竜探しのお話

hachijam

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5章.盗賊見習いと竜見習い

14.

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自分の体が転がっているのを理解して、コトは悔しがった。あの魔物にしてやられたと思う。このままだとまずい、あの魔物は本拠地を狙っている。その姿が本拠地に向かっているのをコトは見逃さなかった。幸いにして、体は底に落ちる前に止まった。

「くそっ」

そう言って、自分の気持ちを奮い立たせた。あちこちぶつけて体は痛むが大きな怪我は無いようだ。今から行って間に合うか分からなかったが、すぐに向かわなければならない。何しろ、ようやく任された見回りの役目なんだ、その責任を果たさないといけないと感じた。焦って足が滑る中、ようやく元の場所まで上がると、そのまま、本拠地に向かって走り始めた。

その時、ヒヤッとした、冷たい気配を感じた。まるで心臓を何かで突き刺すような感じで胸が苦しくなった。最初に魔物に会う前に感じた怖れとはまた違った恐怖だった。それは鋭利な刃物を突き付けられたような、分かりやすい恐怖だった。一瞬、足がすくむが、それで立ち止まってはいけないと思った。自分がこの盗賊団を救わなければいけない、そうコトは感じていた。



リアリはどう盗賊団を襲撃するかを考えていた。炎で焼き尽くすのが手っ取り早く、竜としては相応しい気がしたが、それだと大騒ぎになる可能性もある。今回の襲撃で一番避けないといえないのは、襲撃が周囲にばれないようにする事だった。もし、他の盗賊団にその事が分かれば大事になってしまう。それだけでは無い、サントたちにばれないようにすることが最も大事だった。

ばれてしまったら、リラは自分を許さないだろう。それは避けたかった。自分の心をどう考えて良いのか分からなかったリアリだが、その時のそれは偽らざる心境だった。

だったらどうすれば良いか。咆哮を浴びせるのが一番だろう。それだったら危険回避のためだったと言い訳が立つし、大した盗賊団でなければ、怯えて離散するだろう。もし、それで立ち向かって来れば、仕方ない。その時には、覚悟を決めるしかないと思った。

自分がどちらを望んでいるのだろうか。暴れたいという願望が心の奥底に眠っているような気もしてくる。それは力を手にした事によるものか、それとも竜としての本性なのか。それを確かめる良い機会かもしれないと思った。そして、それが分かった時、自分が本当にサントたちと共にいて良いのかどうか分かるのかもしれない。リアリはそんな事も考えていた。

すぐ目の前に盗賊団の本拠地らしき洞窟が見えてきた。
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