愛されたいだけなのに

まさお

文字の大きさ
11 / 11
閉じこもりノア

10.

部屋に戻ってベッドへと腰かけるように僕を座らせる。
僕は大人しくそれに従ってアイクを見る。

「怪我は?どこか痛い?本当にごめんなさい。」 

「坊っちゃま。私ことすみません。怖い思いをさせてしまいました。」

僕は首を振って否定する。

「アイクは僕のために誰も外に出ないようお願いしてくれたんでしょ?」

「しかし………」

それ以上は言わせないように口に手を置いた。
アイクは何も悪くない。
誰も、悪くないんだ。

僕が早く大丈夫にならなきゃ。

「アイク、早くお医者さんの所へ行って。」

先程から足首が痛むのか、右足を引きずっていたのが見えた。

「……すみません、坊っちゃま。」

失礼します、と言ってアイクは外へ出ていった。


1人になるとベッドの上で膝を抱えて顔を埋める。
僕のせいでアイクに怪我を負わせてしまった。

あの時、驚いてしまった。外に出て、フロリスタンさんと話ができて気が大きくなっていた。
このまま誰にも会わずに部屋に帰れると思っていたところに2人が出てきて、僕は心の準備ができていなかった。
フラッシュバックする過去の記憶。
2人はそんな事しないってわかっていても恐怖心は拭えず。
パニックになってここから逃げなきゃと思った。
後ろが階段だったことも忘れて駆け出したら僕は階段から落ちていた。

