメージだが、彼らは知能が高く、滅多に他のモノを襲わない。また、一度心を許した者は最後まで裏切らない。
 
 竜騎乗隊は竜との信頼を築ける者だけ選ばれる。それは、極ほんの一部の人間だけである。主な役割は戦場に赴くことである。竜一頭いるだけで戦況は大きく変わる。国々は竜を求め世界中を探し回る。しかし、竜も生き物だ。人間を選ぶ権利がある。もし無理やり連れて行こうものならば、地獄の鉄槌が降りかかる。そのような理由もあって、隊には多くの竜がいる訳ではない。よって、必然的に騎乗隊は民にとっては憧れの存在でもあり、尊敬する対象である。
 
 アーロンド帝国の竜騎乗隊には、現在7頭の竜がいる。その中でもひと際目立つ竜がいる。その竜は金色の鱗を持ち、全ての力においてずば抜けている。そして、その竜の背中に跨ることを許された人物は竜騎乗隊隊長シルヴァである。“シルヴァ”は本名ではない。目元から頭をすっぽり隠す兜を常に被っており、その兜が銀色で空の王たる金色の竜の相棒パートナーであることから、尊敬の意を込めて人々はそう言った。この国で“シルヴァ”の名を知らない者はいない。街中で“シルヴァ”とはどんな人物かと聞けば、口々にどれだけ偉大な存在か、かっこいいか、きっと20歳代で美青年だろうとか、時には恋愛感情が入ったことを語る。“シルヴァ”がまだ15歳の少年だとも知らずに。




 そんな国民から絶大な人気を誇る我が帝国の“シルヴァ”は絶賛不機嫌である。ナギが“シルヴァ”であることは一部の者しか知らない。年齢も顔も公開せず、謎の塊である“シルヴァ”の真の姿を暴いてやろうという者は後を絶たないが、誰も真相に辿り着けない。それだけ、国にとって最重要人物であるとが伺える。といっても、ナギ自身、王族であるため間違っていないが。
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