黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

文字の大きさ
94 / 195
第五章 大海原

第九十四話 副団長との試合

しおりを挟む
 やっとエルメリオン王国へ戻って来た。
 俺が目覚めた場所でもある。
 そしてここでエイルと出会い守護盾ガルガードになった。
 その後レアも目覚め、三人の旅が始まった。

「ケンジどうしたの?」

 懐かしさをしみじみと感じていたらエイルに顔を覗き込まれる。

「いや、なんだか懐かしいなと思ってね」
「私も懐かしいですにゃ」
「そうですか?」
「初めて出会ってから三人で旅をしていた時を思い出すよ」
「そうですね、ケンジもまだガルになりたてでしたもんね」
「私は誰かさんのせいで復活が遅れましたけどにゃ」
「あれ~……、何処の誰だろう……」
「まあまあ、エイルがいなかったら俺達が目覚める事は無かったかも知れないから感謝しないと」
「それはそうかも知れませんにゃ」
「そうでしょ! だからレア~」
「……嫌ですにゃ」
「まだ何にも言って無いよ~」

 こんなやり取りしながら王都を目指す。
 まだ先は長い。

 何度か夜営をして、ついに王都へ到着した。

「この感じ久々ですね~」
「そうだな。 シャッテの襲撃からだけど、城下町は殆ど修復されてるな。 綺麗なままだ。 あの時傷をおったホンガンさんは元気だろうか?」
「あの方は頑丈だから大丈夫にゃ」

 騎士団副団長のホンガンさん。 シャッテのサラマンダーの攻撃で腹に穴を開けられていたんだけどな。
 それとエルフのマドルさん。
 俺がガルになる為に良くしてくれた恩人だ。

「これからどうします?」

 エイルが聞いてくる。
 これから港がある町に向かう予定だが、ホンガンさんやガル支部のミランさんに一度会ってから行くか。
 まずはガル支部だな。

 扉を開けて入ると、ガル支部のミランさんは相変わらず忙しそうにしている。

「ミランさん、お久しぶりです」

 忙しそうにしていて声をかけづらかったので軽く声だけかけておいた。

「ん……? あら、ケンジさんにエイルさんじゃない! それにそちらはレアさん? 久しぶりね~」
「お久しぶりです」
「相変わらず忙しそうですね」
「そうなのよ~、少し前にヴァルスケン帝国でちょっとした事件があってね、それがガルの仕業じゃ無いかって言われててその処理に大変なのよ。 …………二人は何か知らない?」

 ミランさんがこちらを見て、何か知ってるでしょ? と言う感じで見てくる。
 まあ……、それは俺達だけど……。

「そうですね……、知ってるような知らないような……」
「はっきり言いなさい!」
「はい! 実は……」

 ミランさんの威圧感に負けて包み隠さずリュビナイトの事も話しておいた。

「…………ふぅ…………、情報量が多いわ……。 随分派手にやってくれちゃったわね……」
「すいません……」
「いえ、良いのよ。 話しを聞くとケンジさん達が悪いわけじゃ無さそうだし。 でもそうなると各支部に連絡しておかないと……、忙しくなるわね……。 それで、ケンジさん達はこれから何処行く予定なの?」
「俺達は海を渡ろうと思います」
「そう……、海の先の情報は入ってくるのが遅いから、あんまりやらかさないでよ」
「肝に銘じておきます」
「お願いね」

 ミランさんに報告も済んだし、ホンガンさんの様子でも見てくるか。
 兵舎の方へ向かうと、兵士達の声が聞こえてくる。
 その中で一際目立つ体の大きな人が声を上げていた。
 ホンガンさんどうやら傷は癒えたようだ。
 兵舎に入り、訓練場ホンガンさんに声をかける。

「ホンガンさんお久しぶりです」
「おや? ……おお! もしかして襲撃の時の!?」
「ケンジです。 ご無沙汰しています」
「そちらは……、確か連れ去られた獣人の?」
「はい、レアともうしますにゃ。 あの時は助かりましたにゃ」
「こっちこそだ。 皇……っと、リオン様が心配していたぞ」
「リオン様?」

 俺には初めて聞く名前だが、あの時にいた人だろう……。

「リオン様は皇子様の名前ですにゃ」
「まじか!」

 あの時はお忍びで名乗っていなかったから知らなかったよ。

「それにしてもケンジ殿……。 なかなかに強くなったようだ。 どうだ私とひと勝負してみないか?」
「体の傷はもう大丈夫なんですか?」
「あんな傷、大した事は無い!」
「えー……」

 人造人間でも無い人があの傷で平気とは……、化け物だな……。

「それでは! ホンガン副隊長対守護盾ガルガードケンジ、試合初め!

