9 / 9
閉じこもりノア
8.〜アイクside
「坊っちゃま……。やっぱり今日はやめておきましょう」
「……ううん、頑張る。」
あれからやはり坊っちゃまは顔色が宜しくない。
目を閉じて浅い呼吸を繰り返している。
恐らく押し花のことだろう。
私はタイミングの良い時で、と坊っちゃまに伝えてはいるのだが、坊っちゃまはどうしてもあげたい、と無理されている。
昨日、夜に少し見た時にも酷くうなされているようだったが、今日も朝起こしに行けば夜よりも酷く冷や汗をかきながらうなされていた。
坊っちゃまにお湯を渡して飲むように促す。
ほんの少し口に入れて飲み込む。
どうしようか、やはり医者を呼ぶべきか、と悩んでいると何かに引っ張られる感覚がした。
ふと下を見れば坊っちゃまが私の服の裾を震える手で掴んでいた。
私はしゃがんで目線を合わせて手を握る。
坊っちゃまは目を瞑ったまま苦しそうにしている。
「ァ、アイク、ぎゅってして……。」
小さい声で私を求めてくる坊っちゃまが健気で、なぜこんな方が苦しんでいるのかとこちらが悲しくなる。
「大丈夫、大丈夫ですよ。私がついてます。」
坊っちゃまの隣に座らせてもらい、坊っちゃまを包むように抱きしめて背中を叩く。
遠慮がちに私の胸元へ顔を埋める。
うっ、とたまに嘔吐く音が聞こえて大丈夫かと坊っちゃまを見下ろすが頭部が見えるだけだった。
「大丈夫。大丈夫ですよ」
「私が坊っちゃまの隣にいます。」
そう声がけをしながら背中をゆっくりと叩いた。
長い間こうしていると少し落ち着いたのか、呼吸が深くなってきた。
坊っちゃまに再度大丈夫ですよ、と声がけをすると今度は泣き始めてしまった。
私は涙を拭いながら抱きしめ続けた。
涙は溢れ続けて止まらない。
水分が全て抜けてしまうのではないかと思うほどに。
「アイク、ありがとう、もう大丈夫」
「坊っちゃま、無理はしないでください。
私も坊っちゃまにプレッシャーをかけてしまっていましたね。申し訳ございません。」
少し落ち着いたようで先程より顔色も優れていた。
坊っちゃまが外に出るのは私だけでなく、ご家族も望んでいることだ。
だから無理強いはしないとはいいつつも毎日外に出るよう勧めていたのは私だ。
坊っちゃまがこんなことになるまで追い詰めたのは私なのではないか、と罪悪感もあった。
「謝らないで、いつまでもこのままじゃいけないって僕も分かってる。」
私から体を離して坊っちゃまは微笑む。
「僕から離れないって約束したでしょ?
アイクが隣にいてくれれば頑張れると思う。」
「もちろんです。どんな事があっても坊っちゃまからは離れません。」
咄嗟にそんな言葉が出た。
坊っちゃまは少し悲しそうな、嬉しそうな、そんな複雑な顔をしていた。
俯いた坊っちゃまは何か悩んでいるようでじっとしている。
「渡しにいくよ。」
「…分かりました。少しでも体調が優れなかったら私が坊っちゃまを強制的にお部屋に戻します。」
坊っちゃまは体を崩しやすいからなるべく万全の状態で外に出るようにしたかった。
ここまで坊っちゃまを苦しめることになるとは思っていなかった私の落ち度だ。
これ以上苦しい思いをするようなら私が坊っちゃまを止める。
坊っちゃまをベッドで寝るよう促して薄い昼寝用の毛布をかける。
朝食の準備をしようと坊っちゃまに食べられそうなものを聞く。
「ヨーグルトやゼリーなら食べられますか?」
「ゼリー、食べたい。」
ゼリーを選択した坊っちゃまに心の中でガッツポーズをした。
恐らくできているだろうゼリーの様子を確かめるべく、部屋を後にする。
厨房へ行くと朝ごはんのいい匂いがする。
「パーシさん。おはようございます。」
「おぉ!アイクさん、おはよう!ゼリー綺麗にできてたよ!」
「坊っちゃまが朝はゼリーを食べたいと言っていて…お出ししても大丈夫でしょうか」
「もちろん!そこの棚に入ってるゼリー用の容器に入れて持って行ってあげてくれ!」
パーシさんはデザートの盛りつけをしていて邪魔をするといけないと冷蔵庫からゼリーをひとつ取り出す。
プルプルと揺れる紫色のゼリー。
中の果肉もツヤツヤとして良い出来だと思う。
「おぉ!上手く作れたじゃないか!!
