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第1話 【オーロラの国】
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「今日も空は良い天気ね……はぁ……」
ため息を吐き、ベッドの上から窓の外を見上げるとそこは晴天。
私の心は曇天だ。
その理由……、……私は2ヶ月前交通事故に遭い入院している。
命に別状はなかったのだが、両足が動かなく病院のベッドで寝ているからだ。 今は車椅子で生活をしている。 せめて片足だけでも動けば松葉杖で済んだんだけど……。
リハビリを続けているけど、あとどの程度で歩けるようになるのだろう?
普通に歩いて走っていた時を思い出すと普通って大事なんだなと思う。
事故のことは親に任せてある。 相手も飛び出して来た子供を避けるためにハンドルを切ったら、その先に私がいたのだ。 だからその人を恨んではいない。 一生歩けなくなるわけではなさそうだし、お見舞いにも定期的に来てくれる.…でも会った事はないんだよね。
毎回私の好きな梨が入ったフルーツを必ず持って来てくれていたり小さなぬいぐるみを持ってきてくれたり……私はお構いなくって言ってるけど……私って小さな子に見えるのかな?
そんなある日の夜、なんだか睡眠が浅い夜を過ごしていると部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえる。 面会時間は終わってるし、見回りの看護師さんかな?
「……どうぞ」
まだ視界がボヤける位は寝ぼけている時、パタパタと足音を立てて入って来たのは……、……ん? ペンギン? しかもタキシードを着てる。
「ほら、急いで、時間がありませんぐぁ」
え!? しゃべった? しかも日本語を!?
ペンギンの後ろから入って来たのは、タキシードにシルクハットをかぶり、足音を立てずに二足歩行で杖を片手に持っている黒猫さん……、……ペンギンさんと話してる……。
夢ね……、これは夢だわ……。
夢と確信したつもりで目を数回こすり二度三度と見直す。 その間にペンギンは既に私のベッドの上まで上がって来ていた。
「貴女は【与島 玲子】さんで間違いないですぐぁ?」
「は、はい!」
語尾が気になるペンギンに話しかけられて驚いて声がうわずってしまった。
「よかった合っていたみたいぐぁね。 ご紹介が遅れました。 私はペンギンの【マカロニ】 そっちの黒猫は【ジャン】 それでは参りましょうぐぁ」
ペンギンに手を引っ張られているがどういうわけかさっぱりわからない。
「ちょ、ちょっと待って! 何が何だかわからないよ! 参るって何処に行くの? それに私は足が……」
「それなら心配ないぐぁ……な、ジャン」
「そうだね、丁度良くそこにある物を使えば良いだけさ」
黒猫のジャンが杖を軽く振ると、私の体は浮き上がり車椅子の上に下ろされた。
「いつもの道を頼むよマカロニ」
「任せてくれ。 それじゃ行くぐぁ」
「え!? わ! わわ!!」
黒猫のジャンが杖を振ると部屋の窓が開き、ペンギンのマカロニさんが窓の外へ飛び出した。
「危ない!」
私は焦って叫んだが……窓からひょこっと顔を出した。
「大丈夫ですぐぁ。 ささ、早く参りましょうぐぁ」
「それでは玲子さん、あのオーロラの向こうまで参りますよ」
空にはオーロラが見える。
日本のこの場所じゃオーロラなんて見えるはず無いのに……。
ジャンさんは杖を大きく振り、私の乗った車椅子を浮かせると窓の外へと運ぶ。
「ーーー!!」
私は声にならない叫び声を上げた。
だってここ3階だよ。 目だって閉じちゃうよ。
「怖がらないで大丈夫ですよ」
「そうそう、私がちゃーんと道を作ってるぐぁ」
マカロニさんは腹ばいで滑るように空を進むと虹のようにキラキラと輝く道が現れ、ジャンさんは私の車椅子を押しながら飛んでいる。
「上を見てごらんよ」
ジャンさんに言われたように空の上を見ると、オーロラが星の光を反射して綺麗に輝きゆらゆらと揺れている。
