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神話の時代の話
神話 3
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歳月が瞬く間に過ぎ去りアーシュリーは17歳、ヤーシュレイは14歳になった。
この頃になると、兵士だろうが何だろうが、女性も戦わねばならない戦力となっていた。
ただ、敵に捕まれば男性よりも酷い目にも合う。
死皇帝は己にひれ伏した魔族や異種族は、アンデッドにはせず、共存の道を与えた。
まぁ、表向きはだが。
死皇帝の本音からすれば、体の良い使い捨ての駒だ。
死皇帝の腹の内では、世界中の人間を根絶やしにした後、駒もアンデッドにするつもりである。
その流れで、人間の男性の戦死の確率は格段に上がってしまった。
国と呼べる社会体制は、もう其処には無い。
教会が辛うじて、人間勢力を纏め上げ、死皇帝に対し抵抗を続けているのが現状であった。
そんな絶望的な中、教会に神託が下った。
アーシュリーが『聖勇者』として選ばれたのだ。
勇者と言っても、4種類存在する。
人間から選ばれた、『只の勇者』
魔神より選ばれた、『魔勇者』
異世界から呼ばれた、『流転の勇者』
そして、
神より選ばれた、『聖勇者』である。
まず、最初の只の勇者は、魔族に呆気なく殺された。
流転の勇者は、主神達の力が多いに削がれた事により、召喚が出来ない状態。
魔勇者は当然、敵対勢力。
主神は、流転の勇者を召喚するより遥かに力を使わない、聖勇者と言う一択を迫られ、年月をかけて力を溜め、適任と思ったアーシュリーに力を与えた。
ただ、主神の力も枯渇しつつあった為、己が存在を引き換えにし、全ての力をアーシュリーに与えた。
条件としては、戦いに勝った暁には、アーシュリーが次代の神になる事であった。
アーシュリーは、人生の全てを擲ち、この力を受け入れる事こそ、人類側の勝利に繋がると確信し、聖勇者の任を受ける事に決断を下す。
ただ一人反対する人間もいた。
ヤーシュレイである。
ヤーシュレイは、何故姉が犠牲にならなければならないのか、姉以外の人間が聖勇者をやれば良いと思った。
姉とて純粋に恋だってしたいだろう。
楽しい事だってしたいだろう。
最悪、ヤーシュレイ自身が姉に変わってお役目を果たすと主神に願い出たが、主神は『否』と言う答えしか帰って来なかった。
聖勇者に成る為の力量が、全人類の中でアーシュリーにしか無かったのである。
つまりは人類側の人材の枯渇であった。
泣いて主神を責めるヤーシュレイを優しい声で詫びる主神。
それでも責め続けるヤーシュレイの悲痛な言葉は、主神だけでなく、周囲の人々の心までも容赦無く刺さって行く。
「何故!?何故にお姉様なんですか!!……何で……何でぇえぇ」
アーシュリーとヤーシュレイの両親は、アーシュリーが13歳の時に魔族の襲来で他界した。
その時より、アーシュリーは抵抗軍に入隊し、様々な知識を学びながら、兵士として戦い、まだ幼い妹のヤーシュレイを守る為に、まるで親の様に守って来た。
当然、周囲の大人達も、この健気な姉妹を助けてはいた。
だが、アーシュリーは全てを甘えるのは筋が違うとの一念で、戦いに身を投じて行くのである。
自分の為に子供でいる事を辞める事になった姉を思うと、ヤーシュレイは周囲を責める様な言葉を吐いたが、それよりも何よりも、その言葉の裏に自分の存在をも許せない思いが宿っていた。
他の人間は、どう思ったかは解らない。
しかし少なくとも主神はヤーシュレイのその悲痛な気持ちを察しており理解もしていた。
故に主神はヤーシュレイに詫びる言葉しか無かったのである。
また、主神自身も己がほんの少し世界から眼を放した隙に、皇族が虐殺に合い、この様な事態を引き起こした事を悔やんでいた。
