100 / 155
5章.盗賊見習いと竜見習い
7.
しおりを挟む
リアリはそろそろ頃合いかもしれないと思っていた。ハレンパルスを出発した直後から、サントたちの元から離れる事も出来たが、特に行く当てもなく、別れなければいけない特別な理由も無かったため、行動を共にしていた。でも、そろそろ、独自の道を進んだ方が良いのではないかと考えていた。
自身の実験による一連の出来事で義理を感じている訳では無かった。そういう事を気にする自分ではないはずだと思っていた。それでも、何となくリラの事は気になっていて、何となく義理を感じているのかもしれないと思っていた。その義理も、ここ何度かの偵察で果たしていると思う。それだったら、今が適切な時機かもしれないと思っていた。
ひとりになって、何をするのかどこに行くのかと言うのは、決まっている訳では無かった。ただ、竜となった自分の力を試してみたいという気持ちは強かった。手始めにどこまで世界を巡れるのかを試してみるのも良いかもしれない、そんな風に思っていた。ただ、竜となった自分は人と関わる事が難しくなるという気持ちはあった。
さすがにこの体で、都市に潜入する事は出来ないだろう。そういう点では、サントたちと行動を共にする利点はあった。それが躊躇している一番の理由であると、自分自身では思っていた。それだったら、このまま、一緒にいても良いと思う。
これから向かう、アリアドットにも興味が無いわけでは無かった。ドレロが行っていた研究がどうなっていたのかには、さほど興味がわかなかったが、その研究が他にどんな事と結びつこうとしていたのかは、多少興味があったからだ。
そう思うと、サントたちと離れなくてすむ、より正確に言うと、リラと離れなくてすむとホッとする自分と言うのもいて、戸惑ってしまう。これでは、子供のようだと思う。自身の子供の頃、ハレンパルスを後にし、ハレンパルスに戻ってくるまでの事を思い出しそうになって首を振った。
(竜になった自分にはもう関係ない話だ)
そう思う。こういう迷うような感情はいつ以来だろうか。もしかして、竜になりたての自分は若い頃の自分と重なるのかもしれないと、苦々しい気持ちになった。
竜に憧れていた幼い気持ち、ソマとの約束、バナとの再会、いろいろな気持ちが混ざってくる。そういうのを断ち切るためにも、離れなければいけないと思った。同時に、そういう気持ちをわざわざ断ち切る必要があるのかも悩む。自分では認め無くない気もしていたが、リラに感じる安心感を失うのも怖い気がしていた。
自身の実験による一連の出来事で義理を感じている訳では無かった。そういう事を気にする自分ではないはずだと思っていた。それでも、何となくリラの事は気になっていて、何となく義理を感じているのかもしれないと思っていた。その義理も、ここ何度かの偵察で果たしていると思う。それだったら、今が適切な時機かもしれないと思っていた。
ひとりになって、何をするのかどこに行くのかと言うのは、決まっている訳では無かった。ただ、竜となった自分の力を試してみたいという気持ちは強かった。手始めにどこまで世界を巡れるのかを試してみるのも良いかもしれない、そんな風に思っていた。ただ、竜となった自分は人と関わる事が難しくなるという気持ちはあった。
さすがにこの体で、都市に潜入する事は出来ないだろう。そういう点では、サントたちと行動を共にする利点はあった。それが躊躇している一番の理由であると、自分自身では思っていた。それだったら、このまま、一緒にいても良いと思う。
これから向かう、アリアドットにも興味が無いわけでは無かった。ドレロが行っていた研究がどうなっていたのかには、さほど興味がわかなかったが、その研究が他にどんな事と結びつこうとしていたのかは、多少興味があったからだ。
そう思うと、サントたちと離れなくてすむ、より正確に言うと、リラと離れなくてすむとホッとする自分と言うのもいて、戸惑ってしまう。これでは、子供のようだと思う。自身の子供の頃、ハレンパルスを後にし、ハレンパルスに戻ってくるまでの事を思い出しそうになって首を振った。
(竜になった自分にはもう関係ない話だ)
そう思う。こういう迷うような感情はいつ以来だろうか。もしかして、竜になりたての自分は若い頃の自分と重なるのかもしれないと、苦々しい気持ちになった。
竜に憧れていた幼い気持ち、ソマとの約束、バナとの再会、いろいろな気持ちが混ざってくる。そういうのを断ち切るためにも、離れなければいけないと思った。同時に、そういう気持ちをわざわざ断ち切る必要があるのかも悩む。自分では認め無くない気もしていたが、リラに感じる安心感を失うのも怖い気がしていた。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる