免許を取って初めてのドライブ、君とならどこへでもいける気がした

未来の小説家

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初めてのドライブ

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 免許を取って1ヶ月くらい経った。運転も慣れてきて、幼馴染の奈々を夜ドライブに誘った。晩方に彼女の家の前まで迎えに行く。家の前にはもうそこには彼女がいた。赤い月の光に照らされながら1人立っている君はどこか儚げでいつか僕の前から消えてしまうのではないかと思ってしまう。

 出会ってもう17年も経った。君がいない世界など僕には想像できない。高校は離れてしまったけど同じ大学に入ることができた。最早運命的な何かを感じないわけでもない。だけどこの腐れ縁も切れる時が近づいてるようなそんな気がしてしまう。

 車を彼女の家の前に止めるとすぐに無邪気な笑顔で入ってきて、
「はい、これベルギーのお土産!」
と言ってアンティーク調のマグカップをくれた。そう思えば、2、3ヶ月前にベルギーに短期留学に行っていたな。旅行先で僕の事を考えてくれて長い間渡すタイミングを伺っていた奈々の事を想像すると嬉しくなった。

 とりあえず車を走らせる。昨日適当に作った最近流行っているjpopのプレイリストを流す。すると奈々が
「ねぇ音楽変えてもいい?」
「あぁいいよ。」
 一応昨日頑張って選んだんだけどなぁ。そもそも僕はjpopをあまり聞かないから何でもいいんだけどな。

 たわいもない話をしながら、とりあえずご飯を食べることにした。
「イタリアンとかはどう?美味しいピザのあるとこ知ってるけど。」
と奈々に聞くと、
「うーん。お寿司は?」
「いいね。」
 頑張って男としてお店を提案してみるけども大体奈々がはっきり意見を言うタイプだから押し切られてしまう。まあ遠慮して嫌なことを言わない人よりは100倍いい。正直自分の意見のあまりない僕からしたらこういう方が合ってるんだろうな。

 回転寿司の駐車場に入って、駐車しようとすると緊張してしまって上手くいかない。
「下手くそー!」
と無邪気な笑顔でいじってくる。
「うるさいなぁ。免許とってから言えよ。」
「はぁーい。」
 こんな下りをやりつつも実際心の中では嬉しいものだ。失敗を笑える関係って理想なんだよな。

 お店に入って少し経って、奈々がこんな事を聞いてきた。
「彼女は作らないの?」
「うーん。まあいい人がいたらかな。」
「早く作りなよ。」
 本当は君が好きだなんてここまで長い付き合いになると言いづらい。
 少し沈黙が続いた。奈々が口を開く。
「結婚は?」
「まあした方がいいのかなって感じかな。」
 結婚するとしたら君だけだとか言えたらかっこいいんだろうけどな。
「奈々は?」
「分かんないなぁ。」

 食べ終わって車に戻って、また走らせる。
「次はどこに行こうか。海でも行く?」
「えー川がいい。」
 海より川って。変わったやつだなぁ。
「どこの川。」
「あの石川の駅の近くの橋の上。」
 あそこか。僕たちの思い出の場所だ。小学校の時よく行って遊んでた所だ。

 橋の上で車を止めて、外に出る。少し肌寒い。橋の上から川を眺めていると奈々が後ろからお腹周りに抱きついて来た。
「あったかーい。昔は同じくらいの身長だったのに、もう肩からは抱きつけないや。」
「やめろよ。」
 やっぱりちょっと照れてしまう。ここで抱き寄せれたらかっこいい男なんだろうけど。

「寒いから車に戻ろう。」
と奈々がいったので、また車をとりあえず走らせる。
「そろそろ時間も遅いし、帰ろうか。」
と聞くと、
「いや。もっと走ろう。ずっと真っ直ぐ。」
 それ聞いた僕は嬉しくてアクセル全開で車を走らせた。
「もうこわーい!」
 車の速度を落とす。横で笑ってる奈々の顔を見てずっと真っ直ぐ進んでいけるそんな気がした。

 
 

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