主神の謝辞の言葉は、主神自身のうかつさに対する悔恨の言葉でもあったのだ。
この頃になると、兵士だろうが何だろうが、女性も戦わねばならない戦力となっていた。
ただ、敵に捕まれば男性よりも酷い目にも合う。
死皇帝は己にひれ伏した魔族や異種族は、アンデッドにはせず、共存の道を与えた。
まぁ、表向きはだが。
死皇帝の本音からすれば、体の良い使い捨ての駒だ。
死皇帝の腹の内では、世界中の人間を根絶やしにした後、駒もアンデッドにするつもりである。
その流れで、人間の男性の戦死の確率は格段に上がってしまった。
国と呼べる社会体制は、もう其処には無い。
教会が辛うじて、人間勢力を纏め上げ、死皇帝に対し抵抗を続けているのが現状であった。
そんな絶望的な中、教会に神託が下った。
アーシュリーが『聖勇者』として選ばれたのだ。
勇者と言っても、4種類存在する。
人間から選ばれた、『只の勇者』
魔神より選ばれた、『魔勇者』
異世界から呼ばれた、『流転の勇者』
そして、
神より選ばれた、『聖勇者』である。
まず、最初の只の勇者は、魔族に呆気なく殺された。
流転の勇者は、主神達の力が多いに削がれた事により、召喚が出来ない状態。
魔勇者は当然、敵対勢力。
主神は、流転の勇者を召喚するより遥かに力を使わない、聖勇者と言う一択を迫られ、年月をかけて力を溜め、適任と思ったアーシュリーに力を与えた。
ただ、主神の力も枯渇しつつあった為、己が存在を引き換えにし、全ての力をアーシュリーに与えた。
条件としては、戦いに勝った暁には、アーシュリーが次代の神になる事であった。
アーシュリーは、人生の全てを擲ち、この力を受け入れる事こそ、人類側の勝利に繋がると確信し、聖勇者の任を受ける事に決断を下す。
ただ一人反対する人間もいた。
ヤーシュレイである。
ヤーシュレイは、何故姉が犠牲にならなければならないのか、姉以外の人間が聖勇者をやれば良いと思った。
姉とて純粋に恋だってしたいだろう。
楽しい事だってしたいだろう。
最悪、ヤーシュレイ自身が姉に変わってお役目を果たすと主神に願い出たが、主神は『否』と言う答えしか帰って来なかった。
聖勇者に成る為の力量が、全人類の中でアーシュリーにしか無かったのである。
つまりは人類側の人材の枯渇であった。
泣いて主神を責めるヤーシュレイを優しい声で詫びる主神。
それでも責め続けるヤーシュレイの悲痛な言葉は、主神だけでなく、周囲の人々の心までも容赦無く刺さって行く。
「何故!?何故にお姉様なんですか!!……何で……何でぇえぇ」
アーシュリーとヤーシュレイの両親は、アーシュリーが13歳の時に魔族の襲来で他界した。
その時より、アーシュリーは抵抗軍に入隊し、様々な知識を学びながら、兵士として戦い、まだ幼い妹のヤーシュレイを守る為に、まるで親の様に守って来た。
当然、周囲の大人達も、この健気な姉妹を助けてはいた。
だが、アーシュリーは全てを甘えるのは筋が違うとの一念で、戦いに身を投じて行くのである。
自分の為に子供でいる事を辞める事になった姉を思うと、ヤーシュレイは周囲を責める様な言葉を吐いたが、それよりも何よりも、その言葉の裏に自分の存在をも許せない思いが宿っていた。
他の人間は、どう思ったかは解らない。
しかし少なくとも主神はヤーシュレイのその悲痛な気持ちを察しており理解もしていた。
故に主神はヤーシュレイに詫びる言葉しか無かったのである。
また、主神自身も己がほんの少し世界から眼を放した隙に、皇族が虐殺に合い、この様な事態を引き起こした事を悔やんでいた。
主神の謝辞の言葉は、主神自身のうかつさに対する悔恨の言葉でもあったのだ。
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