恋愛ショートショート集

花火

　花火は真っ暗な空を真っ昼間にし、圧巻のフィナーレで幕を閉じた。さすが全国から人が来るような地域1番の花火大会だ。おれと葉月は友達カップルと4人で花火を見ていた。そこから電車に乗ると長いので歩いて帰る事にした。友達カップルが前でイチャイチャしているので自然と2人だけで会話していた。
　葉月が肘を掴んでくる。ドキッとする。
「ねぇ、手繋いでもいい？」
「あ、あぁ。」
　おれは小さい時から葉月のことが好きだった。正直心臓が飛び出そうだ。ここからだと30分はかかる。たまにコンビニでアイスを買って4人で喋りながら食べたりもした。だけどほとんど2人で喋っていた。それぞれの高校の話や恋愛話まで色々な事を喋った。本当に楽しかった。
　地元にやっと近づいてきた。友達カップルとは方向が違うのでもうお別れした。2人で田んぼ道を歩いた。すると急に葉月が足を止めた。

「ねぇ、星、綺麗だね。」
「え、あ、そうだね。とても綺麗だ。」


　ちょっと間が空いた。


「帰ろうか。」
「あ、あぁ、家まで送るよ。」
「いいよ。1人で帰れるから。」
「だめだよ。夜も遅いし。」
「本当にいいから…」
　葉月の目には涙が潤んでいた。