竜探しのお話

hachijam

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5章.盗賊見習いと竜見習い

18.

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「おい、誰かいるのか」

コトはその気配に気が付いて叫んだ。目の前にいる魔物では無い何かがいると感じた。それはここに向かうまでに感じたヒヤッとした冷たい気配だった。混乱する頭の中で、もしかして、兄貴を殺したのは魔物では無いのかと思い始める。

(この魔物だったら、もっと乱暴に、誰が見ても明らかに殺すのではと考える。だったら、この気配を持つ野郎か、いやまて、この魔物もグルな可能性もある。だったら、どうすれば良い。でも、この魔物、襲ってこないぞ。どうしてだ)

考えがグルグルと回って結論が出せないでいた。仲間を殺された怒り、冷たい気配に感じる恐怖、それらが混じって、訳の分からない感情になっていた。涙があふれ出てくる。

「くそ、くそ、くそ」

そう言って、自分の気持ちを奮い立たせた。

「おい、出て来い。そこにいるのは、分かっているんだ。お前が兄貴たちを殺したのか」

怒りを奮い立たせる事で自分の気持ちを保とうとした。



(騒ぐな)

リアリはそう思っていた。今、ここで隠れている者を挑発してどうするんだと思った。しかし、同時にそれでリアリは決断する事に決めた。目の前の人間を助けるというものだった。そこに至った経緯をリアリは説明する事は出来ない。ただ、そうしたいと思った。そして、そう決めれば最善の策を考える。

叫んだ声に反応した動きを感じる。今度は間違いないように自ら姿を現して、目の前の人間を仕留めるだと感じた。その時に姿を見る機会が訪れるかもしれない。偵察としての役割も忘れていなかった。じっとその瞬間を待つ。



コトは自分が勝てるとか勝てないとか、そういう事は考えていなかった。ただ、仇を取るというそれだけだった。だから、目の前に現れたら、ただ真っ直ぐに突っ込めば良いと思っていた。それを心に決める。その時、気配が動いたのを感じた。それに向かって突進しようと瞬間、背後から強烈な咆哮が聞こえた。そして、その瞬間、意識を失った。



リアリはその姿が見えるか見えないかのギリギリのところで最大限の咆哮を上げた。それは魂を砕くような竜の咆哮だった。予想もしなかったのだろう、目の前にいた人間はその咆哮に驚く間もなく意識を失い、倒れ込んでしまう。そして、殺気を放っていた者も、一瞬動きを止めた。その姿も一瞬だが見えた。気配からは微妙な戸惑いを感じる。

(今だ)

その瞬間を逃さないようにリアリは、倒れ込んだ人間の体を掴むと、無理矢理に外に出した。小さくても竜である。その力は大きい。
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