黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第十章(最終章) 【未来へ】

第百九十話 【旅立ちの時】

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 レアを探すため、一度ヴァルスケン帝国へ向けてルビレスさんの力を借りて出発した。
 エルメリオン王国に着くまでこの五年間、周りがどうなったか話しを色々と聞きながら、エルメリオン王国に到着して、ルビレスさんにお礼を言い王都を一人で歩く。

「あまり変わっていないな……」

 五年も経てば皆んなの生活も元に戻るか。
 この公園で出会った女の子、良くレアに懐いていた子がいまや時期女王だもんな……。
 そうだ、ヴァルスケン帝国へ行く前にガル本部へ顔を出して置くか。 確かジルを預けておいたはずだし。 物価の高いヴァルスケン帝国では路銀が無いとな。

「こんにちは~」
「はい、守護盾ガルガードエルメリオン本部へようこそ」
「お久しぶりです、ミランさん」

 良かった、受付は知っている人だ。

「はい? どこかで~……、も、もも、もしかして……ケンジさん!?」
「はい」
「え!? え!? どうして……いえ、何処から? 生きていたんですか!?」
「一応……」
「大事件だわ! 急いで皆んなに連絡しないと!!」

 ミランさんは慌ただしく連絡を取ろうとバタバタし始めた。
 この世界には電話は無いのにどうしてあちこちの支部と連絡が取れているのかと疑問に思っていたが、ミランさんが連絡しているので終わってから聞いた。
 ガルには特別な短距離無線の様な物が存在しているらしい。
 通信は近くの通信専門のガルまで飛び、それをまた近くのガルまで繋げる。
 そんなガルもいるんだと初めて知った。

「これはガルでも秘密なんですよ。 それより、これからどうする予定なんですか?」
「ヴァルスケン帝国まで行く予定です」
「そう……この五年どうしてたか色々お話しも聞きたかったのだけど、その役目は譲る事にするわ」
「譲る?」

 譲るってどう言う事なんだろうか?

「久しぶりだねケンジくん」

 階段から降りて来たのは……マドルさん!
 俺がガルになる試験をしてくれた先輩だ。

「これからヴァルスケン帝国に行くんだって? なら僕が途中まで付き合うよ。 旅は道連れってね」
「良いんですか? ミランさん随分と忙しそうですけど?」
「あんな事があったんじゃね、でも、途中までなら問題ないよ。 それとも僕とじゃ不満かな?」
「とんでもないですよ。 宜しくお願いします」

 マドルさんとヴァルスケン帝国の国境まで一緒に向かう事になった。
 俺の体は前のような強さは無くなっていた。 途中に出て来た魔生獣でも苦戦する程だ。
 その魔生獣の殆どをマドルさんが倒してくれていた。

「すいません、力になれなくて……」
「とんでも無いよ。 ケンジくんはこの世界を救った英雄なんだから」
「救ったなんて……もともと俺のせいみたいなものですし、皆んながいなかったらどうにもならなかったです」
「そうでも無いさ、世界を守ったのは本当の事だろう? なら気にする事はないよ」
「そんな事は……」

 そう、俺は救ってもいないし守ってもいない……守れなかった……。

「……そうか、ダルマッチさんと、まさか三神の一人であるルビレス様な元にいたとはね。 運が良かったのかも知れないな」
「はい、海に漂っていたのを見つけてもらえなければ今はここにいなかったかも知れません」
「そうだろうね……そうそう、三神と言えばラヴレス様も瀕死だったけど今は復活してアームダレスに戻っているよ」
「そうですか、それは良かった」

