Hypernomos 科学者至上主義社会

深井零子

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Case3

『孔の中の生命』 閑話 制度というもの

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 制度とは、最初からそこにあったわけではない 生命が世界に触れたとき、その触れ方の“癖”が積み重なり、やがて「応答の仕組み」として形を持ち始めたものだ。

 最初の制度は、単純だった。刺激に揺れ、沈黙に戻る。それだけで十分だった。生命は、世界と関係を結ぶための最小限の秩序を手に入れた。

 だが、応答は繰り返される。 繰り返されると、そこに“履歴”が生まれる。 履歴が生まれると、生命は過去を参照し始める。過去を参照する仕組みが、制度の最初の“重さ”だった。

 制度は重くなると、未来を予感するようになる。 まだ起きていない関係性に備え、 自らの構造をわずかに調整する。 それは生命が未来に触れた最初の瞬間だった。

 しかし、制度は未来を持ちすぎると、自分自身を見失う。未来を準備し未来を伝播し未来を連鎖させ、ついには未来に押しつぶされる。

 制度は、生命が世界と関係を結ぶための秩序であり、同時に、生命を縛る枠組みでもある。

 制度が崩壊したとき、 生命は再び“外部”に触れる。風の偶然、時計の持続、落書きの断片。制度の外部は、制度が忘れてしまった世界の側だ。

 制度とは、生命が世界を理解するための仮の形であり、生命が世界に触れ続ける限り、何度でも崩れ、何度でも立ち上がる。

 制度は生命の秩序であり、 生命は制度の外部を必要とする。

 制度は、世界と生命のあいだに生まれる、一時的な橋のようなものなのだ。
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