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2章 学生編 生きる覚悟
41話
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学園での成績は絶えずトップクラスに入るほど、流輝と琉生は魔術や武術、学術などの力をつけていた。魔術に関しては今のところほぼ知識ばかりだが、たまに使うこともある。ただし着々と力をつけている流輝は、なるべく抑え気味で魔法を使うことを心がけていた。
成績の話をすると、モリスもカルナも嬉しそうで、そしていつも褒めてくれた。最初の頃は元の世界に両親がいるのに、と心を閉ざしていたり構えていた双子も今ではこの世界の両親として二人がとても好きだった。
しかしまだ二人のことを父、母と呼んだことがなかった。二人が自分たちのことをとても大切に思い、時には厳しく時には優しく大事にしてくれていることはとてもよくわかっている。それこそ本当の息子のように思ってくれている。きっと「父さん」「母さん」と呼べばとても喜んでくれるだろう。
わかってはいる。だが自分たちには本当の父母がいる。もう二度と会えないかもしれないが、本当の父母だ。今でも父さんと母さんだと思っている。だというのにモリスたちにもそう呼んでいいものだろうか。
「なぜ悩むの?」
ローザリアに話せば首を傾げられた。
「お二人のこと、お父様とお母様だと思っているのでしょう? なら呼べばいいじゃない」
「でも俺らには……」
「本当のご両親がいらしても決して裏切りなんかじゃない。だってどちらもあなたたちにとってご両親じゃないの」
「そう、だけど」
「以前、王である私の父は本当の父親ではないことは話したよね」
ローザリアの母親ソフィアは男爵家の娘で王宮に仕えていた。そしてそこに同じく勤めていたとある騎士と恋に落ち、結婚したそうだ。当時すでに王となっていたノアは王子時代からその騎士と友人だった。その頃ソフィアのことは友人の妻という認識しかなかった。
初めての子ども、ローザリアも生まれて家族三人仲睦まじく暮らしていたが、その幸せは長く続かなかった。とある魔獣討伐の際にローザリアの実の父親であった騎士が命を落としてしまう。ソフィアは悲しみに暮れた。ローザリアはまだ死を理解するにはあまりにも幼く、ソフィアはこれからのことも考えなければならなかった。
ノアは大事な友人の最愛だった妻を心配し、気にかけるようになった。友人が戦いに赴く時はいつも自分に何かあれば妻と娘を頼むと託してきていたのもあったようだ。親しくなっていく内に最初は同情だったノアも本当にソフィアをかけがえのない人と思うようになったし、ソフィアも心から心配しローザリアのことも可愛がってくれるノアを次第に愛するようになっていった。そして二人は周りの反対もある中、結婚した。
「私の本当のお父さんはもうこの世にいないの。だけど今でも私の大切なお父さんだし、こうしてお母様と私を心から愛してくれているお父様のことも、私は大好きなお父様だと思ってる」
ローザリアは話終えると微笑んできた。流輝と琉生も、教えてくれ話してくれてありがとう、と微笑み返した。
ローザリアの話を聞いて、流輝は王、ノアを思う。ノアは今も自分たちのために戻る方法を諦めず探してくれている。
だが一向に見つからない。流輝たちとしては見つかればとても嬉しい。それはもちろんだ。とはいえこの世界へ来てからたくさんの思い出や出会いができた。今や知らない世界ではなくなった。
それもあり、この世界のために琉生も「光の救世主」としての目的を果たしたいと思えるようになったと言っていた。
元の世界とこの世界の間で双子は揺れていた。
本来あと六年後に召喚の儀は行われるはずだった。その頃には流輝たちは二十歳になっている。戻ることができないままだと、実際六年後に光の神殿へ行くことになるようだ。ただ光の魔力を持つ者しか入られないなら、流輝は立ち入れないはずだ。
……それでも、俺は普通ではあり得ない、すべての属性を使える力を持っている。きっと、多分、光の魔力だけは持っていない俺もどこかで役に立てるはずだ。きっと。じゃないと召喚された意味をなさない。
流輝は自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
その夜、双子は初めてモリスとカルナに対して呼び方を変えた。
「──そういえばこの間の筆記試験もいい成績だったようだね」
「本当にさすがね」
「うん、クラスで二人揃って一番だったよ、お父さん」
「でもね、お母さん。兄さんは一つ心配な箇所あったみたいだけど、勘でどうにかしたらしいんだ。だから実質一番は俺かな」
「ちょ、余計なこと言うなよルイ!」
流輝が慌てて椅子から立ち上がったところですでに立ち上がっていたモリスに抱きしめられた。カルナもゆっくり立ち上がると琉生のそばまで来て抱きしめる。二人は涙ぐんでいた。
「ルキ、ルイ……」
「お父さん」
「お母さん」
気持ちの上では遠の昔に本当の親子のように思っていた四人だが、今度こそ本当の親子にようやくなれたのかもしれない。