 人型の攻撃で海に落ちたと聞いていたからな。 助かっていて良かった。

「それじゃ、僕はここまでだね」
「道中ありがとうございました」
「帝都まで気をつけて行くんだよ」
「はい」

 マドルさんと別れ、ヴァルスケン帝国へ入る。
 入国する時に俺のガルのカードを見せると無料で通れた。

「あなたは!」
「どうぞお通り下さい」

 こんな感じだ。 無料なのは助かる。
 ヴァルスケン帝国へ入り、竜車を使い帝都内へ。

「ここにルルアとムーンがいるんだよな……。 元気にしているだろうか? マブルさんが亡くなって落ち込んでいなければいいが……」

 ルルアには笑顔が似合うからな。

「確かこの辺りだったと思うけど……」

 キョロキョロとおのぼりさんの様に辺りを見回しルルアの家を探していると……。

「!! も、もしかして……ケンジさん!?」

 声をかけられて振り向くとムーンが抱えていた買い物の袋を地面に落としてしまった。

「ムーンか!? 元気だったか?」
「ケンジさん……無事だったんですね、良かったです……」

 俺の顔を見て一度笑顔になるが、直ぐに顔を伏せてしまう。

「ケンジさん、ごめんなさい。 レアさんを……」
「知っているよ。 あの場ではムーンに頼るしか無かったし、レアはきっと生きてるさ」
「……はい……」

 元気を出してもらおうと、話しながらルルアの待つ家に向かう。

「ルルアさん、ただいま戻りました~」
「おかえりなさ~い」
「お客様を連れて来ましたよ」
「お客様?」

 ルルアが部屋から顔を出して軽く手を上げて「久しぶりだね」 と一言声をかけると……、走って来てギュッと俺の体を締め付ける。

「…………」

 ルルアは何も話さない。

「元気だった?」
「……ケンジさん……、……バカ……」

 しばらくしがみつかれた後、ルルアを改めて見ると、背は伸びてレア位には成長していた。

「大きくなったね」
「五年も経てば成長もします。 それでケンジさんはあの爆発からどうやって?」
「わからない。 人型を止めようとした事までは覚えているけど、その後の記憶が無いんだ」
「あの爆発で生き残るなんてさすがです」
「ギリギリだったよ。 助けてもらわなければ死んでたと思うし……、……二人はここで暮らしてるのかい?」
「はい。 私はここでルルアさんのお手伝いをしています」
「そうか……」
「それよりケンジさんはどうしてここに?」
「俺はこれからレアを探しに行こうと思っている。 この後はヴァルスケン帝国内を探して見ようと思う。 その後はアームダレスに向かう予定さ」
「レアさん生きてるんですか!?」
「そんな気がする。 レアがそう簡単に死ぬわけ無いさ」
「そうです! そうです! 私達も一緒に行けたら良かったんですが今は……」
「いいさ」
「それじゃせめて今日は泊まって行って下さい!」
「それは悪いよ」
「散々一緒の部屋で寝たじゃ無いですか? お風呂も一緒に入りましたし」
「え!? お風呂も!?」
「いや、それはね……」

 ムーンにはルルアと出会ってから温泉に行った時の事を話しながら夜が更けた。

「それじゃ行ってくる」
「気をつけて」
「また立ち寄って下さいね」

 ルルア達の家を出て、帝都の中を歩き回り翌日、竜車を借りて巨岩の大地へ向かう。
 今は何も無いだろうけど、人型の攻撃があったのもあの辺りだ。
 近くの村に寄ってレアを探す。

「これが人型の……」

 巨岩の大地手前には大きく深い穴が空いていた。
 人型の攻撃で出来た穴だ。
 穴をぐるっと回り半壊している巨岩の大地へ向かう。
 既に帝国の施設が出来ていて入れなさそうだ。
 レアはいないな……。
 塔の方にも行ってみるか。
 キャンプをしながら竜車に乗って魔生獣を避けながら塔に向かう。
 我ながら竜車の扱いにも慣れたもんだ。

 塔に到着したが、もう崩れてしまっていて何も機能はしていないようだ。
 どうやらレアはヴァルスケン帝国にはいないのかも知れないな。
 アームダレスへ向かう前にルルア達に会いに行くか。
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