俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第6話 風の囁き

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 精霊のエルザ、シルクに服を作ってもらうため、パキラ村に立ち寄った俺達は服の材料が取れなくなったと言うので、その原因である魔物キャタピラスを討伐するために森に入った。
 森の途中でキャタピラスに襲われている男女をシルクに任せ、エルザと共にキャタピラスを引き受けたが、森の中と言う事もあり、エルザも本領を発揮できない。
 そして俺の方にもキャタピラスの群れが襲って来た。

 俺は意を決して崖に走り、上手く風に乗れれば、足の一本位で済むのではと無茶な事を考えた。

 その時、頭の中に声が響く。
『僕に乗りたいの』
 誰だ? この大変な時に!
『そんな怒鳴んないでよ! 僕が力を貸してあげるから、とりあえず止まって』

 そう言えば俺にはまだ他にも精霊がいるとか言ってたな。
 もしかして新しい精霊か?
『そうだよ。 だから召喚お願いね』
 わかった。
 この状況だ。 どんな精霊でも仲間が増えるのは助かる。
『じゃあ、呪文教えるよ』
 早く頼む。

『白く空に揺蕩いし柔らかな風よ 盟約に基づきその姿を見せよ! だよ』

 俺は振り向きキャタピラスに向かって呪文を唱える。

「白く空に揺蕩いし柔らかな風よ 盟約に基づきその姿を見せよ!」

 俺の前に白い魔法陣が現れ、銀髪ショートの小柄な少女が出て来た。


「やっと召喚されたよ~!」

 そう言って小柄な少女は俺に抱きつき、顔をスリスリしてくる。

「えーっと……、今はそんな時じゃ無いんだけど……」
「そうだった! さて、僕の兄ちゃんを襲おうなんて僕が許さないからね~」

 女の子が腕を掲げて振り下ろすと一陣の風が吹き、キャタピラス達は真っ二つになって行く。

「凄いじゃ無いか! ……え~と……?」
「マリス! 僕はマリスって言うんだ!」
「そうか、マリス、召喚したばかりですまないが、森の中のエルザも助けてやってくれ」
「もちろん!」

 俺とマリスはエルザの元に急ぐ。
 その先でエルザは折れた大木に座って休み、辺りにキャタピラスの死骸が転がっていた。

「遅かったじゃねぇか」
「これ全部1人でやったのか?」
「当然! お、マリスじゃん。 やっと召喚してもらったのか」
「うん!」

 マリスは笑顔で腕を組んでくる。

「翔、ちょっと疲れたから肩貸してくれないか?」
 
 これだけの魔物を倒したのだ。 いくらエルザでも疲れるよな。

「ああ、ほら」
 
 腕を組んでいるマリスから腕を外し、エルザに肩を貸す。
 そんなエルザはマリスの方を向いて、ニヤニヤしているなんて知らなかった……。

「エルザずるーい! 僕も! 僕も!」
 
 マリスはエルザと反対側にしがみついて来た。
 あの……、上手く歩けないんだけど……。

 パキラ村まで戻るとシルクが走って来る。

「大丈夫でしたか? 翔様?」
「ああ、エルザとマリスのおかげでね」
「マリスも召喚されたのですね」
「僕が兄ちゃんを助けたのさ!」

 マリスは手を腰に当て、ドヤァっとした顔をしてみせる。

「エルザはなにをなさってますの?」
 
 肩をかりているエルザを見てシルクは聞いてくる。

「1人でキャタピラスの群れを退治して歩けなさそうだから、ここまで肩を貸して来たんだよ」
「……そうなんですね……エルザ?」

 シルクは怖い笑顔でエルザを見る。
 エルザはそっぽを向いて吹けてない口笛を唇を尖らせフーフーと吹いている。

「……翔様、あんまりエルザを甘やかさないで下さいませね」
「でも、疲れてたのなら仕方ないよ」
「わたくし達精霊は魔法陣の中に戻れば回復出来ます」
「え! そうなの!?」

 確かに今まで酒で酔った時は魔法陣の中に勝手に戻ってたな……。

「エルザ?」
「ちょっ、ちょっと位いいじゃんかよ~!」
 
 そんな事を話しながら酒場のマスターの元へ向かい、マスターにキャタピラスの討伐に成功した事を話す。

「本当に全部やったのか!?」
「エルザが頑張ってくれたからな」
「さすが精霊様だな……」
 
 エルザはふふんっ! と鼻をこすり得意げだ。

「それにしても助かったぜ。 村のもんを代表して礼を言う」
「代表?」
「ああそうだ。 わしがこのパキラ村の村長もやっているからな」
「えええ!!」
「酒場のマスターをやっていれば外の情報も仕入れ易い。 その情報を元に村を運営しているからな」