マカロニさんはそのオーロラに向かって進んでいるようだ。
「我らの国はあのオーロラの彼方にあるのでぐぁ!」
「うわあ~! 綺麗……、……え~と、ジャンさん」
「なんだい?」
「貴方達は何者なんです? なんで私を?」
「そうですね、私とマカロニはあのオーロラの向こう側にある国【ノザルーン】から参りました。 玲子さんを選んだのは……おっと、もう着きますね。 続きはまた後でお話ししましょう」
ジャンさんが杖でオーロラを指し示すと、私達はそのオーロラのカーテンの中へと入って行った。
「わあ……!」
さっきまで夜だったのに、オーロラを越えた先はお昼のように明るく、大きなお城と光り輝く町が浮かんでいる。
「すごぉい! まるでおとぎ話みたい!」
「あのお城が目的地です」
そのお城は西洋風でますますおとぎ話っぽく、町の明かりも煌びやかでこれが空に浮いてるなんてとても思えない。
周りをキョロキョロと見ていると、マカロニさんがお城の一角に降りて行く。
「私は用がありますので、これで失礼しますぐぁ」
マカロニさんは降りるとパタパタと走って何処かへ行ってしまった。
「私達も降りますよ」
お城に降りるとジャンさんは車椅子を押して中に入る。
「……すごぉい……」
私は思わず見上げてしまう。 お城の中は今まで見た事もないほど絢爛豪華で煌びやかで、本当にこれ現実なのかしら?
お城の兵士さんは鎧を身に纏ったマカロニさんと同じペンギン。 たまにトサカの毛? が飛び出しているペンギンもいる。 頑丈そうな鎧を身につけてるけど、どの子も可愛く見えてしまう。
歩き方、まんまペンギンだし。
そんな私はクスクスと声を殺して笑っていると、みんなにジロジロ見られる。
おっと、気をつけないとね。
ジャンさんに連れられて行くと、大扉の前に辿り着く。
「さあ、着きましたよ。 この扉の先にこの国の女王様がおります。 お話を聞いてあげて下さいね」
「え!? 女王様? 話ってなに?」
「それは女王様から伝えられると思いますよ」
女王様ってペンギンの女王様なのかな?
まだ心の準備が出来ていないのに、大扉はゆっくりと開きジャンさんは車椅子を引いて中へと入って行く。
部屋の中はこれまた素晴らしく、まさに王座の間と呼べるだろう。
あの玉座に座っている方が女王様ね。
綺麗なお召し物に豪華な王冠、間違いない。
「ようこそ、ノザルーン王国へ。 お待ちしておりましたよ」
柔らかい物腰、ブロンドで輝く髪、美しい顔立ちに綺麗な瞳……、……綺麗……と見惚れてしまう。
女王様はペンギンじゃ無かったのがちょっと残念だけど……。
挨拶も忘れて女王様に見惚れていると、ジャンさんが「んん……」と喉を鳴らして教えてくれた。
「あ! は、初めまして、与島 玲子です」
ガチガチに緊張していたためか、声がうわずってしまった。
「ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」
笑う姿も上品な女王様は急に深刻な顔をして私がここに招かれた理由を話し始めた。
「玲子さんに来ていただいた理由をお話をしましょう」
「はい」
「我が国へ来ていただいたのは、私の息子である王子を助けて欲しくお呼びいたしました」
「王子様?」
「そうです。 息子は闇の呪いによって眠らされてしまい、玲子さんにはその呪いをといて欲しいのです」
「私が呪いを? ……、……ムリムリムリ! 無理ですよ! 私、呪いなんて解いた事無いですし、そんな力も無いです!」
「いえ、これは玲子さんしか出来ない事なんですよ」
「私しか出来ないって……どう言う事ですか?」
私はなんの力も無い、いたって普通の女子。
呪いを解くなんてとても出来る訳がない……、でも王子様ってのは気になる……。
「詳しくはそちらにいるジャンが話してくれるでしょう」
「は、はい……」
女王様に大変な頼まれごとをされ、挨拶もそこそこに部屋からジャンさんと出る。
そして思う。 何故か「任せて下さい」なんて言ってないのに、いつの間にか王子様の呪いを解く事になっている事に気がついた……。
あれ~? なんで?
「それでは呪いを解きに参りましょうか!」
「いやいや、ちょっと待ってよ! 私まだ何にもわからないんだけど?」
「そうでしたね、まずは呪いについて話しましょう」
ジャンさんに連れられて客室に通された。
ここも色々凄いな~。
「さて、まずは呪いの事から話します……。 少し前、突然この城に闇の王と名乗る者が現れたのです。 この国を奪いに闇の勢力が襲ってきました。 戦いの末、女王様のお力で闇の王を倒したのですが……王子に呪いをかけて消えたのです。 その呪いは……我々は勿論、女王様のお力でも解く事は叶わず、呪いを解く事が出来るのは地上の人間だけとわかったのです」
「それが……私ですか?」
「そうです」
「人間でいいなら私の他にも沢山いますけど?」
「普通の方ではダメなんですよ。 心に光が無いと……」
「心に光?」
「そうですね」
ジャンさんは可愛い顔で笑顔を作ると更に可愛い。
でも心に光なんてどういう事なんだろう?
「玲子さんしか出来ないのです。 お願いします」
「……わかりました……私にしか出来ないってのはよくわからないですけど……そうですね、何処まで出来るかわかりませんがやってみます」
「ありがとうございます! まずは町に行きましょう」
「町ですか?」
「呪いを解く鍵はこの国に散らばっているのです。 だからまずは町で何か変わった事は無いか聞いてみましょう」
煌びやかなお城を後にして町へ行く事にした。
町の住人は沢山のペンギン達。
子供のペンギンは親ペンギンと手をつないで歩いていたり、荷車を引っ張っているペンギンがいたりと見てるだけで癒される~……。 だけど服を着ているのは違和感がある。
そんな癒される町だけど、車椅子に乗っている私が珍しいようで注目を浴びてしまっている。
「ママー、あれなに~?」
「なにかしらね~、あ! あんまり見ちゃいけません。 ほら早く行きますよ」
ペンギンの親子はそそくさといなくなった。
あのペンギンのお母さん私じゃなくてジャンさんを見てた?
「どこに向かうんですか?」
「もう少し先に行った所ですよ」
連れて行ってもらった場所は町外れにある一軒のお家。
ジャンさんがノックをすると、家から出て来たのは……やはりペンギンさん。
「どちらさんかしら?」
「こんにちは」
「あら、ジャンさんじゃない。 それと……?」
エプロンを着けているペンギンさんは私を見て急いで家の中に招き入れた。
「初めましてお嬢さん」
「は、初めまして、与島 玲子です」
「私はサラです。 マカロニの妻ですわ」
「マカロニさんの奥さん!?」
マカロニさん結婚してたんだ!?
