異世界最強勇者の逃亡生活 〜旅する仲間は俺の弟子〜

かなちょろ

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第1話【逃亡者】

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 陽が丁度真上に昇って来ている時間、俺は黒いフードを被り黒いマントを羽織って新しい酒場を訪れる。
 キイキイと音を立てて揺れる小さな扉。 西部劇でも良く見た扉だ。
 その扉を潜れば中はゴロツキ……、いや、大半は冒険者とか言う奴らだろう……。
 入って来た俺をそいつらは気にも留めない……ありがたいけどな。
 そしてカウンターで酒を注文する。
 常温の酒は美味くないが、この3年でだいぶなれた。
 そう、社会人だった俺は今から3年前に異世界に16歳の姿で召喚されたのだ。
 そして2年間は別の国の城で優雅に暮らしていたんだが……その国が滅んだのでこの1年、旅をしている。
 何故滅びたか……それにはあまり言いたく無い理由がある。

「お前旅のもんかあ?」

 突然背後から髪の無いツルンとした大男に声をかけられた。

「おい、あいつ……」 「ああ、やばいやつに声をかけられたな」 「可哀想に……」

 などと周りの微かな声が聞こえてくる。

「いいよなあ、旅をしながらあちこちで酒を呑めるんだからよ! 俺にも一杯ご馳走してくんねえか? なあ?」

 ツルびた男は顔を近づけてくる。
 鬱陶しい……。

「一つ聞いていいか?」
「あん?」
「その鬱陶しいハゲ頭をどうやったらどかしてくれるんだ?」
「なんだと! おい!」

 大男は俺の胸ぐらを掴み片腕で軽々持ち上げてしまう。
 
「てめえは有り金を出していけば怪我しなくてすむんだよ!」
「そうだったな、酒が呑みたかったんだよな? それなら奢ってやるよ」

 俺はカウンターから呑みかけの酒を取り、大男の頭からぶっかけてやる。
 滴り落ちる常温の酒を浴びて大男の顔が真っ赤に染まってくる。

「お? もう酔っちまったのか?」
「こっの! やろお!」

 ハゲの大男は片手で俺をぶん投げたが、俺は体勢を直してふわりと着地した。

「表に出ろ! ぶっ殺してやる!」
「やれやれ……」

 酒場の前に出ると、周りには野次馬が集まり始めた。
 あんまり目立ちたくはないんだけどな。

「ヘッヘッヘ、またこいつに血を吸わせてやる事になるとはよお」

 ハゲ大男は腰の袋から巨大な斧をおもむろに2つ取り出した。
 どうやらあの袋は特殊なアイテムボックスのようだけど……。
 俺はやる気なさそうにその場に棒立ち状態だ。

「ビビってんのか? 張り合いねえが……もう死ねぇ! ……え……? なんで俺の体が見えるんだ……?」

 ハゲの大男が2つの斧を振りかぶり突進して来た時、ハゲの大男の首は体から離れて地面に落ち血飛沫が舞う体も後に続いて倒れた……。
 こいつが向かって来た時、既に俺は剣を抜いて真空の刃を飛ばして首を落としていた。
 周りの野次馬達にも早過ぎてマントがひるがえっているようにしか見えていない。
 ようするに突然ハゲの大男の頭が切れて落ちたとしか見えないのだ。
 野次馬達は何が起きたのかわからず、静まり返っている。 その間に俺はさっさとその場を後にした。
 あ、酒代払うの忘れてた……、ま、いいか。

 俺がハゲの大男を殺した事はすでに町に広まってしまっているらしい。
 ハゲの仲間が探しているみたいだし。
 今はフードも取ってマントもしまってある。
 顔バレしてないからわからないだろう……ただ宿に泊まると旅人とバレてしまうから、今日は野宿決定だな……せっかく布団で眠れると思ったのに……。

 横になれそうな人通りの少ない路地を探して魔法で結界を小さく作り出してその中に入る。
 この結界は俺の許可が無いと入る事は出来ず、それにこの結界の良いところは地面に直接触れなくて済むと言う事。 地面の上に魔法陣を置いている感じになる。 そのためここで寝ても虫に食われたり、土汚れが着いたりしない。 結界はドーム状の半球体なので雨だって防げるし、結界に攻撃されても中に音は聞こえない。 中々の性能がある。

 その結界の中に入り鞄を枕にしてマントをかけて眠るつもりだった……つもりだったけど、俺のいる路地に2人の子供が走って入って来た。
 結界は透明で俺以外の目には見えないのでぶつかったら大変だ。
 急いで結界を解くと、2人の子供は俺の後ろに隠れた。

「お、おいおい、君達はなんなんだ?」
「終われてるんだ! 助けてくれよ!」

 髪の毛もボサボサで服もボロボロ……後ろの子も長い髪で顔は良く見えないが同じくボサボサでボロボロの服を着ている。
 食料でも盗んで追われてるんだろうか?