そのとき、この人生はここで終わりなんだと思った。

だけど、アイクが身をていして守ってくれた。
だから僕は怪我ひとつ無くこうして生き延びている。

涙がポタリと落ちる。

アイクに怪我させてしまったこと、2人に失礼な態度を取ってしまったこと、僕を助けてくれる人がいてくれたこと、自分の情けなさに。

色んな感情がごちゃまぜになって涙として出たきた。

僕は何一つ出来なくて、頑張って外に出たのにもうあの扉を開くことすら怖く感じている。
情けない。
でも怖い。やっぱり外は怖い。
アイクがいないと何も出来ない。

すんすん、とすすり泣いているとドアをノックする音が聞こえた。

「俺です、フロリスタンです。」

母様とのお話が終わったのか僕の部屋に来てくれていた。
涙を拭って扉を開ける。

「ノア様、大丈夫ですか?」

「僕は、大丈夫。アイクが……」

「あぁ、泣かないで…!これ良かったら使ってください」

そう言ってバックから取り出したのはクリームの入った小瓶だ。

「これ、草花を練り込んで作った薬です。
怪我した部分に塗れば多少は効果あるかと。草花は薬にもなるんですよ。」

受け取り、小瓶の蓋を開ける。
ほんのりと甘い花の匂いがする。

「あとこれはハーブです。ハーブティにして飲むと心が落ち着きます。」

「こんなに沢山……。ありがとう。」

「いえ!お役に立てるか分からないですが……。アイクさんにもよろしくお伝えください。」

では、とお辞儀をして帰っていくフロリスタンさん。
アイクが戻ってきたらこのクリームを渡そう。
ハーブティもアイクと一緒に飲みたい。

前にアイクに書庫から取ってきてもらった花の図鑑を取り出して薬用になる草花やハーブの名前を探す。

「あ、これだ。」

カモミールやラベンダー。
ハーブティにすると不安やストレスの解消、不眠の解消に効果的。

キンセンカやヒナギクは塗ると怪我した部分の保護や修復に効果的。

フロリスタンさんは花の知識が豊富で凄い。
薬用として使えるように調合もできるのか。

他にも使える草花はないかと調べていたらいつの間にか夕方になっていた。
あれから4時間は経ったと思う。
まだアイクは姿を表さなかった。

それだけ大怪我だったのだろうか。
急に不安になって外に行こうかとドアノブに手を触れた。
だけど手が震えて怖くて結局何も出来ず、外に出ることは諦めた。

庭園を眺めたり本を読んだりベッドでゴロゴロしたり、アイクを待ったけど一向に帰ってくる様子がない。

それほど重症だったのだろうか。
意識がないとか?
やっぱり気になる。意を決してドアノブに手をかけようとしたー

コンコン
「坊っちゃま、入りますよ」

その時、アイクの声が聞こえた。
驚いて体が跳ね上がる。
勢いよくドアを開けるとアイクが立っている。

「アイク……っ」

僕はアイクに抱き着く。
良かった、動けてる。

「坊っちゃま、すみません。心配おかけしました。」

アイクがしゃがんで僕と同じ目線になる。

「アイク、怪我させてごめんなさい。」

「坊っちゃまは何も悪くありませんよ。
私こそ怖がらせてしまって申し訳ございません。」

「ううん……。2人にもごめんって伝えて……。」

まだ2人に会う勇気はなくて、アイクに伝える。

「…本当は坊っちゃまが帰られるまで出ないで欲しいと伝えていたのですが……。久しぶりに見る坊っちゃまの姿に喜んでいたようで……。」

喜んでくれていたのか。
僕と少ししか面識がないのに、2人は僕のことを待ってくれていたんだな。
ますます悪いことをしてしまったな、と落ち込む。

「ご主人からも謝罪がありました。
2人をちゃんと見ていなかった、と。」

「リル兄様もエルも父様も…誰も悪くないよ。
僕がこんなだから……みんなに迷惑かけた。」

「坊っちゃまだって悪くありません……!
勇気を出して外に自ら出れたんです。
すごい進歩ですよ。」

僕の頭を撫でてアイクは褒めてくれた。
アイクに撫でられるのは好きだ。

「ぁ、そうだ。フロリスタンさんがこれ。」

先程貰った薬用のクリームをアイクに渡す。

「怪我に効く草花を使って作ったクリームだって。怪我した場所に塗れば効くはず。
あとハーブ。ハーブティにして後で一緒に飲もう?」

「こんなに沢山。またお礼を言わなくてはならないですね。
坊っちゃまもありがとうございます。」

さて、夕食にしましょう。と僕達はテーブルへ向かう。
やっぱり足は痛むのか庇うようにして歩いている。

「足痛い?」

「えぇ、少し捻っただけです。大丈夫ですよ。」

「大丈夫じゃない。僕には動かないようにって言ったのに。アイクもなるべく動いちゃダメ。」

「ふふ、そうでしたね、気をつけます。」

アイクは何故か嬉しそうにしながら夕食の準備を始めた。
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

なお
2026.04.26 なお

いつも次が出るのをいつも楽しみにしてます(≧∀≦)ノアの切ない気持ちや大好きな人に殺されてしまうなんて辛いけど(TдT)ノアが何度も回帰してるのはノアが幸せになるためであってほしい(TдT)って願ってます。
次回楽しみに待ってます!ノア頑張れ〜!!

2026.04.26 まさお

コメントありがとうございます!
ノアが幸せになれるよう頑張ります!

解除
こねこちゃん
2026.04.23 こねこちゃん

ブランが多分振り向いてくれない好きな人の名前ですね。
一度目、弟の婚約者を好きになり、無理矢理婚姻、その後異世界人来訪、ブランと異世界人恋に落ちる、ノアは嫉妬により暴力的行為をして絞首刑にされる。
2度目、いい子にしてたらブランの婚約者になり婚姻。異世界人来訪ブラン恋に落ちる。ノア離縁とともに自害。
3度目、弟がブランと婚姻になる。ずっとラブラブ。今回は異世界人に見向きもせず。異世界人来訪、兄の婚約者になる。ブランの屋敷に呼ばれる。家族勢揃い、弟殺しの嫌疑をかけられ、ブランと兄に処刑される。
やり直しでブランのいいような人生みると彼は記憶持ちですよね、そしてノアを憎んでる。3度目に父母弟協賛で兄自身が処刑してるのが救いが無い。同じ事になった時またノアを簡単に処刑するよね、ノア引きこもってないで逃げて欲しい。

解除
おか
2026.04.23 おか

めちゃ面白いです!更新楽しみにしてます!

2026.04.26 まさお

コメントありがとうございます!
更新頑張っていきます🙇‍♀️

解除

あなたにおすすめの小説

愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!

雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。 共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。 《キャラ紹介》 メウィル・ディアス ・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き リィル・ディアス ・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも レイエル・ネジクト ・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き アルト・ネジクト ・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。 ーーーーー 閲覧ありがとうございます! この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください! 是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―

真紀
BL
【第ニ楽章完結】目が見えない兄と、彼を一人遺して死にゆく弟の物語。 死んだ弟の角膜で、光(コウ)は視力を得た。見えたのは、涙をこらえる親友の顔。「和はおまえが大嫌いだった。憎んでた。だからおまえに目をくれたんだよ」光が歌をやめたのは、その日からだ。 あの人が泣きながら殴るたび、光は願う。「どうか明日は、早く壊れてしまえますように」と。 光は音楽を捨て、達哉は涙を隠せないまま、二人は同じ世界に立ち続ける。 これは、赦しのない世界で、それでも生きようとする者たちの物語。 《第二章》盲目の光が、最愛の弟を失うまでの日々を書いています。ブロマンス寄りですがBL好きな方に読んで欲しい作品です。「ノンケを堕とすノンケ」が好物の方、ぜひどうぞ。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品