双神の輪~紡がれる絆の物語~

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2章 学生編  生きる覚悟

43話

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 夏はこの間誕生した第一王子リアムだけでなく、王ノアが生まれた季節でもあるようだ。そのせいか祝日続きで城下町も普段以上に賑わい毎日のように祭りをしている気がする。
 とはいえいくら水の国であっても夏は暑い。時間さえあれば町へ出向いて美味しそうな屋台の食べ物や面白そうなゲームなどを堪能していた流輝もいい加減へばっていた。

「むしろようやくバテたのって感じだけど。あと馬鹿だよね」
「ルイ、かわいくない」
「いつも言ってるけど俺は男の子だからかわいくなくて結構だよ。どうする? マロージ食べる?」
「食う。いい子だから持ってきて」
「……了解」

 苦笑しながら琉生が流輝のそばを離れていった。
 流輝がキャスと一緒に連日町へ繰り出している間、琉生は時折剣の訓練をしつつおとなしく室内でゆっくり過ごしていたようだ。だからか全然バテていない。フランもいつもと変わらずだ。ちなみにキャスは慣れているのか流輝と行動を共にしていたはずだというのに先ほど見た時も暑そうではあったが何でもない様子だった。

「だいたい『エアコン』がないの何年経っても慣れねえ」

 流輝はぼそりと呟いた。エアコンがなくとも魔法の世界だからか、一応魔法石を使った涼む道具はある。だがエアコンとは比べ物にならないし、そもそも魔法石自体高価な石なのでいくらモリスたちが何も言わなくともがんがん使いまくるのは気が引ける。せっかく高い魔力持ちなので自分の魔力でその道具を動かせないかと挑戦してみたことはあるが、石を入れることで動くものだけに上手く稼働しなかった。
 よって今も中庭の木陰にある椅子に座り、地味に水を張った口の広い桶に足をつけていた。

 その道具は動かせなくても、魔法で『シャワー』を応用すればもっと涼めるんじゃね?

 夏バテのようなだるさに流輝はテーブルに突っ伏したが、ふと思い立って近くに置いてある庭師が水やりにつかうそこそこ大きめの容器をじっと見た。すると空だった中身が水でいっぱいになる。

「無限湧きだぞ」

 呟くとその容器から水の塊を浮かせる。少し考えるように手を口元に当ててから流輝は水の塊を指差した。すると塊は雨粒のように分かれ流輝めがけてどっと降り注いでくる。

「っじゃねえ。クソ、量と勢い間違えた」

 粒が大きめだったのと勢いがよすぎてびしょ濡れになってしまった。前髪をかき上げシャツを脱ぐためにボタンを全部外しながらもう一度調整し、水を自分めがけて飛ばした。すると今度は上手くいき、ミストのような細かい水の粒子が流輝にふわりとかかり続ける。

「お。今度はいい感じじゃないか。けっこう涼しいなこれ」

 気持ちがよくてご機嫌になっているとローザリアの声が聞こえてきた。

「リキ。バテちゃったんだって? だいじょう……」

 ニコニコと笑顔で近づいてきたローザリアは流輝の姿を見た途端、真っ赤になってきた。

「おい、お前こそ大丈夫か。熱中症じゃねってくらい顔、赤いぞっ?」
「リキなんでそんな恰好してるの? それにびしょ濡れじゃない。それになんでそんな恰好してるのよ!」
「何で二回も言ったんだよ。ちょっと魔法の調節間違えただけ。あとそんな恰好ってなんだよ。……ああ、濡れたから脱ごうとしてたんだけ……」

 言いかけている間に何故かローザリアがどこかへ行ってしまった。

「あいつ何しに来たんだ?」

 怪訝に思っていると今度は琉生がマロージを持ちながら「ローザリア、来たでしょう」と戻ってきた。そして流輝を見て呆れた顔になる。

「……何してんの兄さん」
「なにって、涼んでんだけど」
「そこまでしないと涼めないくらい暑かったの……? びしょ濡れじゃないか。あと何で前全開にしたシャツ体にべったりまとわりつかせてんの?」
「いや、脱ごうとして、魔法が成功したからついそっちに満足してて忘れてた。ローザリア来たぞ。でもすぐどっか行っちまったんだよな。何しに来たんだあいつ」
「……とりあえず兄さんは着替えて」
「あ? ああ。いやでもマロージ溶けんだろ。先に……あ、でもあいつ顔、真っ赤だったんだよ。もしかして俺よりあいつのが暑さにやられてんじゃねえのか? 先にちょっと探しに……」

 琉生が持っている元の世界での氷菓子のような冷たいマロージに手を伸ばそうとして、流輝はハッとなった。ローザリアが心配だ。

「いいよ……俺が探してくるから兄さんはとっとと着替えてマロージ食べてて」
「いいのか? じゃあそうする。マロージは俺が溶けないようにしといてやる」

 その後ローザリアも戻ってきて三人で冷たいマロージを堪能した。

「バテてるなら王宮にいらっしゃいよ。氷の間っていう部屋が地下にあるの」
「氷の間? 部屋が氷でできてるとか? だったらすげーな。さすがにそんな部屋は俺も作れねーかな」
「まさか。あなたができない魔法を他の誰ができるというの。でも氷の彫刻がたくさん置かれていてとても涼しいのよ。地下で元々涼しい上に氷の彫刻はたくさんあるから部屋全体の温度が低くて氷も溶けにくくなってるしで」
「それ、いいな。行きたい」
「じゃあもう少ししたら行きましょう。ルイも来るでしょう?」
「俺は……」
「何だよ来るだろ? にしてもほんと連日暑いよな。泳ぎてぇ。水着ってないのかな」

 流輝がため息をつきながら言うとローザリアは怪訝そうな顔をしてきた。

「ミズギ? 水の衣装ってこと?」
「違う。湖や海とかで泳ぐために着る下着みたいなもんだな」
「下着姿で湖とかに入るの……? ルイ……リキってもしかして露出狂気味とかじゃないよね……?」
「あはは」
「何でだよ!」
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