早く持ってってやんな!」
「はい!ありがとうございました」
パーシさんにお礼を言ってその場を離れる。
坊っちゃまの部屋へ入るとまた俯いて手を震わせている。
「アイク……」
こちらを見あげて不安そうな顔で服の裾を掴む。
「どうされましたか?」
ゼリーを机の上に置き、しゃがんで坊っちゃまの目線に合わせる。
本当に喜んでくれるのか不安になったそうで、坊っちゃまの手を握って絶対にそんなことはない、と否定した。
「大丈夫です。絶対喜ばれます。なんだったら私が欲しいくらいです。」
頭を撫でると緊張が和らいだのか少しホッとしたような様子だった。
「ゼリー、食べれば元気でますよ。坊っちゃまの好きなぶどうで作ったんです。」
「ぇ、アイクが作ったの?」
「えぇ、良いぶどうが採れたそうで、昨日の晩に料理人の方に教えてもらったんです。」
「そうだったの、ありがとう。」
坊っちゃまにゼリーを渡すと目をキラキラさせて口に入れる。
ゆっくりと咀嚼し飲み込む。
「これ、すごく美味しい……!」
坊っちゃまが笑った。
最近はずっと苦しそうにしていたからそれが嬉しかった。
食欲も無さそうだったがゼリーは次々に口に入れいつの間にか完食されていた。
「アイク、料理の才能もあるよ。すごく美味しかった。」
「坊っちゃまの笑顔が見れてとても嬉しいです。まだ沢山あるので朝ごはんやおやつで出しましょうか?」
「うん!」
年相応の反応と笑顔が可愛らしい。
私の作ったゼリーで坊っちゃまがとても喜んでいることが最高に嬉しい。
いつの間にか頭を撫でていて、それに応えるかのように頭をこちらに向けてくる。
作るに至った経緯を話し、坊っちゃまの為だけに作ったものだと伝える。
「だから私が作ったもので喜んでいただけて、坊っちゃまの笑顔が見れて嬉しいのです。」
坊っちゃまが笑ってくれるだけで幸せだ。
坊っちゃまは何故か嬉しいような悲しいような、そんな顔をしている。
悲しむ必要なんてないのに。私がずっとそばに居る。
「アイク、ありがとう。大好き」
こちらを見て頬を赤くして微笑みながらそう言われれば私は涙をこらえることに必死だった。
「私も、坊っちゃまが大好きですよ。」
坊っちゃまへの忠誠と愛を込めて。
恥ずかしそうに照れ笑いする坊っちゃまの手を握るとそのまま抱きしめられた。
ぐす、と聞こえたのは坊っちゃまの鼻をすする音だ。
泣かなくていいのですよ。私はずっと傍にいます。
今は信じていただけなくても。
「……ううん、頑張る。」
あれからやはり坊っちゃまは顔色が宜しくない。
目を閉じて浅い呼吸を繰り返している。
恐らく押し花のことだろう。
私はタイミングの良い時で、と坊っちゃまに伝えてはいるのだが、坊っちゃまはどうしてもあげたい、と無理されている。
昨日、夜に少し見た時にも酷くうなされているようだったが、今日も朝起こしに行けば夜よりも酷く冷や汗をかきながらうなされていた。
坊っちゃまにお湯を渡して飲むように促す。
ほんの少し口に入れて飲み込む。
どうしようか、やはり医者を呼ぶべきか、と悩んでいると何かに引っ張られる感覚がした。
ふと下を見れば坊っちゃまが私の服の裾を震える手で掴んでいた。
私はしゃがんで目線を合わせて手を握る。
坊っちゃまは目を瞑ったまま苦しそうにしている。
「ァ、アイク、ぎゅってして……。」
小さい声で私を求めてくる坊っちゃまが健気で、なぜこんな方が苦しんでいるのかとこちらが悲しくなる。
「大丈夫、大丈夫ですよ。私がついてます。」
坊っちゃまの隣に座らせてもらい、坊っちゃまを包むように抱きしめて背中を叩く。
遠慮がちに私の胸元へ顔を埋める。
うっ、とたまに嘔吐く音が聞こえて大丈夫かと坊っちゃまを見下ろすが頭部が見えるだけだった。
「大丈夫。大丈夫ですよ」
「私が坊っちゃまの隣にいます。」
そう声がけをしながら背中をゆっくりと叩いた。
長い間こうしていると少し落ち着いたのか、呼吸が深くなってきた。
坊っちゃまに再度大丈夫ですよ、と声がけをすると今度は泣き始めてしまった。
私は涙を拭いながら抱きしめ続けた。
涙は溢れ続けて止まらない。
水分が全て抜けてしまうのではないかと思うほどに。
「アイク、ありがとう、もう大丈夫」
「坊っちゃま、無理はしないでください。
私も坊っちゃまにプレッシャーをかけてしまっていましたね。申し訳ございません。」
少し落ち着いたようで先程より顔色も優れていた。
坊っちゃまが外に出るのは私だけでなく、ご家族も望んでいることだ。
だから無理強いはしないとはいいつつも毎日外に出るよう勧めていたのは私だ。
坊っちゃまがこんなことになるまで追い詰めたのは私なのではないか、と罪悪感もあった。
「謝らないで、いつまでもこのままじゃいけないって僕も分かってる。」
私から体を離して坊っちゃまは微笑む。
「僕から離れないって約束したでしょ?