 なるほど……いや、すげぇなこのマスター……。

「村を救ってくれた礼をしなきゃならんな。 お前さん方は服を買いにこの村に来たのだろう? 服はタダで作ってやるよ。 そこの精霊様の服とお前さんの服で良いのか?」
「俺は別にいらないから、この子の分も頼む」
「わかった、任せときな」
「僕の分も作ってくれるの?! やった! 兄ちゃんありがとう!」
 
 マリスは抱きつき顔をスリスリしてくる。

 服は材料が揃い次第作って貰える事になった。
 キャタピラス討伐の報酬も服を無料で作って貰えるならいらないと断ったのだが、ちゃんとした対価は貰わないとダメだと言われ、金貨6枚、銀貨15枚を渡された。

 美味しい飯が食べれる宿も教えてもらい、宿に着くと既に事情を知っていたのか、宿の女将さんがご馳走で歓迎してくれた。
 ポテトと干し肉の炒め物、丸鳥の香草焼き、キノコのサラダ、野菜のスープ、パン、そして木のジョッキに入った酒。
 皆んなが食べる姿を見ると好みが良くわかる。
 エルザは酒、シルクは野菜、マリスはお肉が好きなようだ。
 ご馳走に舌鼓を打ち、宿の部屋へ。
 
 女将さんに「部屋は二部屋いるかい?」と聞かれ、今度はそうしてもらわないと、また寝不足になりそうだったので、二部屋にして欲しいと伝えたけど……。
「二部屋も要らないだろ?」「翔様、わたくし達とは嫌ですの?」「僕は兄ちゃんと寝る~!」 と言う事で、結局一部屋となった……。

 部屋に入った俺達は寝る前にディメールでする事を話し合っていた。
 剣の鞘を作って貰う事と、冒険者ギルドに登録をする事だ。
 そして、魔法の練習。
 せっかく異世界に来たのに魔法が使えないのはつまらない。
 冒険者ギルドへ登録したらまたこのパキラ村に戻って来て服を作ってもらおう。
 予定を決め、3人はベッドで寝て、俺は床で構わないと申し立てた所、エルザに引き込まれて布団の中へ……。
 そして誰が俺の隣で寝るかと言う議論が始まった。

「今日の1番の功労者である あたしが翔の隣だよな」
「それなら僕だって頑張ったよ」
「あら、わたくしも翔様の言いつけ通り男性と女性をお助け致しましたわ」
「あたしだよな?翔?」
「僕だよね?兄ちゃん」
「翔様、わたくしですわよね?」
「俺は1人で寝たい……」
「「「それはダメ(だぜ)(ですわ)(だよ)」」」
 
 そして結局……。
 エルザ右、シルク左、マリスが俺の上で寝る事になった……。
 いやね、これもハーレムだけど、そう簡単に手を精霊様に出せるわけ無いじゃん……、しかも相手は俺より遥かに強い精霊……。
 マリスなんてどう見ても少女……。
 耐えろ! 耐えるんだ俺!!

「兄ちゃんあったか~い」
「くか~」
「本当にあったかいですわ」
 
 2人共それは何より……、エルザはもう寝てるし……。
 大きな山、谷、小さな膨らみと全身で抱きつかれている柔らかい感触、両端と上の口から漏れる吐息……。
 次の日の俺は一睡も出来ずにぐったりしていた所を女将さんに見られ、「あらまぁ♡」とニヤニヤされてしまった……。
 そんなんじゃ無いよ……。
 否定する元気無いけど……。

 宿を後にすると森で助けた男性と女性が声をかけて来た。

「森ではありがとうございます」
「助かりました」

 深々とお辞儀をされ、これからどうするのかと聞かれたので、ディメールへ向かう事を告げた。

「ディメールでしたら僕が案内しますよ! 僕はテイル」
「私達ディメールから来た冒険者なんです。 私はメルと申します」

 パキラ村から服が入荷しなくなり、ディメールの冒険者ギルドが様子を見に行って欲しいと依頼を出した所、この2人が請け負って来たらしい。

「いや、本当に助かりましたよ」
「そうよ! ちょっと森の様子も見ようなんて言うから……。 カケルさん達が来てくれなかったら私達死んでたかも知れないのよ!」
「いや~、面目ない……」
 
 テイルさんはメルさんに怒られてタハハと頭をかいている。

「しかし、そちらのお綺麗な方達は強いですな」
「本当羨ましい……」

 メルさんは自分の胸に手を当ててボソッと言っていた。

 テイルさんとメルさんにディメールまで案内をお願いし、酒場のマスター兼村長さんに旅立つ挨拶をしに酒場まで。
 エルザには酒は買わないぞと一言を告げて。

「もう行っちまうのかい?」
「はい、宿の手配ありがとうございました」
「礼を言うのはこっちだ。 服は今度来る時までに材料を集めとくからな。 絶対また来いよ」
「もちろんです!」
 
 そう告げて俺達はディメールへ旅立った。
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