最後の夜、君の名前はきんぼうけ

未来の小説家

文字の大きさ
1 / 1

きんぼうけ。

しおりを挟む
 俺と七菜香が出会ってもう3年か。最近あいつの心が離れていってるのを感じる。特別何かあったわけがない。喧嘩は確かにしている。それは昔からだ。別に喋っていないわけでもない。それなりに俺たちはカップルとしての程は保っているだろう。周りから見ればどう見てもカップルと言われるだろう。
  
 だけど、それとこれとは話が違う。肌感覚であいつの気持ちが離れてるのが分かるんだ。意外と男もこういう時の直感は鋭かったりするのだろうか。思い過ごしであればどれだけ幸せなことだろう。

 俺はダメな男だ。不安になれば不安になるほど七菜香の体を求めてしまう。今夜もだ。そっと、後ろから七菜香の胸に手を回す。
 彼女はそれを振り払う。もう一度胸を触る。すると彼女はこっちを向き、一言言った。
「あなたに抱かれるのは今夜限りね。」
らしくない淋しげな台詞を吐きながら、七菜香はボタンを指で弾く。そして、部屋の電気を消す。

「そんなことさせないさ。」
と俺は余裕を装いながら、ブラジャーを外す。行為中、彼女は俺を見ない。何も言わない。どれだけ肉体的欲求が満たされても、心に穴が空いているのを感じた。彼女の心が逃げていく。

 最初出会った頃は逆だった。
「もし私を嫌いになったら、いつでも別れてあげるから私と付き合って。」
と押されて付き合ったんだ。これは出会ってから1年ぐらい酔った時とかにいつも言っていた。
 
 だけど今では俺の方がお前に依存してしまったんだな。まるでトリカブトのように、口に入れるとゆっくりと心を犯し、胸を苦しくするだね。

 行為後俺と女はすぐに寝た。俺はもう何も考えたくなかったからすぐ寝ようとしたんだ。日差しが俺の顔を照らす。目を覚ますと俺の横にいたはずの女がいない。
「これまでありがとう。さようなら。」と書かれたメモ書きが残されていた。俺はベットの横に置いてあった女が忘れて行った煙草を一本取り、火をつけた。
 物寂しい口から出る煙、ひび割れたガラス窓、輝かしい街の色、目に映るもの全てがつまづいた昨日を悲しく染める。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。 小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。 緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。 それから雪哉の態度が変わり――。

処理中です...