アイクが隣にいてくれれば頑張れると思う。」
「もちろんです。どんな事があっても坊っちゃまからは離れません。」
咄嗟にそんな言葉が出た。
坊っちゃまは少し悲しそうな、嬉しそうな、そんな複雑な顔をしていた。
俯いた坊っちゃまは何か悩んでいるようでじっとしている。
「渡しにいくよ。」
「…分かりました。少しでも体調が優れなかったら私が坊っちゃまを強制的にお部屋に戻します。」
坊っちゃまは体を崩しやすいからなるべく万全の状態で外に出るようにしたかった。
ここまで坊っちゃまを苦しめることになるとは思っていなかった私の落ち度だ。
これ以上苦しい思いをするようなら私が坊っちゃまを止める。
坊っちゃまをベッドで寝るよう促して薄い昼寝用の毛布をかける。
朝食の準備をしようと坊っちゃまに食べられそうなものを聞く。
「ヨーグルトやゼリーなら食べられますか?」
「ゼリー、食べたい。」
ゼリーを選択した坊っちゃまに心の中でガッツポーズをした。
恐らくできているだろうゼリーの様子を確かめるべく、部屋を後にする。
厨房へ行くと朝ごはんのいい匂いがする。
「パーシさん。おはようございます。」
「おぉ!アイクさん、おはよう!ゼリー綺麗にできてたよ!」
「坊っちゃまが朝はゼリーを食べたいと言っていて…お出ししても大丈夫でしょうか」
「もちろん!そこの棚に入ってるゼリー用の容器に入れて持って行ってあげてくれ!」
パーシさんはデザートの盛りつけをしていて邪魔をするといけないと冷蔵庫からゼリーをひとつ取り出す。
プルプルと揺れる紫色のゼリー。
中の果肉もツヤツヤとして良い出来だと思う。
「おぉ!上手く作れたじゃないか!!
早く持ってってやんな!」
「はい!ありがとうございました」
パーシさんにお礼を言ってその場を離れる。
坊っちゃまの部屋へ入るとまた俯いて手を震わせている。
「アイク……」
こちらを見あげて不安そうな顔で服の裾を掴む。
「どうされましたか?」
ゼリーを机の上に置き、しゃがんで坊っちゃまの目線に合わせる。
本当に喜んでくれるのか不安になったそうで、坊っちゃまの手を握って絶対にそんなことはない、と否定した。
「大丈夫です。絶対喜ばれます。なんだったら私が欲しいくらいです。」
頭を撫でると緊張が和らいだのか少しホッとしたような様子だった。
「ゼリー、食べれば元気でますよ。坊っちゃまの好きなぶどうで作ったんです。」
「ぇ、アイクが作ったの?」
「えぇ、良いぶどうが採れたそうで、昨日の晩に料理人の方に教えてもらったんです。」
「そうだったの、ありがとう。」
坊っちゃまにゼリーを渡すと目をキラキラさせて口に入れる。
ゆっくりと咀嚼し飲み込む。
「これ、すごく美味しい……!」
坊っちゃまが笑った。
最近はずっと苦しそうにしていたからそれが嬉しかった。
食欲も無さそうだったがゼリーは次々に口に入れいつの間にか完食されていた。
「アイク、料理の才能もあるよ。すごく美味しかった。」
「坊っちゃまの笑顔が見れてとても嬉しいです。まだ沢山あるので朝ごはんやおやつで出しましょうか?」
「うん!」
年相応の反応と笑顔が可愛らしい。
私の作ったゼリーで坊っちゃまがとても喜んでいることが最高に嬉しい。
いつの間にか頭を撫でていて、それに応えるかのように頭をこちらに向けてくる。
作るに至った経緯を話し、坊っちゃまの為だけに作ったものだと伝える。
「だから私が作ったもので喜んでいただけて、坊っちゃまの笑顔が見れて嬉しいのです。」
坊っちゃまが笑ってくれるだけで幸せだ。
坊っちゃまは何故か嬉しいような悲しいような、そんな顔をしている。
悲しむ必要なんてないのに。私がずっとそばに居る。
「アイク、ありがとう。大好き」
こちらを見て頬を赤くして微笑みながらそう言われれば私は涙をこらえることに必死だった。
「私も、坊っちゃまが大好きですよ。」
坊っちゃまへの忠誠と愛を込めて。
恥ずかしそうに照れ笑いする坊っちゃまの手を握るとそのまま抱きしめられた。
ぐす、と聞こえたのは坊っちゃまの鼻をすする音だ。
泣かなくていいのですよ。私はずっと傍にいます。
今は信じていただけなくても。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!
雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。
共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。
《キャラ紹介》
メウィル・ディアス
・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き
リィル・ディアス
・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも
レイエル・ネジクト
・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き
アルト・ネジクト
・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。
ーーーーー
閲覧ありがとうございます!
この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください!
是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定
(pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
最初が「プロローグ」ではなく「エピローグ」なのはあえてですか?
コメントありがとうございます🙇♀️
申し訳ございません、盛大に間違えておりました!ご指摘いただきありがとうございます.ˬ.)"
1回目はわかるんやけど、その男が彼を何回も恨み続けるのは何故(*´д`)?
コメントありがとうございます🙇♀️
そちらも書いていく予定ですのでお待ちくださいませ!