「それにしてもジャンさん、お城から出てくるなんてどうなさったの?」
「実はね……」
ジャンさんはサラさんにゴニョゴニョと説明している。 私には全く聞こえない……。
「……そう、それなら……最近町の東に遺跡が現れたって噂があったわよ」
「東側ですね、ありがとうございます」
「いいのよ、マカロニに会ったら早く帰ってくるように伝えて下さいね」
「はい、任せて下さい」
ジャンさんは返事をして家を後にした。
「今度は何処に向かうんですか?」
「町の東側にある遺跡に向かいますよ」
ジャンさんはステッキを振るうと、車椅子ごと飛んで向かう。
それを町のペンギンさん達はチラッと見てはあまり良い顔をしていないように見えた。 町のペンギンさん達の行動が気になるし、東側に向かいながら私はジャンさんに気になる事を聞いてみた。
「あの、ジャンさんは何者なんですか? ジャンさんのような猫さんは他に見当たらないし、この町にはペンギンさんしかいないみたいだけど……?」
「それはまあ……いずれお話しします……、……さあもう少しで着きますよ!」
なんとなく悲しい目をしたジャンさんの魔法で飛んで行くとあっという間に東側の遺跡前に辿り着いた。
「ここのどこに鍵があるんですか?」
「こちらに」
ジャンさんの杖が光り遺跡を照らすと、ストーンヘンジみたいな遺跡には人が描かれていた。
その首には鍵がぶら下がっているように見える。
「それでは玲子さん、この遺跡の鍵に触れてみて下さい」
ジャンさんに言われるまま、そっと遺跡に触れてみると、突然輝き目を閉じてしまった。
「まぶしっ!」
光が消えると、私の手の中にはオーロラのように輝く鍵が握られていた。
「やはり玲子さんで間違いなかったです。 その鍵は呪いを解くために必要な物です」
「これが……? えと、もうこれで呪いは解けるんですか?」
「いえ、まだですね。 ここからその鍵に呪いを解く力を与えられる場所を探さないといけません」
「そうなんですか……、あの、私はいつ戻れるの?」
「呪いを解いたらですよ」
それじゃ夜が明けた時、お医者さんや見舞いに来た親がベッドにいない私を心配してしまうのではないかと思っていたら、ジャンさんが気がついてくれた。
「もしかしていなくなった玲子さんを他の方が心配してしまうと思っていますか?」
「はい……」
「それならご安心を。 この国と地上とでは時間の流れが違います。 こちらに来た時と同じ時間に戻れますよ」
「そう、それならよかったわ」
「それでは、私は次の場所を探しに行かなくてはいけませんので、玲子さんはマカロニの家で待っていてくださいね」
鍵を首にかけてジャンさんと共にマカロニさんの家へと戻る。
戻るや否やジャンさんはサラさんに私をたくして直ぐに飛び立ってしまった。
私はマカロニさんの家でお世話になる事になった。
ため息を吐き、ベッドの上から窓の外を見上げるとそこは晴天。
私の心は曇天だ。
その理由……、……私は2ヶ月前交通事故に遭い入院している。
命に別状はなかったのだが、両足が動かなく病院のベッドで寝ているからだ。 今は車椅子で生活をしている。 せめて片足だけでも動けば松葉杖で済んだんだけど……。
リハビリを続けているけど、あとどの程度で歩けるようになるのだろう?
普通に歩いて走っていた時を思い出すと普通って大事なんだなと思う。
事故のことは親に任せてある。 相手も飛び出して来た子供を避けるためにハンドルを切ったら、その先に私がいたのだ。 だからその人を恨んではいない。 一生歩けなくなるわけではなさそうだし、お見舞いにも定期的に来てくれる.…でも会った事はないんだよね。
毎回私の好きな梨が入ったフルーツを必ず持って来てくれていたり小さなぬいぐるみを持ってきてくれたり……私はお構いなくって言ってるけど……私って小さな子に見えるのかな?
そんなある日の夜、なんだか睡眠が浅い夜を過ごしていると部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえる。 面会時間は終わってるし、見回りの看護師さんかな?
「……どうぞ」
まだ視界がボヤける位は寝ぼけている時、パタパタと足音を立てて入って来たのは……、……ん? ペンギン? しかもタキシードを着てる。
「ほら、急いで、時間がありませんぐぁ」
え!? しゃべった? しかも日本語を!?
