変身HERO異世界へ征く!

加賀林檎

文字の大きさ
94 / 111
一時の平和な日常

なぜ、呼んだ?

しおりを挟む
一行がヴィルドーア帝国領のドラゴン出現地帯へ向かって、早3日。

この日も森の開けた場所にて夜営をしていた。

食事も終え、最初の見張りとして、シンとアーシュリーが焚き火を囲いながら会話をしていた。

「……で、俺はそう思うんだが、アーシュリーはどう思う?死皇帝がドラゴンを放つとしても、タイミングが悪すぎる。わざとズレさせたとするならば、別な何かの策略を巡らしているとしか思えないんだが……」

シンは真剣な眼差しを焚き火を見つめ、たきぎをくべながら、アーシュリーに意見を求めた。

「……むぅ。折角のデートなのに、皆で行く事になったし、ここで死皇帝の名前なんぞ、聴きたくなかったぞ…………」

別な考えで膨れっ面して、体育座りして焚き火を見つめて、シンに聞こえるか聞こえないかの声で文句を言うアーシュリー。

「……って、アーシュリー?聴いてる?」

アーシュリーの左側から声が掛かり、アーシュリーは反射的に其方そちらを見た。

すると、眼前にはシンの顔が間近にあり、アーシュリーは『ドキッ』としながら、慌てて右側へ少し引いた。

「いゃあ、すまんすまん、で何の話をしてたの?」

シンは改めて、アーシュリーに意見を求め、答えを待った。

アーシュリーは暫く思案顔をしていたが、

「うん!さっぱり解らん!奴等は、いつも小難しい小手先の策で、私を狼狽えさせようと、いっっっつも嫌がらせするのでな。」

「で?いっっっつも、どうやって策を破ってたんだよ?」

シンの質問に、キリッとした面持ちで

「何も考えず、神界から雷や隕石を落としたり、暴風を起こしたりetcで、取り敢えず『軽くぶっ飛ばした』」

ヒュ~~~。

何処からともなく、凄まじい寒い風が吹いた。

え?

今、雷も隕石も、その他諸々で『軽くぶっ飛ばした』?

シンとアーシュリーの間に何とも言えない沈黙の時間が流れる。

「……うむ。神界から出られなかったからな。直接的にほふる方法は、天災しか手段はなかったのだ。汝が此方こちらに来なければ、私は顕現けんげん……ううん、それよりハッキリした実物実体化は無理であった。神1柱を現すには、勇者を越える『英雄』が出現する事が鍵であったからな。」

「じゃあ、何か?俺をこの世界に呼んだ理由は、それなのか?」

すると、アーシュリーは少し間を置き、

「…………そうだ。だが、それだけではない。この世界を救う……だけでもない。」

そう言うと、アーシュリーは少し寂しそうに体育座りのまま、再び焚き火に目をやった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...