「なんで追われてるんだ? 盗みでもやったか?」
「盗みなんてクズみたいな事やるわけないだろ! 貧乏だって誇りはある!」
「ならなんで?」
「この町で人身売買をしている奴らに追われてるんだ!」
「そうか、それで俺にどうして欲しいんだ?」
「だから、助けてくれよ!」
「タダでか? それは虫が良過ぎじゃないか?」
「う……、か、金は無い! だけど必ず金は払う!」

 髪はボサボサ、服はボロボロ、普通に暮らしている子供に比べて痩せ細っているのは目に見えてわかる。
 どうやったって金は無理だろう。

「無理だな……、君は交渉の仕方を間違えてる。 まずは目に見える対価を出して交渉するべきだ。 俺は君達を知らない。 だから後でなんとかすると言うのは交渉にもならない」
「そ、そうだけど……そうだ! あんたあのハゲ頭の大男を倒しちまっただろ? あの大男はこの町の人身売買の幹部の奴なんだよ。 だからここにいる事を教えられたくなければ助けてくれよ。 強いんだろ?」

 なるほど、あの争いを見ていたのか……、しかも俺に気がつくとはなかなか見所はありそうだ……だが……。

「その交渉は良く無いな。 それは交渉ではなく脅迫になる。 俺の事を教えられたくなければと言うなら俺がここで君達を殺すか見てみないふりをして人身売買の連中に渡すしか無くなるが?」
「そ、それは……」

 必死に理由を考えているんだろう。 頭を掻きむしりながらなんとか助けてもらおうとしている。
 俺も別に助けるだけなら簡単だ……だけどそんな事をいちいちやっていたらキリがない。
 俺は……正義の味方じゃ無い……。

「あ、あの!」

 後ろにいた子が前に出て来て話し始めた。

「わ、わたしが奴隷として尽くします!」
「お、おい! なにを言って!」

 すぐに男の子が止めに入った。
 声からして女の子か?

「いいの……、私達を助けてくれるなら私が対価として奴隷になります! 兄さんがお金を持ってくるまで頑張りますから!」

 この2人は兄妹か……。

「なら俺が奴隷になる! 頑張って働くから妹は助けてくれ!」

 お互い必死に頼み込んでくる……。

「わかった、わかった……。 とりあえずいいだろう、2人とも助けてやるよ。 それで、追ってきてるのはあの2人で間違い無いか?」

 俺が後ろを指差すと、そこには2人のゴロツキが一生懸命結界をナイフで攻撃していた。
 俺は2人の話を聞きながら邪魔が入らないように結界を使って中に入れていたのだ。

「え!? そ、そうだけど……」

 2人ともゴロツキが近寄れない事に不思議がっている。
 さてと、ここでゴロツキ2人を倒しても良いけど、アジトに案内させて人身売買の元を全部潰した方が早いな。
 俺は2人にここから動かないように伝え、結界から出てゴロツキ2人を相手にした。

「てめえ! なんだかわからねえ術使いやがって! あの2人をこっちに寄越せば命は奪わないでいてやるぜ?」
「ふむ……それもいいが悪いな、あの2人とは助ける契約をしてね、その対価より高い値段をつけるならいいぞ」
「何言ってやがるんだこいつ?」
「頭イカれてんじゃねえか? ……まぁ、てめえにくれてやるのはこのナイフだけだがな!」

 ゴロツキがナイフを振り下ろしてくるが、軽く躱してアッパーカットで1人をぶっ飛ばす。

「てめえ! 抵抗するのか!?」
「当たり前だろ? 武器で攻撃されて抵抗しないバカはいない……」
「あ? ギャッ!」
「……だろ?」

 もう1人の顔を手で押さえ火炎魔法を弱く炸裂させた。 それだけでもゴロツキの顔は焼け落ちその場に倒れる。

「す、すげえ……」

 兄の方は俺の戦い方を見ていて少し興奮しているようだ。

「待たせたな……さて、こいつが目覚めてアジトに戻るまでその辺に隠れてようか」
「は、はい!」

 少し離れた場所に移動すると、妹さんが聞いて来た。

「あの、離れ過ぎてませんか? 目が覚めた時見失わないですか?」
「大丈夫、大丈夫。 あいつが動いたらわかるから」
「それってサーチのスキルってやつですか?」
「良くしってるな。 まあ、そんなもんだよ」
「あのさっき魔法を使っていましたよね? 火炎魔法も使えるって事は魔術師さんなんですか?」
「魔法はある程度使えるけど魔術師では無いな」
「そうだよ、あのハゲ倒した時は魔法じゃ無かったみたいだし……、剣技ですか?」
「そうだよ」

 この2人結構鋭いな……。

「お、目が覚めたようだな。 動き始めたよ」

 どうやら町外れにある一軒家に戻ったようだ。

「場所はわかった。 君達はここにいれば安全だから……、それと、これはサービスだ」

 少しの食料と水を出してあげる。

「これ……食べてもいいんですか?」
「ああ、サービスって言ったろ?」
「やった! ありがとうございます!」

 兄の方は急に礼儀正しくなったな。

 さ~て、久しぶりに少し暴れるか……。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ━━━━━━━━後書き━━━━━━━━━

 読んで頂きありがとうございます。
 これから頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげてあげると思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 以降の話には後書きはありませんので、この世界に浸っていただければと思います。
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