ペンギンの後ろから入って来たのは、タキシードにシルクハットをかぶり、足音を立てずに二足歩行で杖を片手に持っている黒猫さん……、……ペンギンさんと話してる……。
夢ね……、これは夢だわ……。
夢と確信したつもりで目を数回こすり二度三度と見直す。 その間にペンギンは既に私のベッドの上まで上がって来ていた。
「貴女は【与島 玲子】さんで間違いないですぐぁ?」
「は、はい!」
語尾が気になるペンギンに話しかけられて驚いて声がうわずってしまった。
「よかった合っていたみたいぐぁね。 ご紹介が遅れました。 私はペンギンの【マカロニ】 そっちの黒猫は【ジャン】 それでは参りましょうぐぁ」
ペンギンに手を引っ張られているがどういうわけかさっぱりわからない。
「ちょ、ちょっと待って! 何が何だかわからないよ! 参るって何処に行くの? それに私は足が……」
「それなら心配ないぐぁ……な、ジャン」
「そうだね、丁度良くそこにある物を使えば良いだけさ」
黒猫のジャンが杖を軽く振ると、私の体は浮き上がり車椅子の上に下ろされた。
「いつもの道を頼むよマカロニ」
「任せてくれ。 それじゃ行くぐぁ」
「え!? わ! わわ!!」
黒猫のジャンが杖を振ると部屋の窓が開き、ペンギンのマカロニさんが窓の外へ飛び出した。
「危ない!」
私は焦って叫んだが……窓からひょこっと顔を出した。
「大丈夫ですぐぁ。 ささ、早く参りましょうぐぁ」
「それでは玲子さん、あのオーロラの向こうまで参りますよ」
空にはオーロラが見える。
日本のこの場所じゃオーロラなんて見えるはず無いのに……。
ジャンさんは杖を大きく振り、私の乗った車椅子を浮かせると窓の外へと運ぶ。
「ーーー!!」
私は声にならない叫び声を上げた。
だってここ3階だよ。 目だって閉じちゃうよ。
「怖がらないで大丈夫ですよ」
「そうそう、私がちゃーんと道を作ってるぐぁ」
マカロニさんは腹ばいで滑るように空を進むと虹のようにキラキラと輝く道が現れ、ジャンさんは私の車椅子を押しながら飛んでいる。
「上を見てごらんよ」
ジャンさんに言われたように空の上を見ると、オーロラが星の光を反射して綺麗に輝きゆらゆらと揺れている。
マカロニさんはそのオーロラに向かって進んでいるようだ。
「我らの国はあのオーロラの彼方にあるのでぐぁ!」
「うわあ~! 綺麗……、……え~と、ジャンさん」
「なんだい?」
「貴方達は何者なんです? なんで私を?」
「そうですね、私とマカロニはあのオーロラの向こう側にある国【ノザルーン】から参りました。 玲子さんを選んだのは……おっと、もう着きますね。 続きはまた後でお話ししましょう」
ジャンさんが杖でオーロラを指し示すと、私達はそのオーロラのカーテンの中へと入って行った。
「わあ……!」
さっきまで夜だったのに、オーロラを越えた先はお昼のように明るく、大きなお城と光り輝く町が浮かんでいる。
「すごぉい! まるでおとぎ話みたい!」
「あのお城が目的地です」
そのお城は西洋風でますますおとぎ話っぽく、町の明かりも煌びやかでこれが空に浮いてるなんてとても思えない。
周りをキョロキョロと見ていると、マカロニさんがお城の一角に降りて行く。
「私は用がありますので、これで失礼しますぐぁ」
マカロニさんは降りるとパタパタと走って何処かへ行ってしまった。
「私達も降りますよ」
お城に降りるとジャンさんは車椅子を押して中に入る。
「……すごぉい……」
私は思わず見上げてしまう。 お城の中は今まで見た事もないほど絢爛豪華で煌びやかで、本当にこれ現実なのかしら?
お城の兵士さんは鎧を身に纏ったマカロニさんと同じペンギン。 たまにトサカの毛? が飛び出しているペンギンもいる。 頑丈そうな鎧を身につけてるけど、どの子も可愛く見えてしまう。
歩き方、まんまペンギンだし。
そんな私はクスクスと声を殺して笑っていると、みんなにジロジロ見られる。
おっと、気をつけないとね。
ジャンさんに連れられて行くと、大扉の前に辿り着く。
「さあ、着きましたよ。 この扉の先にこの国の女王様がおります。 お話を聞いてあげて下さいね」
「え!? 女王様? 話ってなに?」
「それは女王様から伝えられると思いますよ」
女王様ってペンギンの女王様なのかな?