 俺とホンガンさんとの試合が始まった。

 お互い木剣だが、ホンガンさんのはその巨体と同じ位のサイズがある木剣だ。
 リーチ差では負ける。
 だが俺もエルメリオン王国を出てかなりパワーアップしている。
 スピードでホンガンさんを撹乱してその隙を攻撃する。

 ダッシュでホンガンさんの前に出ると、すぐさま体を移動させて背後に回り攻撃するがホンガンさんは俺の素早い動きに即座に対応する。
 背後を見ずに木剣を背中に回し俺の攻撃を防いだ。

「流石ですね」
「ケンジ殿も前とは比べ物にならない速さだな」

 でもその攻撃を軽々と受け止められてるからな……。

 俺は一度離れて再度ホンガンさんに向かって走り出す。
 ホンガンさんは巨大な木剣をいでくる。
 その木剣を態勢を低くして躱すが、そこにホンガンさんのデカい拳が襲ってきた。
 その拳を転がりながらギリギリで躱す。

 一度距離を取り、木剣をホンガンさんに投げつけると同時に走る。
 ホンガンさんは勿論投げつけた木剣を弾く。
 俺は弾いた側に移動すると、威力を抑えた魔闘気をホンガンさんの脇腹に叩き込む。

「ぐふっ!」

 ホンガンさんはその場に膝を付いた。

「やるな……、まさか私の体でも防げぬ打撃があるとは……、私の負けだ」
「そんな事はありませんよ。 ホンガンさんが最初から本気なら負けていたのはこっちだったかも知れませんし」
「ふ……、戦いにおいて、"かもしれん"は通用せん。 最初から本気でやらなかった私のミスだ」
「その通りだよ」

 パチパチと拍手をしながら、騎士団長のロイさんが歩いて来る。

「良い試合だったよ。 見事に負けたねぇホンガン。 やっぱりどうだい? 騎士団に入らないかい?」
「い、いえ、それは遠慮しておきます」
「それは残念」

 ロイ騎士団長は本当に残念なそぶりを見せつつ質問をしてくる。

「ときに聞きたい事があるのだが?」
「何でしょうか?」
「君達はヴァルスケン帝国へ行っていたのだよね?」
「はい……」

 やばい……、また巨岩の大地の件か?

「帝国で何か怪しい動きなど無かっただろうか? あのヴァルスケルハイトの襲撃後、我々も調査しているのだが、情報が不足していてな」
「そうですね……」

 ロイさんにはリュビナイト以外のガスパの闘技場、ヘイトルーガでの遺跡探索、巨岩の大地で爆発があった事を話す。

「そうか……、また何かわかったら教えてくれ。 ガルとはお互いに仲良くやりたいからね」
「はい、わかりました」
「うん、助かる。 それで、これから君達はどうするんだい?」

 ロイさんにも海を渡って別の大陸に行く事を告げる。

「そうか、それも楽しそうだ。 それじゃホンガンを倒したご褒美でもあげよう」
「ご褒美ですか?」
「これから君達が向かう港町【ミクシル】にいるいる【ダルマッチ】と言う人を探してこれを見せてごらん」

 ロイさんは一つの赤色の石がはめ込まれたペンダントを渡してきた。

「これは?」
「行って渡せばわかるさ」

 それだけ言うとロイさんは「良い旅を!」 と言い、行ってしまった。

 ホンガンさんにも挨拶をして、エルメリオン王都の西にある港町【ミクシル】に向かう為、準備をし翌日出発した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...