水悶

かなちょろ

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水悶

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 毎年夏になると思い出す。
 学生のころに体験したあの恐怖を……。

 ~10年前~

「今日からプール開きです。 みなさん水着に着替えてください」

 小学生の夏、汗をかいて授業を受けていた僕らはこの時間だけを楽しみにしていた。
 もちろん、泳げない子にはただ苦痛だったかも知れない。
 僕はもちろん泳げたから大歓喜!

 そんなある日……。

 クラスの子が溺れた。
 他の子が直ぐに気がついたので、問題はなかったけれど、僕のクラスはしばらくプールの授業は無くなってしまった。
 代わりに体育館での体育の授業。
 溺れた子は申し訳なさそうにしていたけどだれも責める事はしなかった。
 ただその事件の後、プールでよくない事が起きるようになっていた。
 他のクラスや違う学年でも溺れる子が何人か出ていたのだ。
 そのため、今学期のプールの授業は全面中止となった。

 ある日、学校の帰りに夕立が降り、びしょ濡れになるもプールが無い分テンションが上がる。
 折りたたみ傘を持ってるけど使わないで濡れながら走って帰っていると、僕と同じように傘を差さずびしょ濡れになっている男の子が立っていた。
 学年は僕と同じくらいかな?
 話しかけようとしたらその子はニヤリと笑って学校の方へ歩いて行ってしまった。
 その後、雨が降るとその子に出会うが一言も話さずに学校に向かって歩いて行く。
 その子の話しはクラスでも少しずつ広がって行くが、僕とは違って出会う子が女の子だったりする子もいるらしい……。

 雨が降った日、その子とすれ違うと不思議に思ってあとをついて行ったのだ。
 隠れながら着いて行くと、その子はやはり学校に入って行く。

「どこへ行くんだろう?」

 隠れて見ているとその子はプールに向かっていた。
 鍵がかかって開かないはずのプールの鍵を、その子は簡単に開けて入って行く。
 僕は走って追いかけてみると、その子は見当たらずプールサイドにもいない……。
 もしかして、溺れた!?
 なぜか溺れる子が多くて授業が中止になったくらいだ……その子が溺れていても不思議は無い!

 僕は先生を呼んでこようかと考えたけど、溺れているなら早く助けないと! その気持ちが強くて、鞄をプールサイドに置いて水に飛び込んだ!

 水の中で周りを見るけどその子はいない……。
 空気を吸うために水の上に上がろうとするも、水底に吸い込まれて上がれない……。
 まるでプールの栓が抜けてしまったようだ。

 僕は苦しいよりもパニックになり泳げない子と同じように手足をバタバタと動かしていた。
 これでは水面に上がれるわけが無かったが、パニックになっている僕は自分の手足がどう動いているかなんてわからなかった。
 それでも必死に泳ぎ水面から顔を出し助けを呼ぼうとプールサイドを見ると、さっきの子が僕の方を見つめていた。
 水に引き込まれながらこの子に「助けて!」 と叫ぶが雨音にかき消されているのか、その子は僕を見つめているだけで動かない。

 僕がなんとか泳ごうとすると、この子はゆっくりと近づいてくる。
 僕の上まで来たその子は、僕の頭を掴み水の中へ押し入れた!

 僕は頭を掴んでいる手を払いのけようとするが、その子の手を掴む事が出来ない。
 ガボガボと息を吐きながら手足をバタバタさせ水中に引き込まれると、水は渦を巻いて僕を引き込んでいく。
 周りは何も見えない暗い闇。
 息も苦しい!
 息吐き出してしまうと吸う事が出来ないから吐き出せずにしている事が苦しい。
 そして意識が段々と無くなっていく……。
 学校のプールがこんなに深いわけはないはずなのに、僕は暗い水底に沈んで行った……。

 その後の事は覚えていない。
 気がついたのは学校のベッドの上だった。
 プールの入口が開いている事に気がついた先生が確認しに来た時、僕が沈んでいる事に気がついて直ぐに救助してくれたようだ。
 幸い早く救助してくれたので助かったが、先生が気がつかなければ死んでいただろう……。
 なんでプールに入ったのかと聞かれて答えたが、僕の他には誰もいなかったと……。
 病院に運ばれて無事に退院し、学校に戻るとクラスメイトからの質問の嵐!
 これは説明が大変だった……。

 そしてまたある雨の日、僕はその子とすれ違った。
 すれ違った時、この子は「……お前じゃなかった……」 その一言だけ言って、振り向いた時には消えていた。

 あれからその子を見ていない。
 もしかしたらまだ誰かを探しているのかもしれない……。
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