まだ心の準備が出来ていないのに、大扉はゆっくりと開きジャンさんは車椅子を引いて中へと入って行く。
部屋の中はこれまた素晴らしく、まさに王座の間と呼べるだろう。
あの玉座に座っている方が女王様ね。
綺麗なお召し物に豪華な王冠、間違いない。
「ようこそ、ノザルーン王国へ。 お待ちしておりましたよ」
柔らかい物腰、ブロンドで輝く髪、美しい顔立ちに綺麗な瞳……、……綺麗……と見惚れてしまう。
女王様はペンギンじゃ無かったのがちょっと残念だけど……。
挨拶も忘れて女王様に見惚れていると、ジャンさんが「んん……」と喉を鳴らして教えてくれた。
「あ! は、初めまして、与島 玲子です」
ガチガチに緊張していたためか、声がうわずってしまった。
「ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」
笑う姿も上品な女王様は急に深刻な顔をして私がここに招かれた理由を話し始めた。
「玲子さんに来ていただいた理由をお話をしましょう」
「はい」
「我が国へ来ていただいたのは、私の息子である王子を助けて欲しくお呼びいたしました」
「王子様?」
「そうです。 息子は闇の呪いによって眠らされてしまい、玲子さんにはその呪いをといて欲しいのです」
「私が呪いを? ……、……ムリムリムリ! 無理ですよ! 私、呪いなんて解いた事無いですし、そんな力も無いです!」
「いえ、これは玲子さんしか出来ない事なんですよ」
「私しか出来ないって……どう言う事ですか?」
私はなんの力も無い、いたって普通の女子。
呪いを解くなんてとても出来る訳がない……、でも王子様ってのは気になる……。
「詳しくはそちらにいるジャンが話してくれるでしょう」
「は、はい……」
女王様に大変な頼まれごとをされ、挨拶もそこそこに部屋からジャンさんと出る。
そして思う。 何故か「任せて下さい」なんて言ってないのに、いつの間にか王子様の呪いを解く事になっている事に気がついた……。
あれ~? なんで?
「それでは呪いを解きに参りましょうか!」
「いやいや、ちょっと待ってよ! 私まだ何にもわからないんだけど?」
「そうでしたね、まずは呪いについて話しましょう」
ジャンさんに連れられて客室に通された。
ここも色々凄いな~。
「さて、まずは呪いの事から話します……。 少し前、突然この城に闇の王と名乗る者が現れたのです。 この国を奪いに闇の勢力が襲ってきました。 戦いの末、女王様のお力で闇の王を倒したのですが……王子に呪いをかけて消えたのです。 その呪いは……我々は勿論、女王様のお力でも解く事は叶わず、呪いを解く事が出来るのは地上の人間だけとわかったのです」
「それが……私ですか?」
「そうです」
「人間でいいなら私の他にも沢山いますけど?」
「普通の方ではダメなんですよ。 心に光が無いと……」
「心に光?」
「そうですね」
ジャンさんは可愛い顔で笑顔を作ると更に可愛い。
でも心に光なんてどういう事なんだろう?
「玲子さんしか出来ないのです。 お願いします」
「……わかりました……私にしか出来ないってのはよくわからないですけど……そうですね、何処まで出来るかわかりませんがやってみます」
「ありがとうございます! まずは町に行きましょう」
「町ですか?」
「呪いを解く鍵はこの国に散らばっているのです。 だからまずは町で何か変わった事は無いか聞いてみましょう」
煌びやかなお城を後にして町へ行く事にした。
町の住人は沢山のペンギン達。
子供のペンギンは親ペンギンと手をつないで歩いていたり、荷車を引っ張っているペンギンがいたりと見てるだけで癒される~……。 だけど服を着ているのは違和感がある。
そんな癒される町だけど、車椅子に乗っている私が珍しいようで注目を浴びてしまっている。
「ママー、あれなに~?」
「なにかしらね~、あ! あんまり見ちゃいけません。 ほら早く行きますよ」
ペンギンの親子はそそくさといなくなった。
あのペンギンのお母さん私じゃなくてジャンさんを見てた?
