双神の輪~紡がれる絆の物語~

Guidepost

文字の大きさ
42 / 120
2章 学生編  生きる覚悟

41話

しおりを挟む
 学園での成績は絶えずトップクラスに入るほど、流輝と琉生は魔術や武術、学術などの力をつけていた。魔術に関しては今のところほぼ知識ばかりだが、たまに使うこともある。ただし着々と力をつけている流輝は、なるべく抑え気味で魔法を使うことを心がけていた。
 成績の話をすると、モリスもカルナも嬉しそうで、そしていつも褒めてくれた。最初の頃は元の世界に両親がいるのに、と心を閉ざしていたり構えていた双子も今ではこの世界の両親として二人がとても好きだった。
 しかしまだ二人のことを父、母と呼んだことがなかった。二人が自分たちのことをとても大切に思い、時には厳しく時には優しく大事にしてくれていることはとてもよくわかっている。それこそ本当の息子のように思ってくれている。きっと「父さん」「母さん」と呼べばとても喜んでくれるだろう。
 わかってはいる。だが自分たちには本当の父母がいる。もう二度と会えないかもしれないが、本当の父母だ。今でも父さんと母さんだと思っている。だというのにモリスたちにもそう呼んでいいものだろうか。

「なぜ悩むの?」

 ローザリアに話せば首を傾げられた。

「お二人のこと、お父様とお母様だと思っているのでしょう? なら呼べばいいじゃない」
「でも俺らには……」
「本当のご両親がいらしても決して裏切りなんかじゃない。だってどちらもあなたたちにとってご両親じゃないの」
「そう、だけど」
「以前、王である私の父は本当の父親ではないことは話したよね」

 ローザリアの母親ソフィアは男爵家の娘で王宮に仕えていた。そしてそこに同じく勤めていたとある騎士と恋に落ち、結婚したそうだ。当時すでに王となっていたノアは王子時代からその騎士と友人だった。その頃ソフィアのことは友人の妻という認識しかなかった。
 初めての子ども、ローザリアも生まれて家族三人仲睦まじく暮らしていたが、その幸せは長く続かなかった。とある魔獣討伐の際にローザリアの実の父親であった騎士が命を落としてしまう。ソフィアは悲しみに暮れた。ローザリアはまだ死を理解するにはあまりにも幼く、ソフィアはこれからのことも考えなければならなかった。
 ノアは大事な友人の最愛だった妻を心配し、気にかけるようになった。友人が戦いに赴く時はいつも自分に何かあれば妻と娘を頼むと託してきていたのもあったようだ。親しくなっていく内に最初は同情だったノアも本当にソフィアをかけがえのない人と思うようになったし、ソフィアも心から心配しローザリアのことも可愛がってくれるノアを次第に愛するようになっていった。そして二人は周りの反対もある中、結婚した。

「私の本当のお父さんはもうこの世にいないの。だけど今でも私の大切なお父さんだし、こうしてお母様と私を心から愛してくれているお父様のことも、私は大好きなお父様だと思ってる」

 ローザリアは話終えると微笑んできた。流輝と琉生も、教えてくれ話してくれてありがとう、と微笑み返した。
 ローザリアの話を聞いて、流輝は王、ノアを思う。ノアは今も自分たちのために戻る方法を諦めず探してくれている。
 だが一向に見つからない。流輝たちとしては見つかればとても嬉しい。それはもちろんだ。とはいえこの世界へ来てからたくさんの思い出や出会いができた。今や知らない世界ではなくなった。
 それもあり、この世界のために琉生も「光の救世主」としての目的を果たしたいと思えるようになったと言っていた。
 元の世界とこの世界の間で双子は揺れていた。
 本来あと六年後に召喚の儀は行われるはずだった。その頃には流輝たちは二十歳になっている。戻ることができないままだと、実際六年後に光の神殿へ行くことになるようだ。ただ光の魔力を持つ者しか入られないなら、流輝は立ち入れないはずだ。

 ……それでも、俺は普通ではあり得ない、すべての属性を使える力を持っている。きっと、多分、光の魔力だけは持っていない俺もどこかで役に立てるはずだ。きっと。じゃないと召喚された意味をなさない。

 流輝は自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。



 その夜、双子は初めてモリスとカルナに対して呼び方を変えた。

「──そういえばこの間の筆記試験もいい成績だったようだね」
「本当にさすがね」
「うん、クラスで二人揃って一番だったよ、お父さん」
「でもね、お母さん。兄さんは一つ心配な箇所あったみたいだけど、勘でどうにかしたらしいんだ。だから実質一番は俺かな」
「ちょ、余計なこと言うなよルイ!」

 流輝が慌てて椅子から立ち上がったところですでに立ち上がっていたモリスに抱きしめられた。カルナもゆっくり立ち上がると琉生のそばまで来て抱きしめる。二人は涙ぐんでいた。

「ルキ、ルイ……」
「お父さん」
「お母さん」

 気持ちの上では遠の昔に本当の親子のように思っていた四人だが、今度こそ本当の親子にようやくなれたのかもしれない。
 そして父母の心底嬉しそうな顔を見て、流輝も琉生も揺れていた心が穏やかになっていくのを感じた。それと同時にこの世界にいる覚悟も決まった。例え元の世界に戻れなくとも、この世界で生きる覚悟だ。自分たちの生きる世界がここであると認識し、「光の救世主」として生きる覚悟、とも言うだろうか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...