世界からすべり落ちるしあわせ

ASOBIVA

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臆病な君と、僕とふたりで

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目隠しと手錠。
まさか出会い頭に攫われるとは思わなかった。
 
相手は、非力な女の子だ。
手錠はちゃちなおもちゃだから、きっとすぐ外れる。

目隠しだって、いかにも安っぽい作りだからきっとすぐに外せるだろう。
 
でも、抗おうなんて思わない。
相手は僕が世界で一番好きな君だから。
 
ちょっと不審ではあるけれど
これはデートだ。きっとそうだ。
 
手を引かれて、僕は車の後部座席に乗せられたらしい。
彼女が運転するのだろう。最近免許をとったと聞いていた。
 
繋いだ手は離される。
柔らかな手のひらの名残を僕は握りしめた。
 
どこに連れて行かれても構わない。
君と一緒だから。
 
車の走る音が、やがて絶えた。
車のドアが開く音とともに、僕はまた彼女の手で
どこかへと導かれる。
 
濃い緑に混じって、君のコロンの香りがする。
僕は深く息を吸い込んだ。
 
さくさくと落ち葉を踏む音と僕らの呼吸だけが
世界の全てのようだ。
 
なんて素敵なデートだろう。
 
僕らの目的地に辿り着いたらしい。
目隠しが汗ですべって、そのまま外れる。
 
目を開けて最初に見えるのは君の顔。
幸せってこういうことだろう。
 
ずっと目隠しをしていたから
平衡感覚が少しおかしいのかもしれない。
 
古びた小屋の中で
君の顔がなぜだか涙で歪んでいるように見える。
泣き顔も愛らしい。でも、できれば笑顔が見たい。
 
「大丈夫だよ」
 
僕は、笑う。
 
「大丈夫」
 
何があったって、僕は君のそばにいる。
だから、不安に縛られないで。
 
「あんた、バカでしょ…っ」
 
泣きながら笑う君を抱きしめるのに
手錠が邪魔だ。
 
でも、構わない。
 
君が心から笑えるときまで
好きなだけ縛ればいい。
 
僕は、笑う。

日常からすべり落ちた先、僕らふたりしかいない世界が
もしあるというのなら、それはきっとたまらなく幸せだ!
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