黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第四章 砂漠の遺跡

第七十九話 銀鼠燭の塔

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 塔を探して砂漠を進む俺とレア。
 サンドワームの生息地を抜け、地図の場所に辿り着いたが、レアが砂に飲まれ沈んでしまった。
 レアを助けようとしたが失敗し、俺もレアと一緒に砂に飲まれて行った……。

「ご主人様、ご主人様……、大丈夫ですか?」
「ん……? レア? 大丈夫だったのか!?」
「はい。 ご主人様が助けに来てくれたので」
「助けに行って俺も一緒に沈んだんだけどな……はは……」
「いえ、私はとても嬉しかったですよ」

 レアに膝枕をされていた体を起こす。

「しかし……、良く助かったな……」

 かなりの高さから落ちたようで、落ちて来た場所が見えない。 たまに砂がドサッと落ちて来る。

「砂がクッションになってくれたようです。 乗り物も無事でした」
「そうか、一安心だな。 さて、ここからどうやって出るか……」
「ご主人様、この空洞の先に塔があるかも知れません」

 落ちた場所の空洞は奥まで続いており、水が流れ風も軽く吹いている。
 行ってみるか。
 鍾乳石から水が落ちる音と俺達が歩く音だけが響く。
 しばらく歩くと、船があった場所よりも更に広い空間に塔が斜めに建っていた。

「ありました! あれは……、【銀鼠燭ぎんねずしょくの塔】です!」
「よし! 行こう!」

 少し斜めに傾いている塔の入口は砂で埋まっていた。

「入口埋まってますね……」
「どうしようか?」
「私が掘りますので、ご主人様は待っていて下さい」
「俺も手伝うよ」

 レアと二人で砂を掘るが、掘った所から砂が崩れて来て作業が進まない……。

「俺の魔法で吹き飛ばそうか?」
「ご主人様の魔法だと強すぎて塔が崩れかねません」

 じゃあどうする? ……掘るしか無いか……。

 二人で掘る。 掘って砂を減らした所からパラパラと落ちて来る。
 掘り、掘り、掘り、掘り…………。

「だあーー! やってられるかっ!!」

 俺は魔導法術機ガルファーの埋まった手を向ける。
 火だと破壊してしまうかも知れない。 ならこの辺りに吹いている風ならどうだ? 風で吹き飛ばせば問題ないだろう。

「ご主人様! 魔法は━━」

 レアが止めるよりも早く俺の魔法が発動する。
 魔導法術機ガルファーが輝き、手の平に魔法陣が浮かぶ。
 風を球体状にまとめ上げ、砂の中に放つ。

 砂の中で風の球が破裂すると、入口を塞いでいた砂が全て吹き飛んだ。

「ぺっぺっ……、よし、砂が無くなったぞ! どうだレア! ……レア?」
「……コホ……そうですね……」

 吹き飛ばした砂を浴びる事になり、俺もレアも砂だらけだ……。

「レア、ごめん」
「いえ、大丈夫です。 入口も見えましたし、中に入りましょう」

 閉じている入口の扉に手をかざすと、音を立てて開くが、中からも砂が溢れて来る。

「中まで砂だらけかよ……」
「たいした量の砂ではないので大丈夫ですよ」
「でもなあ……」

 どうやって砂が入ったのかわからないが塔の中の砂は膝下まである。
 レアのメイド服では動きにくそうだ。

「レア、小さい猫に変身した方が進みやすいんじゃ無いか?」
「そうですが、何が出るかわからないので……」
「危なくなったら逃げるから大丈夫さ」
「……わかりました」

 レアに小さい猫に変身してもらい、頭に乗せて砂の中を進む。

 この銀鼠燭ぎんねずしょくの塔にも小型のアーティファクトがいたようだが、長い年月で砂に埋まってしまい皆んな動かない。

「これは楽に行けそうだな」
「……そうでも無さそうです」

 レアの耳がピンと立ち、何も無い砂を見つめている。

「何も無いぞ?」

 一応剣を構えてはいるが、猫がたまに何も無い場所を見つめるってやつなのか?