そして父母の心底嬉しそうな顔を見て、流輝も琉生も揺れていた心が穏やかになっていくのを感じた。それと同時にこの世界にいる覚悟も決まった。例え元の世界に戻れなくとも、この世界で生きる覚悟だ。自分たちの生きる世界がここであると認識し、「光の救世主」として生きる覚悟、とも言うだろうか。
成績の話をすると、モリスもカルナも嬉しそうで、そしていつも褒めてくれた。最初の頃は元の世界に両親がいるのに、と心を閉ざしていたり構えていた双子も今ではこの世界の両親として二人がとても好きだった。
しかしまだ二人のことを父、母と呼んだことがなかった。二人が自分たちのことをとても大切に思い、時には厳しく時には優しく大事にしてくれていることはとてもよくわかっている。それこそ本当の息子のように思ってくれている。きっと「父さん」「母さん」と呼べばとても喜んでくれるだろう。
わかってはいる。だが自分たちには本当の父母がいる。もう二度と会えないかもしれないが、本当の父母だ。今でも父さんと母さんだと思っている。だというのにモリスたちにもそう呼んでいいものだろうか。
「なぜ悩むの?」
ローザリアに話せば首を傾げられた。
「お二人のこと、お父様とお母様だと思っているのでしょう? なら呼べばいいじゃない」
「でも俺らには……」
「本当のご両親がいらしても決して裏切りなんかじゃない。だってどちらもあなたたちにとってご両親じゃないの」
「そう、だけど」
「以前、王である私の父は本当の父親ではないことは話したよね」
ローザリアの母親ソフィアは男爵家の娘で王宮に仕えていた。そしてそこに同じく勤めていたとある騎士と恋に落ち、結婚したそうだ。当時すでに王となっていたノアは王子時代からその騎士と友人だった。その頃ソフィアのことは友人の妻という認識しかなかった。
初めての子ども、ローザリアも生まれて家族三人仲睦まじく暮らしていたが、その幸せは長く続かなかった。とある魔獣討伐の際にローザリアの実の父親であった騎士が命を落としてしまう。ソフィアは悲しみに暮れた。ローザリアはまだ死を理解するにはあまりにも幼く、ソフィアはこれからのことも考えなければならなかった。
ノアは大事な友人の最愛だった妻を心配し、気にかけるようになった。友人が戦いに赴く時はいつも自分に何かあれば妻と娘を頼むと託してきていたのもあったようだ。親しくなっていく内に最初は同情だったノアも本当にソフィアをかけがえのない人と思うようになったし、ソフィアも心から心配しローザリアのことも可愛がってくれるノアを次第に愛するようになっていった。そして二人は周りの反対もある中、結婚した。
「私の本当のお父さんはもうこの世にいないの。だけど今でも私の大切なお父さんだし、こうしてお母様と私を心から愛してくれているお父様のことも、私は大好きなお父様だと思ってる」
ローザリアは話終えると微笑んできた。流輝と琉生も、教えてくれ話してくれてありがとう、と微笑み返した。
ローザリアの話を聞いて、流輝は王、ノアを思う。ノアは今も自分たちのために戻る方法を諦めず探してくれている。
だが一向に見つからない。流輝たちとしては見つかればとても嬉しい。それはもちろんだ。とはいえこの世界へ来てからたくさんの思い出や出会いができた。今や知らない世界ではなくなった。
それもあり、この世界のために琉生も「光の救世主」としての目的を果たしたいと思えるようになったと言っていた。
元の世界とこの世界の間で双子は揺れていた。
本来あと六年後に召喚の儀は行われるはずだった。その頃には流輝たちは二十歳になっている。戻ることができないままだと、実際六年後に光の神殿へ行くことになるようだ。ただ光の魔力を持つ者しか入られないなら、流輝は立ち入れないはずだ。
……それでも、俺は普通ではあり得ない、すべての属性を使える力を持っている。きっと、多分、光の魔力だけは持っていない俺もどこかで役に立てるはずだ。きっと。じゃないと召喚された意味をなさない。
流輝は自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
その夜、双子は初めてモリスとカルナに対して呼び方を変えた。
「──そういえばこの間の筆記試験もいい成績だったようだね」
「本当にさすがね」
「うん、クラスで二人揃って一番だったよ、お父さん」
「でもね、お母さん。兄さんは一つ心配な箇所あったみたいだけど、勘でどうにかしたらしいんだ。だから実質一番は俺かな」
「ちょ、余計なこと言うなよルイ!」
流輝が慌てて椅子から立ち上がったところですでに立ち上がっていたモリスに抱きしめられた。カルナもゆっくり立ち上がると琉生のそばまで来て抱きしめる。二人は涙ぐんでいた。
「ルキ、ルイ……」
「お父さん」
「お母さん」
気持ちの上では遠の昔に本当の親子のように思っていた四人だが、今度こそ本当の親子にようやくなれたのかもしれない。
そして父母の心底嬉しそうな顔を見て、流輝も琉生も揺れていた心が穏やかになっていくのを感じた。それと同時にこの世界にいる覚悟も決まった。例え元の世界に戻れなくとも、この世界で生きる覚悟だ。自分たちの生きる世界がここであると認識し、「光の救世主」として生きる覚悟、とも言うだろうか。
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