「どこに向かうんですか?」
「もう少し先に行った所ですよ」
連れて行ってもらった場所は町外れにある一軒のお家。
ジャンさんがノックをすると、家から出て来たのは……やはりペンギンさん。
「どちらさんかしら?」
「こんにちは」
「あら、ジャンさんじゃない。 それと……?」
エプロンを着けているペンギンさんは私を見て急いで家の中に招き入れた。
「初めましてお嬢さん」
「は、初めまして、与島 玲子です」
「私はサラです。 マカロニの妻ですわ」
「マカロニさんの奥さん!?」
マカロニさん結婚してたんだ!?
「それにしてもジャンさん、お城から出てくるなんてどうなさったの?」
「実はね……」
ジャンさんはサラさんにゴニョゴニョと説明している。 私には全く聞こえない……。
「……そう、それなら……最近町の東に遺跡が現れたって噂があったわよ」
「東側ですね、ありがとうございます」
「いいのよ、マカロニに会ったら早く帰ってくるように伝えて下さいね」
「はい、任せて下さい」
ジャンさんは返事をして家を後にした。
「今度は何処に向かうんですか?」
「町の東側にある遺跡に向かいますよ」
ジャンさんはステッキを振るうと、車椅子ごと飛んで向かう。
それを町のペンギンさん達はチラッと見てはあまり良い顔をしていないように見えた。 町のペンギンさん達の行動が気になるし、東側に向かいながら私はジャンさんに気になる事を聞いてみた。
「あの、ジャンさんは何者なんですか? ジャンさんのような猫さんは他に見当たらないし、この町にはペンギンさんしかいないみたいだけど……?」
「それはまあ……いずれお話しします……、……さあもう少しで着きますよ!」
なんとなく悲しい目をしたジャンさんの魔法で飛んで行くとあっという間に東側の遺跡前に辿り着いた。
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「こちらに」
ジャンさんの杖が光り遺跡を照らすと、ストーンヘンジみたいな遺跡には人が描かれていた。
その首には鍵がぶら下がっているように見える。
「それでは玲子さん、この遺跡の鍵に触れてみて下さい」
ジャンさんに言われるまま、そっと遺跡に触れてみると、突然輝き目を閉じてしまった。
「まぶしっ!」
光が消えると、私の手の中にはオーロラのように輝く鍵が握られていた。
「やはり玲子さんで間違いなかったです。 その鍵は呪いを解くために必要な物です」
「これが……? えと、もうこれで呪いは解けるんですか?」
「いえ、まだですね。 ここからその鍵に呪いを解く力を与えられる場所を探さないといけません」
「そうなんですか……、あの、私はいつ戻れるの?」
「呪いを解いたらですよ」
それじゃ夜が明けた時、お医者さんや見舞いに来た親がベッドにいない私を心配してしまうのではないかと思っていたら、ジャンさんが気がついてくれた。
「もしかしていなくなった玲子さんを他の方が心配してしまうと思っていますか?」
「はい……」
「それならご安心を。 この国と地上とでは時間の流れが違います。 こちらに来た時と同じ時間に戻れますよ」
「そう、それならよかったわ」
「それでは、私は次の場所を探しに行かなくてはいけませんので、玲子さんはマカロニの家で待っていてくださいね」
鍵を首にかけてジャンさんと共にマカロニさんの家へと戻る。
戻るや否やジャンさんはサラさんに私をたくして直ぐに飛び立ってしまった。
私はマカロニさんの家でお世話になる事になった。
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