「……来ます!」

 砂からヒレが幾つも見えると、凄い速さでこっちに向かって来る。
 砂から飛び出した【ニードルフィッシュ】は鋭い歯と体の棘で襲い掛かってくる。

 剣を抜くが砂に足を取られ態勢が悪く当たらない。
 力の入っていない攻撃では当たっても硬い鱗に弾かれてしまう。

「ご主人様、ここは逃げましょう!」
「いや、さっきの風魔法で砂ごと吹き飛ばす!」

 手を差し出し、風魔法を放つ。

 砂は多少吹き飛んだが、ニードルフィッシュは構わず襲ってくる。

 ニードルフィッシュの歯と棘で服も破れ始め、傷も付き始める。
 砂の無い場所に落ちたニードルフィッシュはビチビチと跳ねて砂に潜って行く。
 ちょっと砂を吹き飛ばしただけじゃ意味ないか。
 なら……。

「これならどうだ!」

 風魔法と火の魔法をかけ合わせ、竜巻に火を纏わせた。
 手から直線的に放たれる火炎の竜巻は砂を吹き飛ばし、ニードルフィッシュを炭へと変えて行く。

「ふ~……、とりあえず大丈夫そうだな……」
「ご主人様……、二つの魔法をかけ合わせるなんて、凄いです! さすがです!」
「そ、そうかな」

 レアに褒められてちょっと嬉しい。

「よし、さっさと上ろう」
「はい!」

 塔を上って行くと砂の量も減ってきている。
 そのため、ニードルフィッシュも殆ど出なくなった。

「ここが最上階か」
「そのようですが……」

 最上階には何も無い。
 全く無い訳では無いのだが、ポツンと台座が一つ置かれているだけだ。

「これに触れってことだよな?」
「恐らくは……」

 今までボスっぽい奴がいたり、変な仕掛けがあったけど、これはどうなんだ……?

「ここまで来たんだ。 触ってみるしかないか」

 台座に触れると光りを発し、塔が地響きを上げて浮上し出した。

「うわっ! これ大丈夫なのか?」

 咄嗟にレアを懐に抱えて地響きに耐える。

 地響きが止まると空が見え、塔が地上まで浮上したんだ。
 塔から砂が勢い良く流れて行く。
 すると、床が開き下りる階段が現れた。
 この先か?
 階段を下りると、いつもの筒がある部屋へと出る。

「レア、これは……」
「直ぐ調べます」

 二つある筒の一つが砂で埋まり割れてしまっていた……。
 レアは人型へ変身すると、裸のまま調べ始めた。

「……ご主人様……、これはもうダメです……」
「そうか……、二つ共壊れてるのか?」

 レアの裸を見ないように後ろを向いて話す。

「一つは使えそうですが、私の方は……」
「俺がパワーアップし終わったら使うのはどう?」
「ダメです。 ご主人様と一緒じゃ無いと意味がありません」
「そうか……、なら……、一緒に筒に入るってのは?」
「ご主人様のパワーアップに私が耐えられません」
「そうか~……」
「仕方ありません。 私は良いので、ご主人様のパワーアップを優先します」
「しかし……」
「ご主人様がパワーアップしないとあの船は動かないでしょう?」
「そうだったな……。 わかった、パワーアップの準備お願いする」
「はい」

 レアの方は使えないとわかったので服を来てもらい、俺だけ裸になり筒に入る。

「それではいきます」

 筒に液体が満たされ、しばらくの時が過ぎる。

「終わりました。 これでご主人様はパワーアップしたはずです」
「そうか、ありがとう」

 服を着て、塔から下りる。
 砂も殆ど無いのでニードルフィッシュももういない。
 ただ……。

「ご主人様、帰りはどうしましょう?」

 そうか! 塔が浮上してしまったから乗って来たバイクは砂の下……。
 バイクが無いとサンドワーム地帯は抜けられない……。
 もう一度砂に潜るしか無いか……。

「ご主人様! あそこです!」

 レアが塔と一緒に浮上したバイクを見つけた。
 広い範囲で浮上してくれて助かった。
 あの空洞全てが塔の一部だったようだな。
 
 船を出て銀鼠燭ぎんねずしょくの塔に来てからもう二日は経っている。
 フランは無事だろうか?
 一刻も早く帰らないとな。

 バイクに乗り、来た道を帰る。
 サンドワームの生息地に入った俺達は目を疑う光景を見る事になった……。
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